特殊健康診断の有機溶剤健康診断とは?対象業務・対象物質・検査項目・費用一覧

特殊健康診断 有機溶剤

有機溶剤健康診断とは、有機溶剤を取り扱う業務に従事する労働者が対象の健診です。企業は有機溶剤健康診断を雇入れ時・業務配置時・6ヵ月以内に一回の頻度で実施する必要があります。

さらに、特別有機溶剤に指定される有機溶剤を取り扱う労働者に対しては、有機溶剤健康診断・特別化学物質健康診断・両方の健康診断のどちらかの実施が必須です。

企業が有機溶剤健康診断の義務を怠ると、労働基準監督署からの是正指導や50万円以下の罰則を受ける可能性もあります。そのため、経営者・人事担当者は、有機溶剤健康診断の対象業務や対象物質について正しく理解しておきましょう。

なお、特殊健康診断については「特殊健康診断とは?」の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。

本記事では以下のことがわかります。

最後まで読めば、有機溶剤健康診断の対象業務・対象物質について理解し、自社で雇用する従業員に対して正しい頻度で有機溶剤健康診断を実施できるようになるでしょう。

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特殊健康診断の有機溶剤健康診断とは?

特殊健康診断 有機溶剤健康診断

有機溶剤健康診断は、特殊健康診断の一種です。有機溶剤を取り扱う業務に従事する労働者を対象に実施される健診となります。

有機溶剤は揮発性が高く、長期的に吸入すると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、企業は法令で定められた有機溶剤健康診断を定期的に行い、労働者の健康リスクを早期に発見することが求められています。

有機溶剤健康診断は、雇入れ時・業務配置時・6ヵ月以内に一回の頻度での実施が義務です。有機溶剤健康診断は、法令により対象業務と対象となる作業場所が定められいているため、次の項目で確認していきましょう。

ここでは、有機溶剤健康診断の対象業務・対象作業場所・特別有機溶剤にかかる特定化学物質健康診断について詳しく解説します。

最後まで見れば、法律で定められている有機溶剤健康診断の対象についてわかり、自社の業務が対象となるのか判断できるようになるでしょう。

有機溶剤健康診断の対象業務

有機溶剤健康診断の対象業務は以下の通りです。

  1. 有機溶剤等の製造工程におけるろ過・混合・撹拌・加熱作業
  2. 染料や医薬品の製造過程における有機溶剤使用作業
  3. 有機溶剤含有物を使用する印刷や塗装業務
  4. 文字書き込みや描画作業における有機溶剤使用
  5. つや出しや防水などの面加工業務
  6. 有機溶剤を使用する接着作業
  7. 有機溶剤が塗布されたものの接着作業
  8. 有機溶剤を用いる洗浄作業
  9. 有機溶剤含有物を用いる塗装作業
  10. 有機溶剤が付着したものの乾燥作業
  11. 有機溶剤を用いる試験・研究
  12. 有機溶剤を入れたことのあるタンク内の作業

有機溶剤健康診断の対象業務は、有機溶剤中毒予防規則第1条第6号に記載がある業務です。

有機溶剤健康診断の対象の作業場所

有機溶剤健康診断の対象の作業場所は以下の通りです。

  1. 船舶の内部
  2. 車両の内部
  3. タンクの内部
  4. ピットの内部
  5. 坑の内部
  6. ずい道の内部
  7. マンホール・暗渠(あんきょ)の内部
  8. 箱桁(はこげた)の内部
  9. ダクトの内部
  10. 水管の内部
  11. 屋内作業場・通風が不十分な作業場

有機溶剤健康診断の対象の作業場所は、有機溶剤中毒予防規則第2条に記載がある業務です。

特別有機溶剤にかかる特定化学物質健康診断とは

特別有機溶剤にかかる特定化学物質健康診断とは「特別有機溶剤」として扱われる対象物質の業務に従事する労働者が対象の健診です。特別有機溶剤と有機溶剤の含有率に応じて、有機溶剤健康診断・特別化学物質健康診断・両方の健康診断のどちらかを実施する必要があります。

特別有機溶剤の対象業務は以下の通りです。

  • クロロホルムほか9物質を用いる有機溶剤業務
  • エチルベンゼン塗装業務
  • 一・二-ジクロロプロパン洗浄・払拭業務

健診の実施頻度は雇入れ時・業務配置時・6ヵ月以内に一回です。どの健診が対象となるのかは、以下のチャートを参考にしてください。

特別有機溶剤にかかる特定化学物質健康診断

引用元:厚生労働省

企業は、特別有機溶剤と有機溶剤の含有率によって、有機溶剤健康診断だけではなく特別化学物質健康診断の実施が必要になることを認識しておきましょう。

なお、有機溶剤健康診断や特別化学物質健康診断を含む特殊健康診断については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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【特殊健康診断】有機溶剤健康診断の対象物質となる有機溶剤一覧

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 対象物質

有機溶剤健康診断の対象物質となる有機溶剤一覧は以下の通りです。

アセトン十二クレゾール二十三シクロヘキサノン三十四メチルエチルケトン
イソブチルアルコール十三クロルベンゼン二十四一・二‐ジクロルエチレン
(別名二塩化アセチレン)
三十五メチルシクロヘキサノール
イソプロピルアルコール十四酢酸イソブチル二十五N・N‐ジメチルホルムアミド三十六メチルシクロヘキサノン
イソペンチルアルコール
(別名イソアミルアルコール)
十五酢酸イソプロピル二十六テトラヒドロフラン三十七メチル-ノルマル-ブチルケトン
エチルエーテル十六酢酸イソペンチル
(別名酢酸イソアミル)
二十七一・一・一‐トリクロルエタン三十八ガソリン
エチレングリコールモノエチルエーテル
(別名セロソルブ)
十七酢酸エチル二十八トルエン三十九コールタールナフサ
(ソルベントナフサを含む。)
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
(別名セロソルブアセテート)
十八酢酸ノルマル―ブチル二十九二硫化炭素四十石油エーテル
エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル
(別名ブチルセロソルブ)
十九酢酸ノルマル-プロピル三十ノルマルヘキサン四十一石油ナフサ
エチレングリコールモノメチルエーテル
(別名メチルセロソルブ)
二十酢酸ノルマル-ペンチル
(別名酢酸ノルマル-アミル)
三十一一‐ブタノール四十二石油ベンジン
オルト‐ジクロルベンゼン二十一酢酸メチル三十二二‐ブタノール四十三テレビン油
十一キシレン二十二シクロヘキサノール三十三メタノール四十四ミネラルスピリツト
(ミネラルシンナー、
ペトロリウムスピリツト、
ホワイトスピリツト及び
ミネラルターペンを含む。)

引用元:安全衛生情報センター

有機溶剤健康診断の対象物質は、上記の表に記載の44種類です。また、44種類のみから合成される物質も対象となります。

有機溶剤健康診断の対象物質については、労働安全衛生法施行令 別表第6の2に記載されているので確認してください。

さらに、特別有機溶剤の対象物質となる有機溶剤一覧は以下の通りです。

クロロホルムジクロロメタントリクロロエチレン
四塩化炭素スレチンメチルイソブチルケトン
一・四-ジオキサン一・一・二・二-テトラクロロエタン十一エチルベンゼン
一・二-ジクロロエタンテトラクロロエチレン十二一・二-ジクロロプロパン

特別有機溶剤の対象物質は上記の表に記載の12種類となります。

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【特殊健康診断】有機溶剤健康診断の検査項目

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 検査項目

特殊健康診断における有機溶剤健康診断の検査項目は以下の通りです。

有機溶剤健康診断の検査項目には共通検査のほか、対象物質の種類に応じた検査項目があります。ここでは、有機溶剤健康診断の検査項目を詳しく解説します。

最後まで見れば、有機溶剤健康診断の検査項目の詳細がわかり、有機溶剤健康診断について深く理解できるようになるでしょう。

共通検査項目

共通検査項目は、有機溶剤の対象物質にかかわらず共通して行うことが必須の検査です。

項目内容
1業務経歴調査
作業条件の簡易調査
・有機溶剤における健康障害の既往歴調査
・有機溶剤における健康障害の自覚症状や他覚症状の既往歴調査
・有機剤中毒予防規則別表で指定されている有機溶剤の代謝物量の検査について既往調査結果の調査
・貧血・腎機能・肝機能・眼底・神経内科学的検査についての既往の異常所見の有無を検査
・過去健診の貧血・肝機能・腎機能・神経学的検査の異常所見の有無を検査
3有機溶剤による自覚症状・他覚症状・通常認められる症状の有無を検査
4尿中の蛋白の有無を調査

有機溶剤の種類に応じた検査項目

有機溶剤の種類に応じた検査項目は以下の通りです。

項目内容
1尿中における有機溶剤の代謝物量検査
肝機能検査
・GOT(AST)
・GPT(ALT)
・γ-GTP(γ-GT)
3貧血検査
※血色素量や赤血球数の検査
4眼底検査

有機溶剤の種類に応じた検査の対象となる有機溶剤一覧は以下をご覧ください。

番号有機溶剤名項目
(一)一 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)
二 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)
三 エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)
四 エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)
五 前各号に掲げる有機溶剤のいずれかをその重量の五パーセントを超えて含有する物
血色素量及び赤血球数の検査
(二)一 オルト-ジクロルベンゼン
二 クレゾール
三 クロルベンゼン
四 一・二-ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
五 前各号に掲げる有機溶剤のいずれかをその重量の五パーセントを超えて含有する物
血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、
血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及び
ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)の検査
(以下「肝機能検査」という。)
(三)一 キシレン
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
尿中のメチル馬尿酸の量の検査
(四)一 N・N-ジメチルホルムアミド
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
一 肝機能検査
二 尿中のN-メチルホルムアミドの量の検査
(五)一 一・一・一-トリクロルエタン
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
尿中のトリクロル酢酸又は総三塩化物の量の検査
(六)一 トルエン
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
尿中の馬尿酸の量の検査
(七)一 二硫化炭素
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
眼底検査
(八)一 ノルマルヘキサン
二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の五パーセントを超えて含有する物
尿中の二・五-ヘキサンジオンの量の検査

引用元:安全衛生情報センター

医師が必要と認めた場合の検査項目

医師が必要と認めた場合の検査項目は以下の通りです。

項目内容
1作業条件の調査
貧血検査
3肝機能検査
4腎機能検査
5神経学的検査
※コンタクトレンズを外して行う場合がる
※矯正視力を測るため眼鏡も必要

省略できる検査項目

有機溶剤健康診断では、尿中の有機溶剤の代謝物量検査において、前回、以下の有機溶剤に関する検査を受けた場合に省略できるケースがあります。

有機溶剤健康診断で省略できる検査項目は以下の通りです。

有機溶剤名項目
キシレン尿中のメチル馬尿酸の量の検査
N・N―ジメチルホルムアミド尿中のN―メチルホルムアミドの量の検査
一・一・一‐トリクロルエタン尿中のトリクロル酢酸又は総三塩化物の量の検査
トルエン尿中の馬尿酸量の検査
ノルマルヘキサン尿中の二・五-ヘキサンジオンの量の検査

尿中の有機溶剤の代謝物量検査が省略できるのは、有機溶剤中毒予防規則第29条第4項の規定に基づき、医師が「必要ではない」と認めた場合です。省略可否の判断は産業医などの医師が、作業場所の実態をきちんと把握し、総合的に判断します。

ただし、省略できると医師に判断された従業員が、尿中の有機溶剤の代謝物量検査の実施を望んでいる場合は、希望理由を丁寧にヒアリングしたうえで、もう一度省略可否の判断が必要です。

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有機溶剤健康診断の費用

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 費用

有機溶剤健康診断の費用は8,300円~15,000円です。

有機溶剤の対象物質にかかわらず行う共通検査は、5,000円程度の費用が発生します。また、有機溶剤の種類によって、1対象物質あたり3,300円~8,800円の検査費用がかかります。

有機溶剤健康診断を含む特殊健康診断は、法律により企業に課せられている実施義務です。そのため、有機溶剤健康診断にかかる費用は、企業が全額を負担する義務があります。

さらに、有機溶剤健康診断は業務に絡んだ検診のため、労働時間内に実施することが必須です。有機溶剤健康診断を労働時間外に実施する場合は、従業員に時間外手当を支払う必要があります。

特殊健康診断の実施は、法で事業者に義務を課していることから、その費用は、事業者が実施すべきものであり、また、業務の遂行にからんで実施されなければならないものであるので、受診に要する時間は労働時間であり、時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければなりません。

引用元:厚生労働省

企業は有機溶剤健康診断の費用と負担について、正しく理解しておきましょう。なお、健康診断の費用に関しては、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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有機溶剤健康診断を怠ったときの罰則

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 罰則

企業が有機溶剤健康診断を実施しない場合、労働安全衛生法違反として労働基準監督署から指導が入ります。また、企業が指導に従わない場合は、罰金50万円以下の罰則が科される可能性もあります。

第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項

引用元:労働安全衛生法

過去には、有機溶剤を取り扱う企業が有機溶剤健康診断の実施義務を怠ったことで指導を受けた事例があります。有機溶剤健康診断の指導の事例内容を以下で確認しましょう。

とある自動車整備会社は、有機溶剤の対象物質(エチルベンゼンやメチルイソブチルケトン等含有)の塗装作業を行っているにも関わらず、特殊健康診断を6ヵ月に一回の頻度で実施していませんでした。

その結果、労働安全衛生法第65条と労働安全衛生法第66条に違反したとみなされ、是正するよう指導を受けています。

4 事例(自動車整備業)

 職場の環境測定及び労働者に対する特殊健康診断について6か月以内ごとに1回
行っていなかった。

2 職場の環境測定、労働者に対する特殊健康診断を6ゕ月以内に1回行っていないこ
とについて是正を指導した。

指導事項

労働安全衛生法第65条(特化則第36条)違反
労働安全衛生法第66条(有機則29条、特化則第39条)違反

引用元:厚生労働省

有機溶剤健康診断は、労働者の健康を守るために法令で定められた企業の義務です。労働者の健康管理を徹底し、法令に基づいて定期的に有機溶剤健康診断を実施することが重要です。

有機溶剤健康診断結果は保管義務がある

有機溶剤健康診断結果は5年間の保管義務があります。有機溶剤健康診断など、検診結果を保管する理由は、健診データを効果的に活用したり効率的に保健指導をしたりするためです。

また、業務災害による健康被害が発生した際、過去の健診結果が重要な根拠として扱われます。企業は有機溶剤健康診断の実施義務だけではなく、保管義務についても滞りなく遂行しましょう。

健康診断の保管義務については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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特殊健康診断の有機溶剤健康診断に関する3つのよくある質問

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 よくある質問

特殊健康診断の有機溶剤健康診断に関するよくある質問は以下の3つです。

特殊健康診断の有機溶剤健康診断に関して、疑問を抱える経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、特殊健康診断の一種である有機溶剤健康診断に関する疑問と回答を解説します。

最後まで見れば、有機溶剤健康診断の疑問が解消され、対象者となる従業員に対して正しく実施できるようになるでしょう。

特殊健康診断の中の有機溶剤健康診断の対象者は誰?

特殊健康診断の中の有機溶剤健康診断の対象者は、有機溶剤となる対象物質を扱っている人です。具体的には、以下の業務に従事している従業員が有機溶剤健康診断の対象者となります。

  1. 有機溶剤等の製造工程におけるろ過・混合・撹拌・加熱作業
  2. 染料や医薬品の製造過程における有機溶剤使用作業
  3. 有機溶剤含有物を使用する印刷や塗装業務
  4. 文字書き込みや描画作業における有機溶剤使用
  5. つや出しや防水などの面加工業務
  6. 有機溶剤を使用する接着作業
  7. 有機溶剤が塗布されたものの接着作業
  8. 有機溶剤を用いる洗浄作業
  9. 有機溶剤含有物を用いる塗装作業
  10. 有機溶剤が付着したものの乾燥作業
  11. 有機溶剤を用いる試験・研究
  12. 有機溶剤を入れたことのあるタンク内の作業

有機溶剤健康診断に引っかかるとどうなる?

有機溶剤健康診断に引っかかった場合、医師の診断に基づき、要再検査や要精密検査を受ける必要があります。

要再検査・要精密検査も企業に課せられている実施義務です。また、企業は要再検査・要精密検査の費用に関しても負担義務が生じます。

健康診断の二次検査や事後措置については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

過去従事者は有機溶剤健康診断がいつまで対象?

企業は有機溶剤業務の過去従事者が在籍している間、有機溶剤健康診断を6ヵ月に一回の頻度で実施する必要があります。ただし、過去従事者に対して有機溶剤健康診断の実施が義務化されているのは一部の業務です。

過去に従事させたことのある労働者対して健康診断を⾏う必要のある有害な業務

次の物を製造し、若しくは取り扱う業務(ただし、オーラミンとマゼンタは当該物質を製造する事業場における当該物質の取り扱い業務に、クロム酸及びその塩、重クロム酸及びその塩についてはその鉱石から製造する事業場における当該物質の取り扱い業務に、エチルベンゼンは屋内作業場等における塗装業務に、1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンは屋内作業場等における洗浄・払拭業務に、DDVP は成形・加工・包装業務に限る。また、酸化プロピレンについては屋外においてタンク⾃動⾞から貯蔵タンクに、貯蔵タンクから耐圧容器に注入する業務等、コバルト等は触媒として取り扱う業務を除く。

引用元:厚生労働省

過去従事者に対する有機溶剤健康診断については、厚生労働省の資料を参考にしてください。

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まとめ:特殊健康診断の中の有機溶剤健康診断の対象業務や検査項目を理解しよう

特殊健康診断 有機溶剤健康診断 まとめ

有機溶剤健康診断は、有機溶剤を取り扱う業務に従事する労働者の健康を守るために義務づけられた重要な健診です。企業は定期的に有機溶剤健康診断を実施することで、労働者の健康リスクを早期に発見し、適切な対策が講じられます。

経営者・人事担当者は、有機溶剤健康診断の対象業務をもう一度確認してください。

  1. 有機溶剤等の製造工程におけるろ過・混合・撹拌・加熱作業
  2. 染料や医薬品の製造過程における有機溶剤使用作業
  3. 有機溶剤含有物を使用する印刷や塗装業務
  4. 文字書き込みや描画作業における有機溶剤使用
  5. つや出しや防水などの面加工業務
  6. 有機溶剤を使用する接着作業
  7. 有機溶剤が塗布されたものの接着作業
  8. 有機溶剤を用いる洗浄作業
  9. 有機溶剤含有物を用いる塗装作業
  10. 有機溶剤が付着したものの乾燥作業
  11. 有機溶剤を用いる試験・研究
  12. 有機溶剤を入れたことのあるタンク内の作業

また、有機溶剤健康診断の対象物質も「【特殊健康診断】有機溶剤健康診断の対象物質となる有機溶剤一覧」でおさらいし、該当の有機溶剤について把握しましょう。

企業が有機溶剤健康診断の実施を怠ると、労働基準監督署から指導や罰則を受けるリスクがあるため、注意が必要です。企業は法令を遵守し、定期的に有機溶剤健康診断を行い、労働環境をより安全に保ちましょう。