ストレスチェックにおいて、産業医は以下の3つの役割を担っています。
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを保つための重要な取り組みです。産業医が関与することで、企業は従業員のストレス状態を正確に把握し、職場環境の改善につなげられます。
なお、ストレスチェックについては「ストレスチェック義務化」の記事で詳しく解説しているため、ご確認ください。
当記事では、主に以下のことが分かります。
最後まで見れば、ストレスチェックにおける産業医の役割が分かり、上手く連携しながら従業員の健康を守れるようになるでしょう。
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【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェックにおける産業医の役割は以下の3つです。
産業医は、ストレスチェックにおいて従業員のメンタルヘルスを守るための重要な役割を果たします。ストレスチェックを実施するためには、専門的な知識と経験が必要です。
ここでは、産業医が果たす主要な役割について解説します。最後まで見れば、ストレスチェックに関する産業医の業務内容が分かり、メンタルヘルス対策を効果的に進められるようになるでしょう。
ストレスチェックの実施支援
産業医はストレスチェックの実施支援を通じて、労働者の健康状態を把握し、対応を行うための基盤を築きます。
ストレスチェックは、労働安全衛生法により医師や保健師などの有資格者が行うことが定められています。産業医がストレスチェック実施の役割を果たすケースが一般的です。
産業医は、労働者の負担やストレス要因を考慮しながら計画の策定や説明を行うことで、ストレスチェック実施をサポートします。
また、高ストレス者を適切に判定するためには、産業医のメンタルヘルスに関する知識と労働者への配慮が必要です。産業医の支援により、ストレスチェックが労働者の健康管理に役立つものとなります。
長時間労働者・高ストレス者への面接指導
産業医の役割の一つに、長時間労働者や高ストレス者への面接指導があります。対象者が申請した場合、産業医が直接面談を行い、ストレス状況を把握し、改善方法を提案します。
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)には、以下の2つの面接指導が定められています。
- 長時間労働者を対象とする面接指導(第66条の8及び第66条の9)
- 高ストレス者を対象とする面接指導(第66条の10)
これらの面接指導は、過労やストレスを背景とする労働者の脳・心臓疾患やメンタル不調の未然防止を目的とするものです。
引用元:厚労省資料
産業医が従業員のメンタルヘルスの状況を正確に把握し、指導を行うことで、深刻な症状を予防できます。
集団分析・職場環境の改善提案
ストレスチェックの集団結果を分析し、職場環境の改善に向けた提案を行うことも産業医の役目です。ストレスチェックのデータをもとに、産業医は部署や職種ごとに特定のストレス要因を見つけ出し、それぞれに応じた改善策を考えます。
たとえば、業務量が過剰でストレスが高いと判明した部署には、業務分担の見直しや人員配置の最適化を提案します。
産業医は医学的な知識だけでなく、労働者の心理状態や職場全体の雰囲気も考慮した提案を行うため、実行性のある改善策が期待できるでしょう。
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産業医がストレスチェックに関与するメリットは以下の3つです。
産業医がストレスチェックに関与することで、企業や従業員が得られるメリットは多岐にわたります。
ここでは、産業医の関与によってもたらされる主な利点を紹介します。最後まで見れば、ストレスチェックに産業医が関わるメリットが分かり、より良い体制を整えられるようになるでしょう。
メンタルヘルス問題の早期発見・予防
ストレスチェックに産業医が関与することで、メンタルヘルスの問題を早期に発見し、予防できます。
ストレスチェックでは、結果をもとに産業医が専門的なアドバイスを提供します。結果として、従業員が抱えるストレスが重篤化する前に対処することが可能です。
早期の対応により、従業員の健康を守り、メンタルヘルスの安定を図ります。
働きやすい職場環境に変えられる
産業医がストレスチェックの結果に基づいて職場環境の改善提案を行うことで、従業員が働きやすい職場作りが実現します。産業医は集団分析を活用し、従業員が感じるストレス要因を職場ごとに把握します。
その結果、環境改善を通じて従業員のモチベーション向上や、生産性の向上にも寄与することが期待されます。
メンタルヘルス対策に取り組めるようになる
産業医の支援を受けることで、企業は従業員にメンタルヘルス対策を実施できるようになります。産業医が提供するアドバイスを基に、メンタルヘルスケアのための研修やフォローアップ体制を強化することが可能です。
従業員の健康管理において、産業医との連携が大きな支えとなります。メンタルヘルスについては「職場のメンタルヘルス対策」の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
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【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェックの実施手順は以下の通りです。
- 実施計画の立案:企業のメンタルヘルス担当者や産業医と協力し、計画を立てる
- 従業員への説明:チェックの目的や内容について従業員へ説明する
- ストレスチェックの実施:質問票を使用し、ストレスチェックを実施する
- 結果の集計・分析:産業医が集計結果を確認し、必要に応じて個別面談を行う
企業は産業医と協力し、正しい手順でストレスチェックを実施することが重要です。詳細は「ストレスチェック義務化」の記事をご覧ください。
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ストレスチェック・産業医面談の注意点は以下の4つです。
ストレスチェックや産業医面談を実施する際には、あらかじめ注意点を知っておくことが重要です。最後まで見れば、ストレスチェックおよび産業医面談の注意点が分かり、トラブルを未然に防げるようになるでしょう。
面接指導の実施は従業員の意向に従う
ストレスチェックで高ストレス者と判断された従業員には、産業医による面接指導が推奨されますが、あくまでも本人の意向に基づいて実施されるものです。従業員が面接指導を希望しない場合には、企業や産業医が強制することはできません。
従業員が産業医面談を望まない際に無理強いすることや、不参加を理由に不利益な扱いを行うことは禁じられています。
面接指導が従業員の意思に基づいて実施されることで、心理的な負担を軽減し、より良い職場環境の構築につながります。
労働者の個人情報は慎重に扱う
ストレスチェックから産業医面談に至るまで、従業員の個人情報を慎重に扱うことが重要です。ストレスチェックの回答内容には、従業員の心身の健康状態が含まれており、労働安全衛生法によって守秘義務が課されています。
ストレスチェックの実施者・実施事務従事者は、従業員本人の同意なしに結果を事業者に提供してはいけません。
また、ストレスチェック結果を保管する際も、第三者が閲覧できないよう厳重に管理することが必要です。
事業者がストレスチェック制度に関する労働者の秘密を不正に入手するようなことがあってはなりません。
○ ストレスチェックや面接指導で個人の情報を取り扱った者(実施者とその補助をする実施事務従事者)には、法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。
○ 事業者に提供されたストレスチェック結果や面接指導結果などの個人情報は、適切に管理し、社内で共有する場合にも、必要最小限の範囲にとどめましょう。
産業医による面談も、プライバシーが守られた環境で行い、他の従業員に内容が漏れないよう注意が求められます。
申出から1ヶ月以内に面接指導を実施する
高ストレス者と判断された従業員から面接指導の申し出があった場合、企業は1ヶ月以内に面接指導を実施することが必要です。面接指導は従業員のメンタルヘルスの悪化を防ぐために重要であり、速やかな対応が求められます。
労働者から申し出を受けた事業者は、概ね「1ヶ月以内」に医師による面接指導を行います。これは産業医選任義務がある事業場では産業医に依頼しましょう。労働者が自分の主治医など本人が希望する医師の面接指導を受けた場合は、これらの事項を記載した面接指導結果の証明書を提出してもらう必要があります。
面接指導では、従業員の健康状態や職場環境の課題を産業医が把握し、必要な対策を検討する機会が提供されます。労働時間の短縮や配置転換が必要だと判断された場合、企業は対応する責任があります。
面接指導の結果は5年間の保存義務がある
面接指導の結果に関する記録は、労働安全衛生法に基づき、5年間の保存義務が課されています。保存する記録には、面接指導の実施日時や、従業員の業務およびストレス状況、産業医の意見が必要です。
面接指導の結果※は事業所で5年間保存しましょう。
※ 記録を作成・保存してください。以下の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しても構いません。
① 実施年月日
② 労働者の氏名
③ 面接指導を行った医師の氏名
④ 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
⑤ 就業上の措置に関する医師の意見
面接指導に関する情報は、将来の職場環境改善や健康管理のための貴重なデータです。管理・保存することで、従業員が安心して面接指導を受けられる体制が整い、職場全体の健康増進にもつながります。
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ストレスチェックの産業医面談は、メンタルヘルスの維持や職場環境の改善において重要です。しかし、以下の理由から産業医面談に意味がないと感じる従業員もいます。
- 面談が形式的に終わってしまう
- 具体的な改善が実現しない
産業医面談は、従業員のストレス要因を把握し、改善策を提案する機会です。産業医が従業員の話にしっかり耳を傾け、必要な職場改善を企業に提案することが大切です。
従業員が効果を実感できるような面談にするためには、産業医と企業が協力し、改善策を実行に移す姿勢が求められます。
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ストレスチェックや産業医面談を従業員が拒んだ場合、無理に受検や面談を強要せず、本人の意思を尊重する必要があります。
「受けたくない」と感じる従業員が不安や疑問を抱いている可能性があるため、面談の目的や内容、プライバシー保護の徹底などを事前に説明することが重要です。
ストレスチェックが従業員の健康管理やサポートに役立つことを理解してもらうため、産業医の役割や守秘義務についても明確に伝えましょう。
詳細は「従業員にストレスチェックを拒否された場合の対処法」の記事をご覧ください。
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ストレスチェックとは、従業員のメンタルヘルスを維持し、職場環境を改善するための制度です。2015年12月以降、50人以上の従業員がいる企業に年一回の実施が義務づけられるようになりました。
ここでは、ストレスチェックの目的や対象者の範囲について解説します。
実施する目的
ストレスチェックの主な目的は、従業員が抱えるストレスの状態を把握し、メンタルヘルスの問題が深刻化する前に対策を講じることです。
企業が産業医と連携することで、ストレスチェックの結果に基づいたサポートが提供でき、従業員が働きやすい環境を整えられます。
職場環境の改善や離職防止の観点からも、ストレスチェックの実施は重要な意義を持っています。「ストレスチェックの目的」の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
対象者の範囲
ストレスチェックの対象者は、常時50名以上の従業員がいる企業に勤務し、厚生労働省が定める条件を満たしている従業員です。正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣社員も含まれる場合があります。
産業医によるサポートのもと、従業員のメンタルヘルスを守るため、幅広い対象者への対応が可能です。対象者については「ストレスチェックの対象者の範囲」の記事をご覧ください。
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ストレスチェックの産業医に関するよくある質問は以下の4つです。
産業医が関与するストレスチェックに関して、よく寄せられる質問と回答を紹介します。企業の担当者や従業員の疑問解消に役立つ情報をまとめています。
最後まで見れば、ストレスチェックに関する疑問が解消され、不安やトラブルなく対応できるようになるでしょう。
ストレスチェックの高ストレス者面談のデメリットは?
ストレスチェックの高ストレス者面談のデメリットは以下の通りです。
- 従業員に面談内容が職場に不利な影響を及ぼさないか、個人のプライバシーが守られるかについての懸念が生じやすい
- 「ストレスを抱えている人」というレッテルを貼られるリスクがある
また、面談を実施しても、十分な改善が行われない場合、産業医への不信感が高まることもあります。企業は高ストレス者面談のメリット・デメリットを明確にし、従業員が安心して受けられるようサポートすることが重要です。
詳細は「高ストレス者面談のメリット・デメリット」の記事をご覧ください。
ストレスチェックの高ストレス者面談の内容は?
高ストレス者面談では、産業医が従業員のメンタルヘルス状況を把握し、ストレスの原因や職場環境についての相談に応じます。必要に応じて業務内容の調整や部署移動などの改善案も提案されることがあります。
産業医が専門的な視点からアドバイスを行うため、従業員にとってはメンタルヘルスを守るための有効なサポートとなるでしょう。
ストレスチェックで高ストレス者に引っかかったら?
ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員は、産業医面談を通じて状況を確認し、改善方法を話し合います。
企業は、業務量の調整や職場環境の見直しなどを行い、従業員が無理なく働けるようサポートを行うことが求められます。産業医と連携することで、従業員のストレス要因に合わせた対応が可能です。
ストレスチェックの産業医面談で異動の申出はできる?
産業医面談では、異動を申し出ることが可能です。産業医に現状を伝え、勤務内容の調整や、配置転換の相談ができます。
産業医は面談で確認した内容を踏まえ、必要に応じて企業に改善の提案を行います。しかし、異動の最終決定権はあくまで企業側にあるため、注意が必要です。
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産業医と協力し、ストレスチェックを行うことは、企業にとっても従業員にとっても重要な取り組みです。産業医の専門的なサポートを活用することで、メンタルヘルスの問題を早期に発見し、職場環境を改善できます。
産業医との連携により、従業員が安心して働ける環境を築くことが可能です。定期的なストレスチェックを通じて、心の健康を支える職場作りを進めていきましょう。