健康診断の事後措置の流れを6つの手順で解説|事業者が知っておくべき義務とは

健康診断事後措置

労働安全衛生法第66条では、従業員への健康診断と、その結果に基づく事後措置の実施が義務づけられています。健康診断の事後措置の具体的な流れは以下の通りです。

健康診断や事後措置を怠ると、法的な罰則を受ける可能性もあります。従業員の健康と安全を守るためには、事後措置の義務や流れを正しく理解しておくことが重要です。

当記事では、他にも以下のことが分かります。

最後まで見れば、健康診断の事後措置の流れが分かり、従業員の健康を守れるようになるでしょう。

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一般健康診断の事後措置の流れとは?6つの手順で解説

健康診断事後措置の流れ

一般健康診断の事後措置の流れは以下の通りです。

健康診断後の事後措置は、従業員の健康を保護し、職場の安全性を高めるために不可欠です。従業員と企業にとっても多くのメリットがあります。

ここでは、健康診断の事後措置の流れを詳しく解説します。最後まで見れば、法的義務を果たし、健康で活気ある職場を維持できるようになるでしょう。

①定期健康診断を実施する

企業は労働安全衛生法に従い、従業員に年1回の定期健康診断を実施する義務があります。この法律は、労働者の健康を守り、職場の安全性を高めることを目的としています。契約状況や労働時間などの一定の条件を満たすパート、アルバイト、契約社員も健康診断の対象です。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

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定期健康診断では、血圧測定、視力検査、聴力検査、血液検査、尿検査などが行われます。企業はこれらの検査結果を基に、必要に応じて従業員に健康相談や専門医への受診を促すことが求められます。

定期健康診断は、従業員の健康保護と職場の生産性向上のために、非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

健康診断

②健康診断の結果を受領する

企業が行う次のステップは、健康診断の結果を受領することです。健康診断が終わったら、医療機関から診断結果をもらいます。

これには、労働者の健康状態に関する重要な情報が含まれています。

結果は大きく「異常なし」「要観察」「要医療」の三つに分けられ、さらに詳細に「要再検査」や「要精密検査」などと細かく指示されることもあります。企業は、これらの結果を正確に理解し、適切な対応を準備することが必要です。

また、健康診断の結果は労働安全衛生法に基づき、健康診断個人票を作成し、5年間保存する義務があります。

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。

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この過程は、労働者の健康を守るための法的要件を満たすだけでなく、健康問題の早期発見と対応に不可欠です。

なお、健康診断結果の保存期間については「健康診断結果の保存期間は5年!例外の保管期間や誰が保管するべきか解説」の記事をご覧ください。

③健康診断の結果を従業員に通知する

労働安全衛生法第66条の6に基づき、企業は健康診断の結果を従業員に適切に伝えなければなりません。

事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

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健康診断の結果の伝達は、従業員が自己の健康に対して責任を持ち、必要に応じて追加の検査や治療を受けるための重要な第一歩となります。

また、このプロセスは従業員のプライバシーを守るための細心の注意を要するため、結果は個人情報保護の観点から慎重に扱われます。健康診断の通知作業は、健康で生産性の高い職場環境を促進するために不可欠です。

④保健医または産業医から意見の聞き取りを行う

健康診断の結果「異常の所見あり」と判定された従業員は、保健医や産業医からの専門的な意見を聞きます。事業場が50人以上の場合は産業医が、50人未満の場合は地域産業保健センターがこの役割を果たします。

なお、労働安全衛生法では、事業者が異常所見のある従業員に対して、3ヶ月以内に意見を聞き取ることを義務づけています。

事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

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医師は従業員の現在の健康状態と職場環境を評価し、就業区分に基づく勤務の適切性について助言します。この段階では、従業員の健康を守るための具体的な対策が決定されるため、事業者としても適切な対応が求められます。

健康診断の産業医に関しては「健康診断における産業医の役割|従業員の健康を守るために重要なこと」の記事をご覧ください。

⑤就業上の実施措置(事後措置)を実施する

産業医や保健医の意見を踏まえ、事業者は従業員に対して適切な就業上の措置を行います。この措置は、従業員の健康状態に応じて「通常勤務」「就業制限」「要休業」といった区分で行われます。

厚生労働省就業区分

引用元:厚生労働省

措置を決定する前には、関係する従業員との十分な対話を通じて、その意見を聞くことが重要です。これにより、従業員が納得し、実施措置への理解と協力が得られます。

労働安全衛生法では、事業者に対して、健康診断で異常が見つかった従業員への適切な事後措置を義務づけています。事業者は、従業員の健康を守り、労働環境を改善するための具体的な措置を講じなければなりません。

事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)第七条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

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従業員の健康保持と職場環境の安全性向上を目指すためにも、事業者と従業員が協力して取り組むべき重要なステップです。

⑥労働基準監督署に定期健康診断結果報告書を提出する

従業員数が50人以上の事業場では、定期健康診断の結果に基づく報告書を労働基準監督署に提出することが求められます。

常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、第四十四条又は第四十五条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

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報告書は医師の押印が不要とされ、インターネット上での作成および届出が可能です。厚生労働省の公式ウェブサイトまたはe-GOV電子申請が利用できます。

労働基準監督署への報告は、労働安全衛生規則に基づくものであり、職場の健康管理体制の透明性を高め、労働環境の改善を促進するために重要な役割を果たします。事業者は、適切な手続きを通じて、従業員の健康保護に努めることが重要です。

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そもそも健康診断の事後措置とは何?概要を解説

健康診断事後措置とは

健康診断の事後措置は、従業員が受ける年次健康診断後に行われる一連の手続きを指します。従業員の健康状態を把握し、診断結果に基づいて必要な対策を講じることが目的です。

 「健康診断の事後措置」とは、主に労働者の健康診断の結果に基づき、事業者が医師の意見を聴取し、その意見を十分に尊重して、必要があると認めるときに就業上の配慮を行うこと等を指します。事業者として労働者の健康確保や安全配慮を遂行していく上で、もっとも基本的な対応のひとつとして位置づけられるものであり、産業医や産業保健スタッフにとっても身近な活動といえます。

労働者健康安全機構

労働安全衛生法では、事業者に対して従業員の健康管理を義務付けており、その一環として健康診断の事後措置が重要な役割を果たします。

事業者は、診断結果を踏まえて従業員の健康を守り、労働環境を改善するために適切な措置を講じなければなりません。これは、従業員の健康を確保するだけでなく、職場全体の生産性向上にも寄与します。

事後措置は、従業員と事業者が協力し合い、健康で安全な職場環境を作り上げるための基礎となります。

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健康診断の事後措置を行う意味とは?3つのメリットを解説

健康診断事後措置の意味

健康診断の事後措置を行う意味・メリットは以下の3つです。

健康診断の事後措置は、職場における健全な環境を促進し、従業員それぞれの健康管理をサポートするために非常に役立ちます。これにより、従業員一人ひとりが自身の健康についてより良く理解し、企業全体としても効率と士気が向上します。

ここでは、健康診断の事後措置がもたらすメリットを詳しく解説します。最後まで見れば、従業員と事業主が共に得られる利益を知り、健康診断の事後措置の必要性が分かるでしょう。

異常所見の早期対応

健康診断で見つかった異常所見への早期対応は、従業員の健康を守る上で極めて重要です。問題の早期発見は、従業員が必要な治療を迅速に受けられるようにします。

これにより、状態の悪化を防ぎ、長期的な健康問題に発展するのを避けることが可能です。

さらに、早期対応は、従業員がより速く健康を取り戻し、職場に復帰することを可能にします。これは、職場の生産性に直接的な影響を与え、従業員自身の満足度と職場全体の士気を高める効果があります。

健康意識の向上

健康診断の事後措置が従業員の健康意識の向上に寄与することは、その実施の大きなメリットの一つです。事後措置を通じて、従業員は自身の健康状態に関する具体的なフィードバックを受け取ります。

この情報は、自己の健康に対する認識を深め、健康管理に対する責任感を高める効果があります。

健康診断から得られたフィードバックや指導は、従業員に対して、自分の体を大切にし、健康を維持するための行動を促すでしょう。

また、従業員に健康リスクの早期発見と対処の重要性を伝えることにも役立ちます。たとえば、生活習慣の改善や適切な運動の勧奨は、病気の予防や健康状態の改善に直結します。

業務の生産性・従業員満足度の向上

健康診断の事後措置は、従業員の健康を守るだけでなく、業務の生産性と従業員満足度を高める重要な役割も果たします。健康な従業員は元気で集中力が高く、仕事に対するモチベーションが維持されやすいです。

さらに、従業員が健康であることは、病気による欠勤が減少し、長期的な健康問題による生産性の低下を防ぐことにも繋がります。これらの要因は全て、企業の人的資源を最大限に活用し、持続可能な成長を支えるために不可欠です。

従業員が健康で満足している職場は、高い生産性と競争力を維持するための鍵となります。

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健康診断の事後措置を行わなかった場合の罰則

健康診断 事後措置 罰則

健康診断の事後措置を行わなかった場合の明確な罰則は記載されていません。

しかし、企業は健康診断で異常がみられた従業員に対し、適切な措置を取らなければならないと義務づけられています。これには医師や産業医との連携が不可欠です。

事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)第七条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

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ただし、健康診断の未実施、健康診断結果の未記録・非通知に関しては、50万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。

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健康診断の事後措置に関する5つのよくある質問

健康診断事後措置よくある質問

健康診断の事後措置に関するよくある質問は以下の5つです。

ここでは、健康診断の事後措置に関してよくある疑問をピックアップしました。

従業員の健康管理の義務から就業制限の基準まで、重要な情報を分かりやすく解説します。最後まで見れば、健康診断についての理解がさらに深まり、疑問や不安なく進められるようになるでしょう。

健康診断における異常の所見とは?

健康診断における「異常の所見」とは、検査結果が通常の範囲を超えていることを指します。これには、血液検査で見られる数値の異常や、胸部X線検査で見つかる肺の問題、血圧の異常などが含まれます。

異常の所見が必ずしも病気を意味するわけではありませんが、さらなる検査や専門医の診察を必要とする可能性があります。

従業員の健康診断は義務?

従業員への健康診断の実施は、事業者にとって法律による義務です。労働安全衛生法に基づき、事業者は年に一度、従業員を対象に健康診断を行わなければなりません。

仮に企業がこの義務を怠った場合、労働安全衛生法第120条に従い、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項、第十三条第一項、第十五条第一項、第三項若しくは第四項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条第一項、第十八条第一項、第二十五条の二第二項(第三十条の三第五項において準用する場合を含む。)、第二十六条、第三十条第一項若しくは第四項、第三十条の二第一項若しくは第四項、第三十二条第一項から第六項まで、第三十三条第三項、第四十条第二項、第四十四条第五項、第四十四条の二第六項、第四十五条第一項若しくは第二項、第五十七条の四第一項、第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第六十一条第二項、第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項、第八十七条第六項、第八十八条第一項から第四項まで、第百一条第一項又は第百三条第一項の規定に違反した者

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健康診断における就業制限の基準は?

健康診断で確認された特定の健康問題に基づき、従業員に就業制限が勧告されることがあります。これは、従業員の健康を守り、職場でのリスクを管理するための措置です。

化学物質への露出が問題の場合、該当する業務からの一時的な除外、心臓病を抱える従業員には、過重労働の避ける勧告などが行われる場合があります。

事業者は、医師の勧告に基づき、従業員に適した業務調整を実施することが重要です。

健康診断の事後措置における受診勧奨は義務?

健康診断の事後措置の受診勧奨は、企業の「努力義務」とされています。法律で「絶対にしなければならない」と強制されているわけではありませんが、従業員の健康を考え、可能な限り実施することが推奨されています。

受診勧奨は、従業員が健康診断で見つかった問題に早期に対処できるようにするため、職場全体の健康と安全を守るために重要です。

就労判定は健康診断後にされる?

就労判定は健康診断後に行われます。就労判定は、健康診断の結果をもとに、従業員が仕事に出ることが安全かどうかを判断するプロセスです。

たとえば、重い物を持つ作業や高い場所での作業など、特定の条件下での労働が従業員の健康に影響を与えないかどうかを見ます。

企業は、従業員の健康状態に合わせて、適切な仕事を割り当てることが推奨されます。健康診断の結果が出た後、産業医や専門の医師と相談し、従業員に最適な仕事環境を提供することが大切です。

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まとめ:健康診断の事後措置を通して従業員の健康を守ろう

健康診断事後措置まとめ

健康診断後の事後措置は、労働安全衛生法に基づく重要な手続きです。従業員とのトラブルを防ぐためにも、以下の流れを覚えておきましょう。

健康診断には、異常所見への早期対応や健康意識の向上など、多くのメリットがあります。健康診断の義務や労働基準監督署への報告義務など、重要なポイントも押さえておくことが重要です。

健康診断後の事後措置は、従業員の健康と職場の安全を守り、生産性を向上させるために欠かせないプロセスと言えます。従業員一人ひとりの健康診断を通じ、健康的で安全な職場を提供しましょう。

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