- 従業員が健康診断を受けてくれない
- どうしたら受診率が上がる?
定期健康診断について、上記のことで悩んでいる企業担当者も多いでしょう。健康診断の受診率を改善するには、以下の5つの戦略が有効です。
上記の取り組みによって、従業員の健康診断に対する意識を変化させ、受診を促せます。また、本記事では以下のことについて分かります。
記事を最後まで読めば、健康診断の受診率をアップさせる対策が分かるほか、企業と従業員の双方にメリットがある職場環境を作ることが可能になります。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
労働安全衛生法では、定期健康診断の実施は企業の義務として定められています。
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
引用:昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法
企業は従業員の健康確保のための社会的な責任を担っています。定期健康診断の実施はその一環で、従業員の健康状態の把握・健康問題の早期発見・適切な対処のための取り組みです。
健康診断の項目や頻度は法律によって定められており、一般的には1年に1回の実施が義務化されています。特定の業種(有害な業務)や労働条件によっては、追加の健康診断が必要とされるケースもあります。
また、従業員も企業が実施する定期健康診断を受診する義務があるのです。
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。
引用:昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法
このように、法律で定められている定期健康診断ですが、守らなかった場合の罰則が気になる人もいるでしょう。健康診断を実施しない企業は50万円以下の罰金が科せられます。そのほか、健康診断の情報を外部に漏洩させた企業は、罰金刑にプラスして6ヵ月以下の懲役が科せられるケースもあります。
一方、従業員が定期健康診断の受診を拒否した場合、従業員が個人的に罰則を受けることはありません。ただし、企業が従業員に対して独自にペナルティを科すことは可能なので、就業規則に受診を拒否した場合の処分の明記を検討するのもよいでしょう。
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厚生労働省の調査によると、定期健康診断の受診率は81.5%です。以下の資料では、企業の規模・実施率・受診率・有所見者率(健康診断に引っかかる人の割合)が確認できます。
定期健康診断の実施と受診は法律で義務化されているため、受診率は本来なら100%になるはずです。しかし、上記の資料では健康診断の受診率は100%に達していないことが確認できます。
なぜ、未受診の従業員が出てしまうのか。健康診断を受けない従業員がいる原因を知るためには、従業員の不安や悩みを把握することが大切です。
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定期健康診断の受診率が100%にならない理由は、以下の4つです。
従業員が健康診断を受けない理由には業務での忙しさが関係しています。また、従業員の健康に対する意識が低いことも原因です。以下からは、受診率の低さに影響をおよぼしている理由をくわしく解説します。
多忙なスケジュールにより受診する時間・余裕がない
1番大きな理由が「やることが多く、健康診断を受ける余裕がない」ことです。一般的に健康診断を受ける時間帯は労働時間内が望ましいとされていますが、仕事の中断が難しい業界や職種も存在します。健康診断の指定日が決まっている場合は、出張や繁忙期が原因で受診できない従業員もいるでしょう。
また、企業が労働時間外に受診する指示を出したり有給消化扱いになったりすると、従業員の意欲が低下し、健康診断を避けてしまうのです。
異常が見つかることへの恐怖心・不安感がある
健康異常が見つかることへの恐怖心も、従業員が健康診断を受診しない理由です。自身の健康リスクの把握を単に恐れているほか「異常が見つかったら仕事に影響がでる」「病気で入院したら生活できなくなってしまう」というネガティブイメージが、従業員の受診率をさげています。
これは、実際に健康異常が見つかり通院や手術が必要になった際、企業がどのように対応するのか明示していないことも原因です。
健康診断の重要性を理解していない
「受診が面倒くさい」「不調ではないから大丈夫」という考えを従業員が持ち、健康診断の重要性を理解していないケースも多いです。一般的に、健康に対する意識は、体調不良など心身に異常が出た際にしか高まりません。
特に、若い年代は健康に対する意識が低いといえるでしょう。もとより、定期健康診断の実施と受診が法律で義務化されていることを知らない従業員も多くいます。
職務評価が不利に働くことを恐れている
健康診断の結果が昇進や昇給などの評価に響くことの懸念も、従業員が健康診断を避ける原因のひとつです。従業員は健康診断の結果を企業に提出する義務があるため「異常が見つかれば左遷や解雇になる?」など、不安を覚えてしまいます。
しかし、健康診断の結果で職務評価を不当に行うことは禁じられているほか、健康診断の内容は管理担当者など一部の人しか把握できません。この事実を会社全体に周知しないと、未受診の従業員を出してしまいます。
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従業員の健康診断の受診率を上げるためには、受診を受けるメリットや重要性を説明することが大切です。そのためには、以下の5つの戦略を実行してください。
上記の対策を講じることで従業員の受診に対する障壁を取り除き、受診へのモチベーションを上げられます。
健康診断を受診しない理由を聞く
健康診断を受診しない従業員に、なぜ受診しないのかヒアリングしてください。健康診断を受けない理由はさまざまで、それぞれの背後には個々の懸念や課題が存在します。受診のハードルを下げるためには、まずはその理由を的確に把握することが不可欠です。
「受診が面倒くさい」と考える従業員に関しては、面談のときに定期健康診断は労働安全衛生法によって定められていること、従業員は受ける義務が発生することを伝えてください。
ただし、義務だからといって無理に勧めると反発を受ける可能性があります。従業員の抱える悩みに寄り添って、受診しない本音をヒアリングしましょう。
健康診断の利点を伝えて受診のモチベーションを高める
健康診断のメリットを伝えることも戦略として有効です。健康診断には身体の健康状態を把握し、早期発見につながるなど複数の利点があります。健康診断を受けることで以下のメリットがあることを伝えてみてください。
- 定期的(毎年)欠かさず受診することで健康状態の変化を把握できる
- 不調の原因や病気を早期発見できる
- 11個の検査項目があり、身体を幅広くチェックできる
仕事もプライベートも充実させるには、心身が健康であることが大切です。健康診断は自分自身の生活習慣を見直す機会になるほか、早期発見が病気を治す鍵を握っているとも考えられます。早めに異常が見つかれば治療法の選択肢も広がるため、治療費の負担も減らせるでしょう。
異常が見つかったあとの生活を心配している従業員に対しては、企業のフォロー体制などの説明が効果的です。
健康診断を受診しやすい環境を整える
健康診断を受けやすい環境作りも受診率アップに欠かせません。受診の利便性は受診率に直結するので、医療機関のアクセシビリティや待ち時間の短縮など、受診しやすい環境作りを利用者目線で考えましょう。
たとえば、業務内容を考慮して定期健康診断の日程を数日用意したり、繁忙期ではない余裕がある時期に設定したりするのがおすすめです。健康診断を行う医療機関を従業員の定期券内に設定し、交通費の負担が出ない対策もよいでしょう。
リモートワークを実施している従業員に関しては、自宅近くの医療機関で受診できるよう手配すると、受診のモチベーションを高められます。
健康診断関連の福利厚生を充実させる
企業や団体が健康診断を促進するためには、福利厚生としての位置づけも重要です。健康保険や健康診断の優遇制度など、福利厚生を充実させることで受診率向上につながります。
労働政策研究・研修機構が発表した調査によると、従業員が求めている福利厚生のなかでも、人間ドック受診補助制度の必要性が高いという結果が出ました。そのため、人間ドックやオプション検査など自費になる検査の費用を会社負担にすると、健康診断に物足りなさを感じている従業員も満足するでしょう。
また、フィットネススタジオ利用の割引制度やヘルスケアアプリを導入すると、従業員の健康意識が高まり、健康診断の受診率アップを狙えます。
参考元:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構
外部サービスを導入する
健康診断の受診率を向上させるためには、外部サービスの導入が有効です。たとえば、未受診の従業員を抽出し、受診勧奨メールを送信する外部サービスなら、ピンポイントで受診を促せます。
上記のような外部サービスは、従業員の健康診断受診状況の管理が一元化できるほか、健康に関する相談窓口を社外に設けることが可能です。企業は人事の作業・管理コストが大幅に削減でき、従業員は自身の健康状態が企業の担当者に知られてしまうリスクを減らせます。
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受診率を向上させると以下の2つのメリットが得られます。
企業の立場において、定期健康診断の実施は法律で定められた義務ではありますが、負担だけが多くなるわけではありません。企業側にもメリットがあることを理解しましょう。
生産性が向上する
健康診断の受診率がアップし、従業員の健康状態を良好に保つことができれば、仕事への集中力やパフォーマンスが上がります。また、定期的な健康診断により生活習慣が見直されることで、体調不良や病気による遅刻や欠勤も減少するでしょう。
さらに、健康診断によって早期に疾患が発見できると、適切な治療や予防が可能となり、業務への影響を最小限に抑えられます。その結果、企業の生産性が向上するのです。
従業員の定着率が向上する
健康診断の受診率向上は、従業員の定着率に比例します。健康診断という福利厚生を通じて従業員が企業からのサポートを実感すると、会社が自身の健康を重視していることを感じ、職場に対する満足度が高まります。
従業員の満足度は働きやすさに直結し、結果として長期的に勤務する人材になってくれるのです。求人内容にも福利厚生として健康診断やオプション検査を記載すると、就職活動や転職活動している人の目に留まり、就職先として選ばれやすくなるでしょう。
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健康診断の受診率に関するよくある質問は以下の通りです。
企業の人事・労務担当者は、よくある質問について把握しておいてください。
人間ドックの受診率は?
厚生労働省の調査では、人間ドックの受診率の平均は男性が74.0%、女性が65.6%という結果になりました。以下の資料では、年代別の受診率が記載されています。
引用元:国民生活基礎調査
上記の表を確認すると、体力の低下を実感するであろう40歳以上の男女が、健康診断や人間ドックを積極的に受診していることがわかります。一番高い割合で受診しているのが、50〜59歳の男性で受診率は81.8%です。
がん検診の受診率は?
がん検診の受診率は、肺がん検診の場合50%を超えています。そのほか、胃がん検診・大腸がん検診・乳がん検診・子宮頚がん検診においては、受診率は50%未満という結果です。
欧米のがん検診受診率が70〜80%となるため、日本のがん検診の受診率は高いとはいえないのが現状です。
参考元:がん検診の推進|日本対がん協会
健康診断で引っかかる人の割合は?
健康診断を受けて有所見者となった人の割合は2020年時点で63.6%です。この割合は2006年時点で48.0%でしたが、年々増加して2020年に63.6%にまで上昇しました。
上記の割合はあくまでも健康診断を受けた人のなかで有所見者となった人の数値です。そのため、健康診断が未受診の人をくわえると、有所見者率はさらに上昇するといえるでしょう。
参考元: 2.健康診断有所見者の推移|厚生労働省
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定期健康診断の実施は企業が担う義務であり、受診率を上げるための対策を講じることも企業の役目だといえます。そのため、受診率を向上させる戦略として以下の5つに取り組みましょう。
健康診断の受診率アップは、企業の生産性の向上と社員の定着率向上という大きなメリットが得られます。受診率を上げる対策で、企業と従業員の双方にとってよい職場環境作りにつなげてください。