健康診断の勤務扱いについては、法律上、以下のように定められています。
- 一般健康診断⇒勤務扱いにならず、賃金の支払い義務はない
- 特殊健康診断⇒勤務扱いになり、賃金の支払い義務が生じる
労働局の通達によると、一般健康診断は業務遂行と直接関係がないため、勤務扱いにはなりません。そのため、企業は健康診断を所定の労働時間外に実施できます。
ただし、特殊健康診断についてはその限りではありません。また、健康診断を休日や有休扱いで実施する場合は注意が必要です。
当記事では、以下のことがわかります。
最後まで見れば、健康診断を業務時間内・時間外のどちらで行うべきか理解でき、法令順守と社会通念のバランスを取りながら実施できるでしょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
結論を述べると、健康診断を勤務扱いとする明確な法律は存在しません。昭和47年の労働局の通達では、一般健康診断は業務遂行とは直接関係がないため、受診時間を勤務時間とする義務は事業者に課されていません。
ただし、労使間で協議を行い、賃金の支払いを定めることが推奨されています。
ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。
引用元:厚生労働省
上記の通達を読み解くと、健康診断を勤務扱いとする明確な法律は存在せず、業務時間内に受診すべき決まりもないことがわかります。
しかし、労働者の健康は事業運営に不可欠です。そのため、企業側が健康診断の時間を勤務扱いとし、賃金を支払うことが望ましいとされています。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康診断の勤務扱いにするケースを以下の2つに分けて解説します。
健康診断を勤務扱いにすべきかどうかは、受ける健診の種類によって異なります。ここでは、一般健康診断と特殊健康診断に分けて解説します。
最後まで見れば、健康診断の勤務扱いの基準がわかり、適切な対応が取れるようになるでしょう。
一般健康診断
一般健康診断は法律上、勤務扱いにする必要がないとされています。一般健康診断の実施は労働者の健康を維持するための企業の義務で、業務遂行とは直接関係ないと考えられているためです。
企業に課されているのは、一般健康診断の実施と費用負担の義務です。
現状、一般健康診断を受けている時間帯の賃金を支払う義務は課されていません。
一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。
引用元:厚生労働省
そのため、企業が従業員に一般健康診断を業務時間外で受診するよう指示することは法的に問題ありません。
しかし、労働者との良好な関係を保つため、業務時間内に実施して便宜を図ることが推奨されています。一般健康診断については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
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特殊健康診断
特殊健康診断は、法律上、業務時間内の実施が求められます。特殊健康診断は業務内容に関連した健康リスクを管理する目的があるためです。
労働局の通達では、特殊健康診断を勤務時間外に実施した場合、事業者は割増賃金を支払う義務が発生します。
特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。
引用元:厚生労働省
特殊健康診断を行わなければ、労働者の業務に支障をきたす可能性が高いです。企業側は労働者の健康を守るためにも、特殊健康診断を必ず業務時間内に実施することが重要です。
特殊健康診断については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
企業が健康診断を勤務扱いで実施すると定めた場合、賃金の支払い義務が発生します。
特に、一般健康診断の受診を業務命令と定め、受診しない場合に懲戒処分とする旨を就業規則に明記している企業は、賃金支払いが必須な労働時間とみなされます。
また、健康診断のために会社を中抜けした場合も同様です。
「健康診断を勤務扱いで実施する」と定めているなら、中抜けした時間帯の賃金も支払いが必要です。
特殊健康診断については、もともと法律上で業務時間内に実施することが決定しています。そのため、特殊健康診断の実施中に賃金が発生し、支払う義務が生じます。
健康診断の費用負担については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康診断を勤務扱いにする場合は、就業規則に記載しなくても構いません。健康診断を業務時間内に業務命令として行い、欠勤扱いにしないのであれば、就業規則に記載する必要はありません。
就業規則に記載するかどうかは企業に委ねられます。企業が就業規則に記載することを望むなら、以下のように明記すると良いでしょう。
一般健康診断を会社の指示により就業時間内に受診した場合、要した時間は通常どおり業務遂行として取り扱う。
また、就業規則に記載しない場合は従業員が把握できるよう、社内全体への周知を心がけると良いでしょう。
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勤務扱いにせず健康診断は実施できるのか、以下の3つのケースに分けて解説します。
健康診断を勤務扱いにせず実施できるのか気になる経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、有給・休日・半休に分けて、健康診断の取り扱いを解説します。
最後まで見れば、勤務扱いにせず健康診断を実施する方法が理解でき、従業員へ適切に案内できるでしょう。
有休扱いにする場合
企業は健康診断を有給休暇として扱えます。
昭和47年の労働局の通達では、一般健康診断は業務に直接関わるものではないため、企業が有給休暇扱いにすることも問題ないとされています。
ただし、健康診断を有給休暇として扱う場合は労働者の同意が不可欠です。従業員に無理やり強制はできません。
企業は、従業員の中には健康診断で有給休暇を消化したくない人もいることを理解する必要があります。
健康診断については労使間で協議し、従業員の意向を尊重したうえでを実施することが重要です。
休日に実施する場合
企業が健康診断を休日に行うことも可能です。法律では、健康診断を必ず所定労働時間内に実施しなければならないという規定はないため、従業員が休日に診断を受けることに問題はありません。
ただし、休日に健康診断を行う際には、いくつかの配慮が必要です。
- 従業員が受診しやすい場所の医療機関に予約する
- 従業員が受診しやすい日時を設定する
健康診断を休日に実施すると「休みの日に行かされる」と従業員から不満が出る恐れもあります。企業は、従業員がスムーズに健康診断を受けられるよう適切にサポートしましょう。
半休扱いにする場合
企業側が健康診断を半日休暇扱いにすることも可能です。
健康診断を半日休暇とする場合は、先述した「休日に実施する場合」と同じ扱いになります。
そのため、従業員が健康診断をスムーズに受診できるよう、医療機関の場所や日時を設定する必要があります。
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健康診断業務を楽にするならけんさぽへご相談ください。けんさぽは健康診断業務を一元化する健康管理システムであり、以下の健康診断業務を一括で承ります。
- クリニックの日程確保(一次・二次)
- 従業員の日程調整・変更
- 健康診断の受診勧奨(一次・二次)
- 受診状況の確認
- 有所見者の自動抽出
- 健診結果の回収・保管
- 産業医・保健師の紹介
- 産業医専用画面で就業判定
- 一次健診・二次健診・就業判定の把握
- 健康診断報告書の出力
けんさぽは、従業員一人ひとりが利用できるアプリを用意していることも特徴です。自身の健康診断結果の確認ができるほか、気になる症状が出たときに産業医へ相談できるチャットサービスも用意されています。
従業員が自身の健康を自分で管理できるため、健康維持や仕事のパフォーマンス向上が期待できます。
また、けんさぽは健康診断業務だけではなく、ストレスチェックに関する業務も委託できます。
- ストレスチェックの実施・解析
- 高ストレス者の抽出
- 産業医への面談指導
- ストレスチェック報告書の出力
ストレスチェックの実施は、常時使用する労働者が50人以上いる企業に課されている法的な義務です。
ストレスチェックを実施せず、労働基準監督署へ報告を怠った企業には指導が入ります。また、指導後に改善しない企業は50万円以下の罰則が科される可能性もあります。
第百二十条次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
引用元:労働安全衛生法
けんさぽなら義務づけられているストレスチェックを企業の代わりに実施します。さらに、収集したデータを基に、定められたフォーマットで報告書を自動出力するため、未報告による罰則リスクを低減できます。
健康診断業務やストレスチェック関連業務が負担で悩んでいる経営者・人事担当者は、ぜひ一度けんさぽにご連絡ください。
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健康診断の勤務扱いに関するよくある質問は以下の3つです。
健康診断の勤務扱いについて、疑問を抱える経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、健康診断の勤務扱いに関するよくある質問を詳しく解説します。
最後まで見れば、健康診断と勤務扱いの疑問・回答が理解でき、法律に沿って健康診断を実施できるでしょう。
健康診断を休日・有給休暇で実施することは違法?
健康診断を休日・有給休暇で実施することは、違法ではありません。なぜなら、健康診断を勤務扱いとしたり所定労働時間内に実施したりなどの明確な法律はないからです。
ただし、健康診断を休日に実施する場合は、従業員がスムーズに受診できる環境を整える必要があります。また、有給休暇扱いでは従業員の合意を得ることが必須です。
健康診断は出勤扱いにできる?
健康診断を出勤扱いにすることは可能です。健康診断が出勤扱になるケースは以下で確認しましょう。
- 労使間の協議によって賃金を支払うことが定められている
- 就業規則で健康診断の未受診が懲戒処分扱いになっている
- 受診するのが特殊健康診断である
上記の項目に当てはまる場合は、健康診断が出勤扱いになります。
従業員から健康診断に有給を使いたくないと言われた場合は?
従業員が「健康診断に有給を使いたくない」と言った場合は、有給休暇扱いにできません。
昭和47年の労働局の通達では、健康診断に要した時間については、労使協議で定めるものと明記しています。
その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものである(一部省略)
引用元:厚生労働省
そのため、従業員から健康診断に有給を使いたくないと言われたなら、無理やり有給休暇扱いにするのは避けてください。従業員との良好な関係や会社の雰囲気を保つためには、従業員本人の意思を尊重することが重要です。
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健康診断は法的には勤務扱いにする義務はありません。ただし、労働局の通達では、従業員の健康は事業の円滑な運営の不可欠であるため「受診に要した時間を勤務扱いとし、企業が賃金を支払うことが望ましい」と明記しています。
健康診断を勤務扱いにすることで従業員が安心して受診でき、健康管理が容易になり、職場全体の生産性向上につながります。
どうしても健康診断を勤務扱いにせず実施したい場合は、以下の3ケースを参考にしてください。
勤務扱いにせずに健康診断を実施するなら、従業員に対して丁寧なサポートが必要です。
企業は従業員の健康を守って良好な労働環境を保つために、健康診断の勤務扱いや賃金支払いについて柔軟に対応しましょう。