特殊健康診断の再検査は企業の義務!受診勧奨の例文や費用負担について解説

特殊健康診断の再検査の義務

特殊健康診断で従業員に異常が確認された場合、企業には再検査や精密検査を実施する義務があります。特殊健康診断の再検査にかかる費用も、企業が負担しなければなりません。

従業員の健康状態を管理し、安全な労働環境を確保するために、企業は特殊健康診断の再検査を積極的に推奨・支援することが求められます。

加えて、再検査の結果に基づき、作業内容の変更や労働時間の短縮などの措置を講じることも必要です。

なお、特殊健康診断については「特殊健康診断とは?」の記事をご覧ください。

当記事では、主に以下のことが分かります。

最後まで見れば、特殊健康診断の再検査が企業の義務であることが分かり、従業員の安全を確保できるようになるでしょう。

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【結論】企業には特殊健康診断の再検査・精密検査の実施義務がある

【結論】企業には特殊健康診断の再検査・精密検査の実施義務がある

企業は特殊健康診断の結果に基づき、従業員の再検査・精密検査を実施する義務があります。有機溶剤、鉛、石綿などに関わる業務では、従業員の健康状態を確認し、問題があれば再検査を行うことが必要です。

ハ 再検査又は精密検査の取扱い
事業者は、就業上の措置を決定するに当たっては、できる限り詳しい情報に基づいて行うことが適当であることから、再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、当該再検査又は精密検査受診を勧奨するとともに、意見を聴く医師等に当該検査の結果を提出するよう働きかけることが適当である。
なお、再検査又は精密検査は、診断の確定や症状の程度を明らかにするものであり、一律には事業者にその実施が義務付けられているものではないが、有機溶剤中毒予防規則(昭和 47 年労働省令第 36 号)、鉛中毒予防規則(昭和 47 年労働省令第37 号)、特定化学物質障害予防規則(昭和 47 年労働省令第 39 号)、高気圧作業安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 40 号)及び石綿障害予防規則(平成 17 年厚生労働省令第 21 号)に基づく特殊健康診断として規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられているので留意する必要がある。

引用元:厚生労働省

特殊健康診断は、特定の有害物質や危険な作業環境に従事する従業員を対象に行われます。再検査の義務を怠れば、従業員の健康リスクが高まるだけでなく、法的トラブルに発展する可能性もあります。

企業は、従業員の安全と健康を守るため、法律に従った対応が必要です。

特殊健康診断以外の健康診断における再検査は企業の努力義務

特殊健康診断以外の一般的な健康診断では、再検査の実施義務が課せられているわけではなく、あくまで努力義務とされており、強制はできません。

再検査の実施は経営側の判断に委ねられていますが、従業員の健康を守るためには積極的に再検査を推奨することが望ましいです。積極的に再検査を支援することで、従業員の安全と健康を確保できます。

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特殊健康診断で再検査を求められた従業員への対応策

特殊健康診断で再検査を求められた従業員への対応策

特殊健康診断で再検査を求められた場合、速やかに従業員にその必要性を伝え、対応を行うことが重要です。再検査を受けるよう勧奨し、結果に基づき労働時間の短縮や作業内容の変更などの措置を講じることが求められます。

従業員の健康状態を正しく管理することで、企業の労働環境が改善され、長期的で安全な業務遂行に繋がります。

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特殊健康診断の再検査における受診勧奨の案内文・例文

特殊健康診断の再検査における受診勧奨の案内文・例文

特殊健康診断の再検査が必要な従業員には、厚生労働省が公開しているテンプレートが役立ちます。「特殊健康診断受診のお願い」をメールで送信し、再検査を促すことが重要です。

以下は血圧が受診勧奨判定値を超え、すぐに医療機関への受診が必要な従業員への説明文例です。

今回、血圧が非常に高くなっていました。望ましい血圧レベル(収縮期血圧 120 mmHg 未満かつ拡張期血圧80mmHg 未満)の人と比べて、約5倍、脳卒中や心臓病にかかりやすいことがわかっています。
この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください。

引用元:厚生労働省-健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック)文例集-

メールには特殊健康診断の再検査の必要性や受診の手順、実施場所を明確に記載し、従業員が直ちに対応できるようサポートしましょう。

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特殊健康診断の再検査以外で企業に科される4つの義務

特殊健康診断の再検査以外で企業に科される4つの義務

特殊健康診断の再検査以外で企業に科される義務は以下の4つです。

企業は特殊健康診断の再検査に加え、他にもいくつかの義務が科されています。これらの義務は、従業員の健康を守り、安全な作業環境を維持するために重要な役割を果たします。

ここでは、特殊健康診断の再検査以外で企業が果たさなければならない4つの義務について詳しく解説します。

費用の負担

特殊健康診断やその後の再検査・精密検査の費用は、全て企業が負担する義務があります。従業員が自己負担することはありません。

特殊健康診断に関連する費用を企業が全額負担することで、従業員の健康を確保します。従業員が経済的な理由で再検査を避けることを防ぎ、速やかな対応を促すことが可能です。

健康診断の費用負担はどこまで?」の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

作業内容の変更・労働時間の短縮などの事後措置

特殊健康診断や再検査の結果に基づいて、企業は従業員の作業内容の変更労働時間の短縮などの事後措置を講じる義務があります。事後措置は、従業員の健康を守り、業務中のリスクを軽減するために必要な対応です。

健康状態に応じた作業の調整や負担軽減は、従業員が安心して働ける環境を維持するために重要になります。

詳細は「健康診断の事後措置の流れ」の記事をご確認ください。

結果報告書の提出

特殊健康診断を実施した後、企業には結果報告書を労働基準監督署へ提出する義務があります。特殊健康診断の結果報告書は、人数に関わらず提出しなければなりません。

なお、明確な提出期限は定められていませんが、遅滞なく提出することが求められています。そのため、企業はできるだけ早く提出することが望ましいです。

詳細は「健康診断結果報告書」の記事を参考にしてください。

結果の保存

企業は特殊健康診断の結果を記録し、一定期間保存する義務があります。保存期間は、有機溶剤や特定化学物質等の特殊健康診断で5年、電離放射線で30年、じん肺で7年です。

特殊健診 5 年、7 年(じん肺)、30 年(放射線、特定化学物質の一部)、40 年(石綿)
※じん肺 5 年→7 年(S53)

引用元:厚生労働省

特殊健康診断結果の保存期間は法的に定められており、労働安全衛生法に基づいて適切な管理が必要です。

詳細は「健康診断結果の保存期間」の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

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特殊健康診断の再検査を受けたくない・行かないと言われた場合の対処法

特殊健康診断の再検査を受けたくない・行かないと言われた場合の対処法

従業員が特殊健康診断の再検査を受けたくない、または行かないといった場合、企業はまず再検査の重要性を丁寧に説明することが求められます。

従業員の健康を守るために必要であることを強調し、医師の助言を伝えるなどして、再検査の受診を促すことが効果的です。

再検査を拒否した場合は書面で確認し、記録として残すことが法的なトラブルを防ぐ手段となります。

詳細は「健康診断を受けたくないと言われた場合の対応」の記事をご確認ください。

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そもそも特殊健康診断の再検査とは

そもそも特殊健康診断の再検査とは

特殊健康診断の再検査とは、特殊健康診断の結果に基づき、さらなる検査が必要と判断された場合に実施される追加の検査です。通常の健康診断では見つからない問題や、詳細な確認が求められる健康状態に対応するために行われます。

特殊健康診断の再検査は、従業員の健康を保護するために必要な措置です。

診断結果によっては、さらに専門的な医師の診断や治療が求められる場合があります。従業員の健康管理の一環として再検査を実施し、結果に応じた対策を講じることは企業の責任の一つです。

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特殊健康診断の再検査義務に関する5つのよくある質問

特殊健康診断の再検査義務に関する5つのよくある質問

特殊健康診断の再検査義務に関するよくある質問は以下の5つです。

ここでは、特殊健康診断の再検査義務に関連する質問と回答をご紹介します。健康診断の再検査を受けない理由や、強制の可否についても触れているため、人事担当者・経営者は参考にしてください。

特殊健康診断の再検査は受けないとどうなる?

従業員が特殊健康診断の再検査を受けない場合、健康リスクを見逃す可能性があります。再検査は、初回の診断結果で異常が見つかった際に、さらに詳しい検査を行うために必要です。

再検査を受けなければ、健康リスクが正確に把握できず、従業員が病気やけがのリスクにさらされる可能性があります。企業は従業員に再検査の重要性を伝え、健康管理の一環として確実に実施することが求められます。

特殊健康診断の再検査はどこで受ければ良い?

特殊健康診断の再検査は、企業と契約を結んでいる医療機関で受けることが一般的です。再検査の必要性が判明した際には、従業員に指定された医療機関や再検査の手順を案内します。

従業員の健康リスクを軽減し、再検査の受診を円滑に進めるためには、企業側が速やかに具体的な受診先を提示することが重要です。

健康診断の再検査結果は会社に報告する必要がある?

従業員が健康診断の再検査の結果を会社に報告する義務はありません。再検査や精密検査の結果については、従業員の個人的な判断で報告するかどうかを決めることが可能です。

ただし、企業は従業員の健康を守る立場から、再検査の受診を勧めたり、結果を報告するよう促したりすることが推奨されます。

健康診断の再検査を受けない理由は何がある?

従業員が再検査を受けない理由として、時間的な負担や、再検査の必要性を軽視するケースが挙げられます。また、検査結果による業務への影響を懸念する従業員もいます。

企業は再検査の重要性や、健康リスクを回避するための説明を行い、従業員が安心して再検査を受けられるよう配慮することが大切です。

健康診断の再検査は会社が強制しても良い?

企業が従業員に健康診断の再検査を強制することはできません。ただし、特殊健康診断の再検査は特定の有害物質や危険な作業環境に従事する労働者を対象に行われるものであり、実施が義務付けられています。

従業員の健康リスクを未然に防ぐため、再検査の必要性を丁寧に説明し、受診を促すことが重要です。

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まとめ:特殊健康診断の再検査の実施は企業義務!従業員の健康を守ろう

特殊健康診断の再検査義務のまとめ

企業は従業員の健康を守るため、特殊健康診断の再検査や精密検査を実施する義務を果たす必要があります。特殊健康診断の再検査は従業員の健康状態を管理するために不可欠であり、結果に基づいた対応が企業の安全な労働環境を確保します。

再検査を推奨し、法的な義務を遵守することは、従業員の健康リスクを減らすことに繋がります。企業は、より健全で安心な職場を実現できるでしょう。