健康診断の目的は「健康状態の確認」、人間ドックの目的は「病気の早期発見・予防」という違いがあります。
人間ドックは50項目以上の検査があり、健康診断では見つけられない異常を素早く発見できることがメリットです。そのため「人間ドックを受けないほうが良い」という意見は正しいとはいえません。
それぞれの特徴を把握することで、人間ドックが自分に必要なのかが判断できます。
当記事では、以下のことがわかります。
最後まで読めば、健康診断と人間ドックの違いがわかり、自分に必要な検査を受ける準備ができるでしょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康診断と人間ドックの違い・特徴は以下の通りです。
健康診断 | 人間ドック | |
---|---|---|
目的 | 健康状態の確認 | 病気の早期発見・予防 |
特徴 | ・健康状態の大まかな把握 ・法的義務がある | ・全身を詳しく検査する ・任意で受けられる |
検査項目 | 10~30項目 | ・50項目以上 ・カスタム可能 |
費用 | ・1万円前後 ・基本的に企業・自治体負担 | ・数万〜数十万以上 ・基本的に自費 ・福利厚生で補助が出る場合もある |
結果の説明 | 結果の書類を後日送付 | 医師が直接説明 |
場所 | ・企業が指定した医療機関 ・健康診断に対応する機関から選択 | 人間ドック対応機関から選択 |
健康診断と人間ドックは、どちらも体の健康状態をチェックするための検査ですが、目的や内容に違いがあります。ここでは、健康診断と人間ドックの違いを詳しく解説します。
健康診断は法律で定められた義務的な検査で、基本的な検査項目を中心に行われます。一方、人間ドックは個人の意思で受ける任意の精密検査であり、検査項目は多岐にわたります。
最後まで見れば、両者の違いが明確になり、人間ドックの必要性が理解できるでしょう。
健康診断とは:体の健康状態を確認するための検査
健康診断とは、健康状態を診断し、病気の兆候を早期に発見するための検査です。
特に生活習慣病は自覚症状が少ないため、定期的な健康診断の受診が重要です。40~74歳の人には、生活習慣病のリスクを早期に発見するための特定健康診査も行われます。
「特定健診・特定保健指導」って?
Q 対象となる人は?
40歳以上75歳未満の医療保険加入者が対象です。
引用元:政府広報オンライン
会社員や公務員のかたなど勤務先で行われる健診を受ける場合、健診項目に特定健康診査も含まれていますが、それ以外のかたについては別途、加入している医療保険から受診券や受診案内が届きますので、指定の実施場所で受診する必要があります。詳しくは、加入している医療保険に確認してください。
健康診断は、国民健康保険に加入している場合、各自治体が主導して実施します。会社員は企業が実施する健康診断を受診しましょう。
企業に勤めている場合、労働安全衛生法に基づき、一年に1回の受診が義務づけられています。
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
引用元:e-GOV法令検索
健康診断の検査内容は、身体計測・血液検査・胸部X線・尿検査などが中心で、短時間で終了します。ただし、有害な業務を担う労働者には、体の状態を詳しく検査する特殊健康診断も実施されます。
企業に義務づけられている健康診断の種類は以下の通りです。
種類 | 内容 |
---|---|
一般健康診断 | 雇入時の健康診断 |
定期健康診断 | |
特定業務従事者の健康診断 | |
海外派遣労働者の健康診断 | |
給食従業員の検便 | |
特殊健康診断 | 高気圧業務 |
放射線業務 | |
特定化学物質業務 | |
石綿業務 | |
鉛業務 | |
四アルキル鉛業務 | |
有機溶剤業務 | |
じん肺健康診断 |
一般健康診断は一年に1回、特殊健康診断は6ヵ月に1回の実施が義務化されています。企業に義務づけられている健康診断については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
人間ドックとは:病気の早期発見と健康維持を目指す任意の精密検査
人間ドックは法的な義務はなく、個人の意思で受診する精密な健康検査です。検査項目が50項目以上あり、通常の健康診断よりも詳細に検査できることが特徴です。
人間ドックの検査項目の一例
- CT
- MRI
- 胃カメラ
- 大腸カメラ
- 腫瘍マーカー、など
人間ドックは、病気の早期発見や予防を目的としており、将来の健康リスク把握のために非常に有効です。費用は基本的に個人負担ですが、健康管理が徹底されるため、将来的な医療費削減や健康維持に大きく貢献します。
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「人間ドックは受けないほうが良い」「健康診断だけで十分」という意見もあります。しかし、これらの意見は正しいとはいえません。
人間ドックの最大のメリットは、詳細な検査が受けられることです。
健康診断では見つからない潜在的な病気・異常の早期発見が可能になります。
特に、がんや心疾患などの重篤な病気は、早期発見が治療成功の近道です。また、自分が気になる部分を細かく診てもらえるため、不安を解消できるでしょう。
人間ドックは、医師との面談で健康に関するアドバイスを受けられ、生活習慣の改善にも役立ちます。
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健康診断と人間ドックをどちらも受ける場合の注意点は以下の3つです。
健康診断と人間ドックを併せて受ける際には、費用負担の把握などが重要です。ここでは、健康診断と人間ドックをどちらも受ける場合の注意点を詳しく解説します。
最後まで見れば、健康診断と人間ドックを併用して受診する注意点がわかり、どちらもスムーズに検査できるようになるでしょう。
人間ドックの費用は自己負担
人間ドックは法律で定められた項目以外の検査を含むため、基本的に費用は自己負担です。
ただし、会社が人間ドックの受診費用を福利厚生として整備している場合は、会社負担で検査が受けられます。
また、自治体や健康保険組合が人間ドックに対して補助金を用意しているケースでは、一部の費用だけ自己負担となることもあります。
人間ドックの結果を提出すれば会社の健康診断は不要
人間ドックの結果を提出すれば、会社の健康診断は不要です。
Q6 個人的に人間ドッグ等を受けた労働者に対しても健康診断を実施する必要があ
引用元:厚生労働省
りますか。
A6 健診の必要はありません。
人間ドックで受診した項目については、健康診断を実施する必要がありません。
しかし、上記A5のとおり、人間ドックの結果の写し等を事業者に提出する必要が
あります。
人間ドックの検査を一般健康診断に代用する場合、企業は検査結果を管理・保存する必要があります。また、一般健康診断は一年に1回の実施義務があるため、人間ドックの実施日が一年以上空いていないことを確認しましょう。
健康診断と人間ドックの実施時間は事前に協議する
健康診断と人間ドックの実施時間については、事前に会社と協議しておくことが重要です。
一般的な健康診断は業務遂行に直接結びつくものではないため、所定労働時間内に実施する義務はありません。しかし、労働者の便宜を図るために、所定労働時間内に行うことが望ましいとされています。
また、特殊健康診断については、所定労働時間内に行う必要があります。
一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。
引用元:厚生労働省
人間ドックは、所定労働時間内に実施する義務はないため、労使間での協議が必要です。人間ドックを受診するケースを以下で確認してください。
- 一般健康診断の代わりとする
- 福利厚生として整備している
- 本人が希望して受診する
会社が人間ドックを一般健康診断の代用として推奨したり、福利厚生として整備したりする場合、所定労働時間内に含めるべきという考えがあります。
反対に、本人が希望して受診する場合は、休日や有休を利用するのが一般的です。
事前に協議して、どのようなケースが所定労働時間の対象とするのか、就労規則に明記しておくと、会社と従業員間のトラブルを防げます。
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従業員に人間ドックを実施することで、企業が得られるメリットは以下の3つです。
企業が従業員に人間ドックを実施すると、多くのメリットを享受できます。ここでは、従業員に人間ドックを実施することで企業が得られるメリットを詳しく解説します。
最後まで見れば、従業員の健康管理が企業の成功にどれほど重要かがわかり、人間ドックを健康投資として検討するきっかけになるでしょう。
健康維持と病気の早期発見
従業員に人間ドックを実施すると、企業は従業員の健康維持と病気の早期発見を促進できます。
人間ドックは健康診断に比べて検査項目が多く、詳細な健康状態の把握が可能です。そのため、潜在的な健康リスクの早期発見・適切な対策が提供できます。
特に、40代以上の従業員が多い企業は人間ドックを推進した方が良いでしょう。
人間ドックを健康リスクが高まる年代に提供することで、従業員の健康寿命が延び、生産性の向上や医療費の削減が期待できます。
満足度・モチベーション向上
企業は人間ドックの実施によって、従業員の満足度とモチベーションの向上を図れます。
人間ドックは健康診断に比べて詳細な検査が行われるため、従業員は自分の健康状態をより深く理解し、安心感を得られます。安心感は仕事への集中力や意欲を高め、業務パフォーマンスの向上に直結するものです。
また、従業員の健康管理に力を入れることで、企業への信頼感や忠誠心も高まります。結果として、従業員の離職率の低下や企業全体の士気向上につながるでしょう。
健康経営につながる
従業員に人間ドックを実施すると、企業は健康経営を推進できます。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組むことを指します。
健康経営に取り組んでいる企業の中には、人間ドックの費用を補助し、従業員の健康維持・人材の定着を図るところも多いです。また、健康経営優良法人の認定を目指す場合、要件項目として、人間ドックの費用補助の有無が確認されます。
上記を見るとわかるように、健康経営を実施するうえで、人間ドックは重要な取り組みだといえるでしょう。
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健康診断と人間ドックの違いに関するよくある質問は以下の4つです。
健康診断と人間ドックはどちらのほうが良いのかなど、疑問を抱える人は多いでしょう。ここでは、健康診断と人間ドックの違いに関するよくある質問を詳しく解説します。
最後まで見れば、健康診断と人間ドックの情報を把握でき、自身の健康管理に役立つ選択ができるでしょう。
健康診断と人間ドックはどちらのほうがいい?
健康診断と人間ドックは、どちらも受けたほうが良い検査です。人間ドックは50項目以上の検査項目があるため、健康診断だけでは見つからない病気を早期発見できます。
「健康診断で全体的な検査を行い、気になる部分の精密検査を人間ドックで行う」のように使い分けるのもおすすめです。
年代別におすすめの人間ドックを以下で確認してください。
年代 | 検査項目 |
---|---|
30~40代 | 大腸内視鏡検査 |
胸部CT | |
喀痰細胞診検査 | |
マンモグラフ(女性) | |
乳房超音波検査(女性) | |
子宮頸部細胞診(女性) | |
骨密度測定(女性) | |
50代以降 | 心臓ドック |
脳ドック | |
胃内視鏡検査 | |
動脈硬化の検査 | |
内臓脂肪CT検査 | |
PET検査 | |
前立腺がんのPSA検査(男性) |
上記の検査を受けておくと、自覚症状がない異常を早めに見つけられます。
健康診断と人間ドックは両方受けられる?
健康診断と人間ドックは両方受けられます。一般健康診断を受けつつ、人間ドックを自費や会社の福利厚生を利用して受診可能です。
人間ドックの検査内容が一般健康診断に相当すると認められる場合は、一般健康診断の受診を省けます。
一般健康診断を省く場合、人間ドックの検査結果を会社に提出する必要があります。
人間ドックは必要?
人間ドックは、以下に該当する人に必要な検査です。
- 自覚症状のない病気を早期発見したい
- 年齢的に健康リスクが高い(40代以降)
人間ドックは、一般健康診断に比べて検査項目が多いため、さまざまな角度から体の異常を検査します。
結果として、生活習慣病などわかりにくい病気を早めに見つけ、適切な対処を講じられます。人間ドックは、異常の早期発見・早期治療に重要な取り組みだといえるでしょう。
20代でも人間ドックは受けるべき?
20代の人も、人間ドックの受診はおすすめです。現代の日本の食事は欧米化が進んでいるため、20代でも生活習慣病にかかるリスクが高まっています。
20代のうちに、以下の人間ドック基本検査を受けておくと良いでしょう。
- 血液検査
- 尿検査
- 呼吸器検査
- 腹部超音波検査
- ピロリ菌感染
- 子宮頸がん検診(女性)
20代のうちから細かく検査することで、30代以降の健康を保てる確率が上がります。
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健康診断と人間ドックは、どちらも健康維持に重要な役割を果たします。それぞれの目的と特徴を以下でもう一度おさらいしましょう。
健康診断は基本的な健康状態のチェックに適しており、人間ドックはより詳細な検査を通じて病気の早期発見や予防に役立ちます。
また、企業が人間ドックを実施すると、従業員の病気の早期発見・モチベーション向上・健康経営につながるなど、複数のメリットが得られます。
そのため「人間ドックを受けないほうが良い」という意見は正しいとはいえません。
健康診断と人間ドックの違いを理解し、適切な検査を受け、病気の早期発見・予防に努めましょう。