企業が最低限は知っておくべき健康診断の種類と検査項目を徹底解説

健康診断 最低限

  • 健康診断は一種類じゃないの?
  • 最低限実施しなければならない検査内容は決まっている?

経営者や人事・労務担当者のなかに、上記の疑問を抱える人はいませんか?

結論、企業が最低限実施すべき健康診断は以下の3つです。

また、検査項目も法律で定められており、労働安全衛生法に基づいた健康診断を行わないと、企業は罰則を受けるリスクがあります。

本記事を読むと、健康診断について企業が最低限行うべきことが理解でき、法律違反となるリスクを防げるでしょう。

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企業が最低限覚えておく必要がある健康診断の3つの種類と検査項目

最低限覚えておく必要がある健康診断の3つの種類と検査項目

企業が最低限実施すべき健康診断は以下の3つです。

特に「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」については、理解を深める必要があります。また、特定の業務内容に就く従業員が対象になる「特定業務従事者の健康診断」も、あわせて確認してください。

雇入れ時の健康診断

企業が新たな労働者を雇用する際には、労働安全衛生法に基づき「雇入れ時の健康診断」が義務づけられています。これは、労働者が健康状態を確認するためのものであり、事業者が最低限行うべき健康診断です。

雇入れ時の健康診断では、労働者の健康状態を全面的に把握するため、さまざまな検査項目が含まれます。労働安全衛生法にて定められている検査は以下の11項目です。

雇入れ時の健康診断 (安衛則第43条)

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー
ル、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査

引用元:厚生労働省

定期健康診断

企業は労働安全衛生法に基づき、1年以内に1回の頻度で「定期健康診断」を最低限実施する義務があります。定期健康診断は、労働者の健康状態を定期的に把握し、早期に健康問題を発見することが目的です。

定期健康診断は労働安全衛生法にて11項目の検査が設定されています。法律で明記されている検査内容は以下の通りです。

定期健康診断 (安衛則第44条)

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査(※2) 及び喀痰検査(※2)
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー
ル、血清トリグリセライド)(※2)
9 血糖検査(※2)
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査(※2)

引用元:厚生労働省

上記の11項目のうち、3・4・6・7・8・9・11に関しては、医師が「必要ない」と判断すると省略できます。ただし、従業員の自覚症状・他覚症状・既往歴によって総合的に判断されることが望ましく、機械的に省略するものではありません。

特定業務従事者の健康診断

企業が特定業務に従事する労働者を使用している場合、6ヶ月以内に1回の頻度で定期健康診断を実施する必要があります。

特定業務従事者の健康診断は、労働者が特定の有害な業務に従事する際に、その業務に適した健康状態であるかを確認するためのものです。特定業務に該当する業務内容は以下の通りです。

※1: 労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
※1: 労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
チ ボイラ 製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに
準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務

引用元:厚生労働省

さらに、有害業務従事者に該当する場合、原則、雇い入れ時・配置替え時・6ヶ月以内に1回の頻度で特別な健康診断の実施が必須です。

特別な健康診断が必要な業務内容と検査内容は以下の通りです。

特殊健康診断・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機則第29条)
・鉛業務に常時従事する労働者 (鉛則第53条)
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条)
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限
る) (特化則第39条)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条)
・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条)
・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条)
・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍
労働者 (石綿則第40条)
じん肺健診・常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者 (じん肺法第3条、第7~10条)
注:じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要があります。
歯科医師
による健診
(歯科医師による健康診断)
・塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所に
おける業務に常時従事する労働者 (安衛則第48条)

引用元:厚生労働省

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健康診断に関する3つの重要なポイント-企業が最低限知るべきことは?-

健康診断 企業が最低限知るべきこと

健康診断について経営者や人事・労務担当者が最低限知っておくことは以下の3つです。

本記事で何度も解説している通り、健康診断の実施は企業の義務として定められています。企業の義務である以上、健康診断の費用は会社が負担すべきものです。

従業員が一般的な健康診断ではなく、人間ドックを希望したときの対応についても解説します。

企業は健康診断の実施が義務づけられている

企業には労働安全衛生法に基づき、労働者の健康確保のために定期健康診断の実施が義務づけられています。

これは、常時使用する労働者に対して一定の期間ごとに健康診断を行い、従業員の健康を確保することが目的です。従業員側も企業が実施する健康診断を受ける義務があります。

仮に、企業が健康診断を実施しなかった場合、労働基準監督署から指導が入ります。

指導を受けても従業員に対して受診を勧める対応をしなかったときは、企業は50万円以下の罰金刑に科されます

第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項

引用元:労働安全衛生法

従業員が健康診断を拒否した場合、個人的な罰則は受けません。

健康診断の費用は企業負担が原則である

健康診断の費用は原則として企業が負担する必要があります。労働者に費用を負担させることは法律で禁止されており、企業が全額を負担することが求められています。

 労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。

引用元:厚生労働省

人間ドックは健康診断の代用が可能

健康診断で必要な検査項目がすべて含まれ、その結果を証明する書面があれば、人間ドックを健康診断の代用として利用できます。

人間ドックは一般的な健康診断に比べると高額なため、代用する場合は企業が負担する範囲を、以下のように定めておきましょう。

  • 法定項目のみ企業負担(それ以外は従業員負担)
  • 福利厚生として人間ドックの費用を全額企業が補助、など

人間ドックに記載されている法定項目以外の検査内容は、配慮すべき個人情報です。人事・労務担当者や産業医が取り扱う際は注意が必要です。

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健康診断の最低限に関する3つのよくある質問

健康診断の最低限に関する3つのよくある質問

最低限の健康診断に関するよくある質問は以下の3つです。

経営者や人事・労務担当者は、健康診断に関する疑問を解消してから準備に取り掛かると、スムーズに対応できるでしょう。

健康診断は何年に一回受ければ良い?

企業が実施する健康診断は、年に一回の受診が義務化されています。定期的な健康診断を受けることで、健康状態の変化や疾患の早期発見につながります。

特定業務従事者の健康診断は6ヶ月以内に一回の受診が必須です。

健康診断は通常いくらかかる?

健康診断の費用は、医療機関や検査内容によって異なります。一般的な健康診断の場合、10,000円前後の費用が必要です。

ただし、特定の検査や追加の検査を希望する場合は、費用が増加することがあります。

従業員の健康診断の費用については「従業員の健康診断の相場はいくら?」の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

健康診断は勤務時間中に行わなければならない?

一般的な健康診断を勤務時間内に実施する義務はありません。ただし、従業員へ受診を促すために、勤務時間内に行うのが望ましいとされています。

一般の定期健康診断については、特に所定労働時間内に実施する義務はありません。もっとも、できるだけ労働者の便宜をはかり、所定労働時間内に行うほうが望ましいです。

なお、特殊健康診断については、所定労働時間内に行わなければならず、時間外などに実施すれば、その時間について割増賃金を支払う必要があります。

引用元:東京労働局

特殊健康診断に関しては、勤務時間内に実施することが義務づけられています。仮に、勤務時間外で実施した場合は、別途賃金を支払う必要があるので注意しましょう。

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まとめ:最低限の健康診断の種類や検査項目を知っておこう

最低限の健康診断まとめ

労働安全衛生法にて、企業が最低限実施しなければならない健康診断は以下の3つです。

「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」は11項目の検査が指定されています。一般の業務内容に従事している従業員は、1年以内に一回の頻度で定期健康診断の実施が必要です。

特定業務従事者に該当する従業員に対しては、6ヶ月以内に一回の頻度で定期健康診断を実施が義務化されています。さらに有害な業務に常時従事する従業員は「特殊健康診断」「じん肺検診」「歯科医師による検診」の実施が必要です。

企業は健康診断の義務を怠ると労働基準監督署の指導が入り、改善が見られない場合は50万円以下の罰金刑に科される可能性があります。

経営者や人事・労務担当者は、企業が最低限行うべき健康診断について理解して、義務を果たしましょう。