健康情報取扱規程とはどんなルール?9つの策定事項から罰則まで徹底解説

健康情報取扱規定

健康情報取扱規程とは、厚生労働省が発表した健康情報の取り扱いに関する規定です。2019年の4月から施行され、各事業者側が労働安全衛生法に基づき、従業員から得た健康情報を正しいやり方で取り扱う方法を決めたものになります。

本記事では、健康情報取扱規程とは何か?という初歩の部分から、策定する規定の内容や取り扱う担当者、原則といった内容を紹介します。

事業場によっては、産業保健業務に携わる人がおらず、人事に関わる担当者などが取り扱う場合も考えれます。そのため、人事担当の方はしっかりとチェックしておきましょう。

当記事では、主に以下のことがわかります。

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健康情報取扱規程とは?2019年4月から施行された事業者の義務

健康情報取扱規程とは、従業員から得た健康情報を適切な方法で取り扱うためのルールです。健康状態を理由に人事に悪影響を与えることを防ぐためにも、慎重な取扱いが求められます。

健康情報取扱規程を定めた一番の要因と言えるのが、不利益な扱いを避けることでしょう。健康情報取扱規程は、2019年4月から施行されています。

労働者に広く周知されるなど、適正な取扱いが確保され労働者の不安が無くなることが重要です。

安心して自分の健康に関する様々な情報を事業者に提供できる環境整備のために規定されました。健康情報等が適切にスムーズに取り扱われることにより、従業員の健康を維持するための取り組みが一層推進されることが期待されています。

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健康情報取扱規程の9つの策定事項-事業者が抑えるべきポイントとは?-

健康情報取扱規程の策定事項は以下の9つです。

上記9つの策定事項はしっかりと確認しておくべき項目です。抑えるべきポイントも解説していますので、チェックしておきましょう。

①健康情報の取扱目的・方法

健康情報取扱規程の主な目的は、従業員本人への「健康確保措置の実施」や、事業者が負う「安全配慮義務の履行」です。

従業員の不安を解消するためにも、取り扱う目的は分かりやすく示しておきましょう。

従業員が安心して働くためにも無視はできないものとなっています。具体的な内容の例は以下の通りです。併せて確認してみてください。

  • 健康診断やストレスチェックの結果
  • 長時間労働者等に対する医師による面接指導や事後措置の実施
  • 傷病・疾病のある労働者に対する業務措置の検討や実施

取り扱い方法としては以下の表のものになります。

方法の種類具体的内容
収集健康情報等を入手すること
(健康診断の結果だけではなく、面談などを行った際に入手して記録することも含む。)
保管入手した健康情報等を保管すること
(紙媒体での保管、電子媒体での保存の両者を指す。)
使用権限を有する者が、健康情報等を(閲覧を含めて)活用すること、第三者に提供すること
(紙媒体をデータ化する場合も「使用」に含まれる。)
加工収集した健康情報等の他者への提供に当たり、当該健康情報等の取扱いの目的の達
成に必要な範囲内で加工すること
消去収集、保管、使用、加工した情報を使用できないようにすること

引用元:厚生労働省

上記の方法で健康に関する情報を取り扱うことが想定されます。そのため、どの範囲まで情報を扱えるかを健康情報取扱規程に明記することが必要です。

②健康情報を取扱う者の権限と範囲

健康情報等取扱規程を作成する際は、情報を扱う者がどこまでの情報を扱えるかを明確にした上で、権限、情報の範囲を決めておくことが大切です。

健康情報を扱う担当者は、産業保健業務に携わる監督的地位にある者や、人事担当者などの人事権限を持つ人物です。

次に、情報を扱う者とどこまでの範囲を扱うかにおいて、権限を定めておくことが重要です。

基本的な考え方に沿って具体的な権限の範囲を整理しておきましょう。

③健康情報の通知方法・本人同意の取得

健康情報取扱規程を作成した事業者は、前もって従業員から得た健康情報をどのように扱うかを公表しておくか、情報を取得した際に、直ち目的を本人に通知・公表することが必要です。

また、従業員から健康に関する情報を手に入れた場合には、速やかに従業員本人の同意を得ることが必要です。

通知方法については、事業場での掲載のほかパンフレットの配布や掲示板への掲示等があり、本人に認識される適切な方法で行います。

④健康情報の適正管理の方法

健康情報取扱規程によって扱う健康情報等のうち、「個人データ」を扱う際は、個情法第2条第6項に基づいて管理しなければなりません。その際、以下の3点が重要です。

  • 情報の正確性の確保
    個人データは必要な範囲内で、情報を正確かつ最新の内容に保つ
  • 漏えい・滅失・改ざん等防止のための体制整備
    事業者は、情報の安全管理のため、組織的、物理的、技術的安全管理措置等を講じる必要がある
  • 情報の消去
    個人データについて利用する必要がなくなった場合には消去

⑤健康情報の開示・訂正方法

従業員からの健康情報の開示請求・訂正・追加・削除・消去などに応じる旨を健康情報取扱規程に記載します。

従業員から情報の開示請求があった際には、従業員が認めた方法で情報を開示しなければなりません。

また、データの訂正、追加、削除等の請求があった場合で適正であると判断されれば、適切な対応をとります。その際、情報を訂正した者、内容、日時等が分かるように訂正します。

⑥健康情報の第三者提供の方法

事業者は、労働安全衛生法の法令に基づく場合や、人の生命にかかわる事態で本人の同意を得ることが困難であるときを除いて、同意が必要になります。

健康情報取扱規程に基づいて第三者に提供する時には、以下の項目に従って文書・データを用いり、記録を作成・保存しなければなりません。

  • 労働者本人の同意を得ていること
  • 第三者の氏名又は名称、その他の当該第三者を特定できる事項
  • 個人データによって識別される労働者本人の氏名その他の当該本人を特定できる事項
  • 個人データの項目
引用元:厚生労働省

⑦事業承継・組織変更時の情報引継ぎ

健康情報取扱規程に沿って事業者は、事業譲渡などにより事業承継を行った場合、適正な管理の下、情報を引き継ぎます。これらの情報は、事業承継前の利用目的の範囲内で扱われる場合に限っては目的外の利用に該当しないため、本人の同意を得る必要はありません。

ただし、事業承継後に、承継前と利用目的の範囲が大きく超えて情報を扱う場合、前もって従業員本人の同意を得ることが必要です。

⑧苦情処理の方法

場合によっては、従業員からの苦情にも適切に対応する必要も出てくるでしょう。それらに対応するために、事業者側は対応窓口の設置や苦情を処理するためのマニュアルなどを用意しておく必要もあります。

窓口を設置する場合、正しく対応するために適宜産業保健業務従事者などと連携を図ることも重要です。

健康情報取扱規定を策定するのと同時に進めておくなどで、対応が後手に回らないようにしておきましょう。

⑨健康情報規程の周知方法

社内で定めた健康情報取扱規程や就業規則を元に作成し、その内容は従業員へ適切に知らせます。周知方法の具体例は以下の通りです。

  • 見やすい場所に規定を掲示する又は備え付けておく
  • 社内研修を通じて周知する
  • 冊子・パンフレットなどの紙媒体で配布する

健康情報等の取扱いに関する教育や、社内研修を通じて従業員に説明するという方法もあるでしょう。状況は事業場によって異なるため、従業員に合わせた方法を選択し、周知しなければいけません。

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健康情報取扱規程の策定方法は?2つのケース別に解説

健康情報取扱規程の策定方法について2つのケースに別けて解説していきます。健康情報取扱規程の策定方法は以下の2つです。

健康情報取扱規程の策定方法は、従業員の人数で対応の仕方が変わります。どのような違いがあるのかを見ていきましょう。

労働者が50人未満の事業場の場合

従業員が50人未満の事業場に関しては、衛生委員会等の設置義務はありません。

しかし、安全衛生の委員会、職場懇談会等で関係している従業員とコミュニケーションを取る機会を設け、従業員の希望などの意見を参考にした上で、作成することが求められます。

従業員の人数が少ない分、しっかりとコミュニケーションを取ってすり合わせをしていくことが重要です。

労働者が50人以上の事業場の場合

従業員が50人以上いる事業場においては、原案を作成した上で、安全衛生委員会や衛生委員会を事業場ごとに設置して審議が必要です。健康情報取扱規程の策定事項を踏まえたうえで、作成していきましょう。

健康情報取扱規程の作成例などのサンプルについては、厚生労働省から提示されているものがあるため、参考資料として使用するのもおすすめです。

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健康情報取扱規程を策定しなかった場合は?科される罰則について解説

健康情報等取扱規程の策定は、労働安全衛生法第104条で義務付けられていますが、明確な罰則というものは存在しません。ただし、事業者が策定した規程が不十分であると判断された際は異なります。

該当する指針について、労働安全衛生法第104条の4に基づき必要な指導を受ける可能性があるので注意が必要です。

また、不適切な情報管理を行うことによって、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

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健康情報規定の施行がもたらす未来とは?予想される影響を解説

健康情報取扱規程の施行により、今まで以上に個人情報の取り扱い方が見直されることが予想されます。健康情報は、センシティブな情報であるため、個人情報の保護が一層強化されると予測できます。

個人情報保護の強化により、データ漏洩や不正リスクを減少させることにもつながっていくでしょう。

また、事業者の意識改革にもなると推測できるので、個人のプライバシーがより守られることが期待されます。

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健康情報取扱規程に関する4つのよくある質問

健康情報取扱規程に関するよくある質問は以下の4つです。

疑問を解消することで、健康情報取扱規定に関する正しい知識が得られます。また、実際に策定する際に役立つでしょう。

健康情報管理規程とは?

健康情報管理規程は、正しくは健康情報取扱規定を指します。健康情報取扱規程とは、働く人の健康情報の取り扱いに関するルールのことです。

厚生労働省は2019年4月1日、働き方改革関連法の施行および労働安全衛生法の改正を行いました。

改正にあたり、企業によって情報の取扱いに差が出ないよう、ルールを定めたものが健康情報取扱規程です。企業は従業員の健康情報を適切に収集し、職場環境を整えることもに役立つものになります。

労働安全衛生管理規程は義務?

結論として、労働安全衛生管理規定は義務ではありません。しかし、労働災害防止を労使一体となってルールを定めることは必要となります。

労働基準法および労働安全衛生法では「安全衛生に関する規定」を作成する場合、一定の手続を経ることを義務づけています。

労働安全衛生規則に違反した場合には罰則が適用されることがありますので、注意が必要です。

健康情報の開示とは?

健康情報の「開示」とは、収集・保管された健康情報を、請求に応じて従業員本人に示すことを言います。

開示請求を受けた際には、保有している個人データの書面の交付や、請求を行った者が同意した方法で開示します。

また、開示等の請求に関しては、開示請求の受付先、提出すべき書面の様式等の請求に応じる手続きを定め、従業員に周知することが求められます。

従業員の健康管理にはどのような方法がある?

健康管理方法の具体例としては、働時間の管理や健康診断、ストレスチェックの実施などがあります。過剰な労働時間は従業員の健康を損なうだけでなく、生産性の低下を招きかねません。

企業は従業員の労働時間を適切に管理することが必要です。

健康診断は、年に1回の健康診断が原則になっています。

また、ストレスチェックについても従業員の精神面における健康度を測る際に役立ちます。

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まとめ:健康情報取扱規程の策定は企業義務!従業員が働きやすい環境を作ろう

健康情報等取扱規程の策定は、企業の義務です。従業員の健康保持や個人情報の保護などに大きな役割を果たします。より良い職場環境を構築するためにも、従業員が安心して健康情報を提供できる体制づくりが大切です。

また、形式だけにとらわれず、企業と従業員がコミュニケーションを取りつつ、スムーズな運用ができるように努力していくことも必要です。信頼関係が出来上がれば、企業と従業員どちらにも居心地の良い職場環境が構築できるでしょう。