- ストレスチェックを拒否する従業員が多い
- 放置したら罰則を受けるの?
ストレスチェックに関して、上記の悩みを持つ経営者や人事・労務担当者は多いでしょう。ストレスチェックを拒否する従業員を放置すると、企業は『安全配慮義務違反』に問われる可能性があります。そのため、企業はストレスチェックの受検率を上げることが重要です。
ストレスチェックを拒否する従業員に企業がすべきことは以下の4つです。
本記事では、以下のことについても解説します。
最後まで読むと、ストレスチェックを拒否する従業員の放置は、企業にとってマイナス面が多くなることがわかるでしょう。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
法律では、労働者50人以上を雇用する企業に対して、定期的なストレスチェックの実施が義務づけられています。
また、企業は所轄の労働基準監督署に対して報告書を提出しなければなりません。報告を怠ったり虚偽の報告をしたりした際は、50万円以下の罰金が科されます。
第百条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
労働安全衛生法
一方で、従業員がストレスチェックを拒否した場合、企業はどのような罰則を受けるのでしょうか。現時点では、特定の罰則規定はありませんが、引き続き労働者のメンタルヘルスや職場環境の改善に向けた取り組みが求められています。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
実際、どのくらいの企業がストレスチェックを実施しているのか、厚生労働省が発表している調査結果を見てみましょう。以下は、ストレスチェックの実施状況の資料です。
引用元:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
全事業場の実施状況は左上のグラフで確認できます。2015年に法律で義務化された際の実施率は41.7%に留まっていました。その割合は年々増加し、2020年度(2020年4月〜2021年3月)には84.3%と、8割を超えていることがわかります。
では、ストレスチェックを実際に受けた労働者の割合(受検率)を見てみましょう。
引用元:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
ストレスチェックを受けた労働者の割合は上記の通りです。受検率8割を超えた事業場は77.5%という結果になりました。ストレスチェックは従業員に対して強制できないため、実施率と受検率には少し開きがあります。
ストレスチェックの受検率を上げるためには、従業員が拒否する理由を知って、対応策を講じることが大切です。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェックを拒否する従業員に企業がすべきことは以下の4つです。
ストレスチェックを単に強く勧めてしまうと、拒否感を高めてしまいます。大切なことは従業員の心に寄り添った取り組みです。
受検拒否の理由を聞く
従業員がストレスチェックを拒否する理由を正確に把握してください。拒否の背後には心理的な要因や不安が潜んでいます。
中には、同僚に話せていない健康面の問題を抱えているケースがあるため、プライバシーに配慮して個別に面談を設け、拒否する理由を丁寧にヒアリングしましょう。
従業員とのコミュニケーションを通じてその理由を理解し、対応策を提案することで、ストレスチェックに前向きになってもらえます。
ストレスチェックの利点や重要性を伝える
従業員にストレスチェックの利点や重要性を説明し、その必要性を理解してもらうことも大切です。ストレスチェックはメンタルヘルスの管理や職場環境改善に役立ちます。
また、従業員が自身のストレス状態を知るとセルフケアへ意識が向きます。セルフケアへの取り組みは、仕事とプライベートの両方を充実させるためにも重要です。そのため、従業員が自身の健康管理に積極的に参加する意義を伝えましょう。
結果の安全性を保証する
受検結果の安全性と機密性を保証することは信頼関係を築く上で不可欠です。従業員を受検させるためには、情報が適切に扱われることを従業員自身が確信する必要があります。
ストレスチェックは個人情報を取り扱う実施者や実施事務従事者のみ閲覧できること、またその結果は電子メールや封書で通知されるため、第三者に情報が漏洩しないことを伝えてください。このように、結果の取り扱いや保管について明確に説明し、安心感を提供しましょう。
職務評価に悪影響はないことを説明する
ストレスチェックの結果が、職務評価や昇進に悪影響を与えないことを従業員に説明しましょう。拒否する従業員の多くが個人情報の漏洩や職務評価への悪影響を懸念しています。
ストレスチェックを実施・集計できるのは、人事権のない職員だけです。
ストレスチェック結果が労働者の意に反して人事上の不利益な取扱いに 利用されることがないようにするため、当該労働者について解雇、昇進又は 異動(以下「人事」という。)に関して直接の権限を持つ監督的地位にある 者は、ストレスチェックの実施の事務(ストレスチェックの実施を含む)に 従事してはいけません。
厚生労働省
上記のように定められているため、ストレスチェックの結果が職務に影響を及ぼさないことを明確に伝えるとよいでしょう。
また、ストレスチェックの結果によって不利益を被らないことを文書や規定に明記すると、より受検への抵抗感を軽減できます。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
高ストレス者が医師による面接指導を拒否する場合、企業は慎重な対応が求められます。まず、従業員が面接指導を拒否する理由を理解し、その不安や懸念を解消するためのアプローチを考えることが重要です。
1つの対処法は、従業員に対して面接指導の必要性やメリットを丁寧に説明し、安心感を与えることです。高ストレス者が面接指導を受けることで、自身のストレス状態を客観的に把握し、適切なケアや対策を講じられることを伝えます。
従業員が面接指導を拒否した場合でも、ほかのサポートオプションを提供することが有効です。
例えば、カウンセリングサービスやストレスマネジメントのトレーニングなど、様々な選択肢を提示し、従業員が自分に合った支援を受けられるようにします。
さらに、従業員との信頼関係を築くことも大切です。従業員が適切なサポートを受けるためには、企業側とのコミュニケーションが円滑であることが必要です。従業員が安心して相談できる環境を整え、信頼関係を築くことで、面接指導を拒否する従業員も積極的に支援を受けられるでしょう。
最後に、従業員のプライバシーを尊重することも大切です。面接指導を拒否した従業員の情報は慎重に取り扱い、第三者に漏洩しないように注意する必要があります。従業員がプライバシーが保護されていると感じれば、面接指導を受けることへの抵抗感も軽減されるでしょう。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェックを拒否する従業員を放置した場合のデメリットは以下の2つです。
ストレスチェックは強制ではないため、少なからず拒否する従業員は出てきます。経営者や人事・労務担当者は、放置した場合に想定されることもあらかじめ把握しておきましょう。
ストレスや心の病気の発見が遅れる
従業員がストレスチェックを拒否した場合、そのストレスや心の病気が未発見のまま放置されるリスクがあります。
ストレスチェックは、労働者が自己では気づきにくい心の変化や疲れを発見するための重要な機会です。早期発見・対処が遅れれば、重症化してしまう可能性も考えられます。
その結果、従業員の休職や退職につながり、労働力の損失・生産性の低下を招いてしまいます。
安全配慮義務違反とみなされるリスクがある
企業には従業員の安全や健康を守るための安全配慮義務が課せられているため、
従業員がストレスチェックを拒否したあと受検を勧めずに放置すると、安全配慮義務違反となるリスクが高まります。
また、ストレスチェックを拒否した従業員に健康被害が発生して休職について訴訟が起きた場合、ストレスチェック受検有無によって、企業が裁判で安全配慮義務違反に問われることもあります。
労働者のメンタルヘルス不調に対処しなかったことで、企業は法的な責任を問われる可能性があります。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェック拒否に関するよくある質問は以下の3つです。
経営者や人事・労務担当者は、実施する側が疑問に持つ事柄を、確認しておいてください。
ストレスチェック制度は強制?
ストレスチェックは、労働安全衛生法に基づき、企業に対して年1回の実施が義務づけられていますが、従業員に対して受検を強制するものではありません。受検の自由意思は尊重されます。
積極的な参加が推奨されるのは従業員のメンタルヘルスのためです。
ストレスチェックの医師による面談は強制?
ストレスチェックの結果が高ストレスと判定された場合、医師による面談が勧められますが、これも従業員の自己意思によるものです。面談は機会の提供であり、強制力はありません。
ただし、メンタルヘルス不調の早期発見や対処のため、積極的な参加が望ましいです。
ストレスチェックの報告を怠った場合の罰則は?
企業がストレスチェックの報告を怠った場合、50万円以下の罰金が科せられます。これは、常時50人以上の労働者を使用する企業に対するもので、労働者の人数が50人未満の場合は、報告義務と罰則はありません。
資料ダウンロードはこちら
【ストレスチェック実施サポートマニュアル】
ストレスチェックは強制ではないため、従業員は受検を拒否できます。
しかし、拒否した従業員に対して何もアプローチせず放置すると、企業は安全配慮義務違反とみなされるリスクがあります。そのため、従業員にストレスチェックの受検を拒否された場合は、以下の対応をとってください。
従業員のストレスや心の病気の発見が遅れて手遅れになったり、企業が安全配慮義務違反とみなされたりしないためにも、従業員の心に寄り添った対応で受検率を上げましょう。