ストレスチェックの高ストレス者割合とは?放置のリスクと企業がすべき対応

ストレスチェック 高ストレス者 割合

ストレスチェックで高ストレス者と判定される人の割合は14.9%です。また、30代から50代の従業員は全体の割合を上回るケースがあります。

企業が高ストレス者を放置すると、生産性の低下や離職・退職者の増加を招き、安全配慮義務違反の責任を問われる可能性があります。

本記事では、高ストレス者の放置リスクを低減するため、ストレスチェックで企業が取るべき対応を解説します。

最後まで読めば、企業が高ストレス者に対して取るべき対応が分かり、放置するリスクについて理解できるでしょう。

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ストレスチェックにおける高ストレス者割合について

ストレスチェック 高ストレス者 割合

ストレスチェックにおける高ストレス者の割合は全体平均で14.9%です。男女別で見ると、男性の方が高ストレス者割合が高い傾向にあります。

男女別高ストレス者割合

引用元:メンタルヘルス専門委員会

また、30代から50代にかけての割合は、全体平均14.9%を上回る結果となりました。

年代別高ストレス者割合

引用元:メンタルヘルス専門委員会

ストレスチェックの結果が示す高ストレス者の割合は、業種や職種によっても異なります。製造業・運輸業・宿泊業などの業種では、他の業種に比べて高ストレス者の割合が高い傾向にあります。

職業別高ストレス者割合

引用元:メンタルヘルス専門委員会

製造業・運輸業・宿泊業などは、業務の性質や労働環境がストレスの要因となっていることが多く、特に注意が必要です。

技能職や営業職などの職種も高ストレス者の割合が高く、職場環境や業務内容の見直しが必要となる場合があります。

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高ストレス者はどうやって決まる?2つの判定基準を解説

高ストレス者 2つの判定基準

高ストレス者が決まる判定基準は以下の2つです。

高ストレス者を選定するのは、ストレスチェックを実施する産業医です。ここでは、厚生労働省が発表している基準についても解説します。

産業医が衛生委員会で判断する

高ストレス者の判定基準は、産業医が衛生委員会で意見を述べて決まります。衛生委員会は、ストレスチェックの実施方法や評価基準について議論する場です。

産業医は専門的な知見をもとに、以下のような高ストレス者の選定基準を提案します。

  • 特定のスコア以上を高ストレスとする
  • 特定の質問項目に高いスコアをつけた場合を対象とする

産業医が組織の中に入ることで、客観的かつ公正な基準が確立され、労働者全員に対して一貫した評価が行われます。

厚生労働省の数値基準を利用する

厚生労働省は高ストレス者の判定において、具体的な数値基準を設定しています。信頼性の高い手法として多くの企業で採用されている方法です。

厚生労働省が用意している職業性ストレス簡易調査票は「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」の分野でストレスを調査します。

上記の分野を基に、以下の2つの基準で高ストレス者を判定します。

  1. 「心身のストレス反応」の評価点数が高い者
  2. 「心身のストレス反応」の評価点数が一定以上で、かつ「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」の評価点数が一際高い者

具体的な数値基準としては、例えば「心身のストレス反応」の合計点数が77点以上であれば高ストレス者と判定されます。

また「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」の合計点数が76点以上であり、かつ「心身のストレス反応」の合計点数が63点以上の場合も高ストレス者と見なすことが可能です。

ほかにも、素点換算表により尺度ごとの5段階評価に換算し、合計点で判断する方法があります。詳しい計算方法は「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」で確認しましょう。

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ストレスチェック実施後に企業がすべき高ストレス者への4つの対応

企業がすべき高ストレス者への4つの対応

ストレスチェックを実施したあとに、企業がすべき高ストレス者への対応は以下の4つです。

ストレスチェックは単純なアンケート調査ではありません。その後の企業の対応も重要視されています。

従業員が申し出た場合は面接指導を実施する

ストレスチェック後、高ストレス者として判定された従業員が面接指導を申し出た場合、企業は速やかに対応する必要があります。

なぜなら、従業員が面接指導を希望した際には「事業者はその申し出を受けてから1ヶ月以内に医師による面接指導を実施する」と定められているからです。

○ ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされ た労働者から申出※1があった場合は、医師に依頼して面接指導を 実施※2しましょう。 

※1 申出は、結果が通知されてから1月以内に行う必要があります。 

※2 面接指導は申出があってから1月以内に行う必要があります。  

引用元:厚生労働省

実施者が高ストレス者に対して、面接指導を受けるよう促すことも重要です。また、面接指導を受けやすい環境を整備することも企業の責務といえます。

従業員が安心して面接指導を受けられるようなプライバシー保護や心理的な支援を行いましょう。

医師の意見を参考に職場環境を改善する

医師は従業員の健康状態を客観的に評価して適切な対策を提案します。企業は医師の意見を参考にして、職場環境を改善します。

労働時間の調整・業務負荷の軽減・ストレスとなる要因の改善など、具体的な施策を打ち出しましょう。

職場環境の改善には、従業員の声を聞くことも欠かせません。従業員がストレスを感じる要因や改善すべき点を把握して反映させることで、より効果的な職場改善が可能です。

面談結果を労働基準監督署へ報告する

高ストレス者と判定された従業員が面談を受けたあと、企業は結果を労働基準監督署に報告する必要があります。労働基準監督署への報告は、労働安全衛生法に基づく義務です。

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期 に、ストレスチェック及び面接指導の結果の報告書を労働基準監督署長に提 出しなければならないこと

引用元:厚生労働省

適切なフォーマットで面談結果を労働基準監督署に提出することが重要です。

企業が報告を怠ることなく労働環境の改善や従業員のメンタルヘルスの向上に寄与すると、より健全な職場環境の構築に貢献できます。

面談を拒否された場合のサポートも忘れずに行う

面談を拒否する高ストレス者に対しても、企業は適切なサポートの提供が必要です。プライバシーの保護や、精神的な負担など、従業員が面談を拒否する理由はさまざまです。

従業員の気持ちに寄り添い、以下の対応を心がけましょう。

  • 個人情報の厳重管理・面談の機密性確保を伝える
  • 不利益が出ないことを伝える
  • 面談の費用負担がないことを伝える
  • 面談の手続きを簡素化する

上記の対応をとっても従業員が自ら面談を受ける意向を示さない場合、本人の状況を理解し、必要なサポートを提供することが重要です。個別のカウンセリングやメンタルヘルスプログラムへの参加の提案、ストレス軽減のための助言など、適切な支援を続けましょう。

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ストレスチェックにおける高ストレス者を放置する3つのリスク

ストレスチェック 高ストレス者を放置する3つのリスク

ストレスチェックの実施後、高ストレス者を放置するリスクは以下の3つです。

高ストレス者に対して何も対策をとらずにいると、企業にとって大きなリスクにつながります。ここでは、高ストレス者を放置するリスクについて詳しく解説します。

職場全体の生産性が低下する

高ストレス者を放置すると、仕事の生産性が低下するリスクがあります。なぜなら、従業員のメンタルヘルス状態が悪化すると、集中力・判断力が低下し、業務遂行能力が落ちるからです。

また、従業員一人が抱えるストレス・不安は、職場全体に影響を与え、業務効率やチームワークに悪影響を及ぼします。

結果、高ストレス者を放置すると、業務の遅延・品質低下・従業員間の対立や摩擦が生じ、生産性が低下する可能性が高まります。

退職・休職者が増加する

高ストレス者の放置は、退職や休職への志願者が増加するリスクが上がります。ストレスや心理的な負担が長期間続くと、仕事へのモチベーションが低下し、従業員が離職を検討する機会が多くなります。

うつ病を発症すると労災認定につながる恐れもあるのです。

高ストレス者をそのままにしておくと、企業にとって貴重な人材を失うことにつながり、新たな採用や訓練にかかる費用が増加する可能性があります。

安全配慮義務違反になる可能性がある

高ストレス者への対策を怠った企業は、安全配慮義務違反の責任を問われる可能性があります。日本の労働基準法には「労働者の安全と健康を保護するために企業が安全配慮義務を負う」という規定があります。

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 

引用元:労働契約法

安全配慮義務違反は、企業にとって深刻な法的および財政的なリスクをもたらします。従業員がストレスによる健康被害を訴えたり、労災申請を行ったりすることで、企業は労災補償の支払いや損害賠償の責任を負う可能性があるのです。

さらに、労働基準監督署からの指導や是正勧告を受けるリスクもあります。

安全配慮義務違反を防ぐためには、ストレスチェックの実施や高ストレス者への適切な支援を行うことが不可欠です。

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ストレスチェックの高ストレス者割合に関する4つのよくある質問

ストレスチェックの高ストレス者割合 よくある質問

ストレスチェックの高ストレス者割合に関するよくある質問は以下の4つです。

ここでは、ストレスチェックの高ストレス者の割合に関する質問を取り上げ、詳しく解説します。経営者や人事・労務担当者、従業員は最後まで読んで、高ストレス者の割合について理解を深めましょう。

ストレスチェックで高ストレス者と判定された人は何人いる?

ストレスチェックを受けた1,395,057人のうち、高ストレスと判定された人は208,074人です。

受検者1,395,057 人のうち208,074 人(14.9%)が高ストレス者と判定された。

引用元:メンタルヘルス専門委員会

上記は令和4年1月〜12月の間に全衛連会員が実施したストレスチェックの調査結果です。

高ストレス者の全国平均は?

高ストレス者の割合は全国平均で14.9%です。

受検者のうち高ストレスと判定された人は208,074 人(14.9%)

引用元:メンタルヘルス専門委員会

ただし、業種や職種、地域によって異なる傾向があります。ストレスの原因や影響も多岐にわたるため、単一の平均値で全体を表すことは難しいです。

企業や組織では、自社の従業員を対象にしたストレスチェックの結果を参考にして、適切な対策を講じることが重要です。

ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合はどうなる?

ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合、医師による面接指導を推奨されます。

面談指導に関しては、以下のポイントを押さえましょう。

  • 面談指導は従業員自らが申し出るもの
  • 申出期限は高ストレス者の通知を受けてから1ヶ月以内
  • 企業は申し出があったときから、1ヶ月以内に面談指導を実施

企業は面談指導の結果を踏まえたうえで、従業員のストレス要因の解消など、組織全体での取り組みが必要です。

ストレスチェックの結果は会社にバレる?

ストレスチェックの結果は、個人情報保護の観点から会社にはバレません。ストレスチェックは従業員のメンタルヘルスを把握し、適切なサポートを提供するためのものであり、結果は匿名で管理されることが一般的です。

○ 事業者がストレスチェック制度に関する労働者の秘密を不正に 入手するようなことがあってはなりません。

 ○ ストレスチェックや面接指導で個人の情報を取り扱った者(実 施者とその補助をする実施事務従事者)には、法律で守秘義務が 課され、違反した場合は刑罰の対象となります。

 ○ 事業者に提供されたストレスチェック結果や面接指導結果など の個人情報は、適切に管理し、社内で共有する場合にも、必要最 小限の範囲にとどめましょう。 

引用元:厚生労働省

ただし、従業員が深刻なストレス状態にある場合や、労働災害の予防のために必要な場合など、法的な規定に基づいて会社に報告されることがあります。

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まとめ:ストレスチェックの高ストレス者の割合は年代や業種によって異なる

ストレスチェック 高ストレス者 割合 まとめ

ストレスチェックの高ストレス者の割合は全体平均で14.9%ですが、年代や業種によっても異なります。

高ストレス者が決まる2つの判定基準を改めて確認してください。

高ストレス者と判定された場合、従業員は通知を受け取ってから1ヶ月に面接指導を申し出、企業は従業員の申し出から1ヶ月以内に面接指導を実施する必要があります。

また、企業は面談指導後に医師の意見を基にして、職場環境を改善することが不可欠です。さらに、面談結果を労働基準監督署に報告することが義務づけられています。

高ストレス者を放置すると安全配慮義務違反になる可能性もあるため、適切な支援を行いましょう。