ストレスチェックの導入方法を徹底解説!従業員の健康管理をサポートするには?

ストレスチェック 導入

ストレスチェック制度は以下の3ステップによって導入できます。

ストレスチェックは常時使用する労働者が50人以上いる企業に義務づけられている制度です。そのため、企業は厚生労働省が定めた方法でストレスチェックを導入する必要があります。

ストレスチェック制度について正しく理解することで、企業は従業員のストレスを適切に管理できるでしょう。

当記事では、以下のことがわかります。

最後まで見れば、ストレスチェックの導入方法がわかり、職場のメンタルヘルス対策がスムーズに進むでしょう。

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ストレスチェックが必要なのはなぜ?導入目的を解説

ストレスチェック 導入目的

ストレスチェックの目的は、企業が従業員の心理的な負担を把握し、精神的な健康を保つための対策を講じることです。企業はストレスチェックの結果を分析し、職場環境の改善に努め、従業員がメンタルヘルス不調に陥るのを未然に防ぐ必要があります。

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき、2015年12月から企業に義務づけられました。同制度が誕生した背景には、メンタルヘルス不調によって労災認定を受ける労働者が増加したことにあります。

仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成 18 年度以降も増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となっている。

こうした背景を踏まえ、平成 26 年6月 25 日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成 26 年法律第 82 号)においては、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けること等を内容としたストレスチェック制度が新たに創設された。

引用元:厚生労働省

企業としては、従業員の健康を守るためにストレスチェック制度の導入が重要です。経営者・人事担当者は、ストレスチェック制度が義務づけられている企業の条件と受検対象者を以下で確認してください。

  • 対象企業:常時50人以上の労働者を使用する事業場
  • 対象者:常時使用する労働者

常時使用する労働者が50人未満の企業の場合、ストレスチェックの実施は努力義務に該当します。

常時使用する労働者とは、期間の定めのない労働契約を結んだ正社員や、正社員の労働時間の3/4以上働く従業員です。ストレスチェックを受検する人は、基本的に健康診断の受診対象者と同じです。

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ストレスチェックの導入の流れは?3つの手順で解説

ストレスチェック 導入手順

ストレスチェックの導入の手順は以下の3つです。

ストレスチェックの導入は、準備から実施、結果活用までの3つの手順で進めます。ここでは、ストレスチェックの導入の流れを順番に詳しく解説します。

最後まで見れば、ストレスチェックの詳細な導入手順がわかり、スムーズに実行できるようになるでしょう。

①導入前の準備

ストレスチェックの導入前の準備は以下の4つです。

ここでは、ストレスチェックの導入前の準備について詳しく解説します。

導入方針の表明・衛生委員会による審議

ストレスチェックを導入するには、会社として「メンタルヘルスの改善」を目的とする方針を表明します。表明方法として、社内掲示板や社内情報共通ツールを利用しましょう。

その後、衛生委員会で実施体制や実施方法を審議し、具体的な規程を策定します。衛生委員会で話し合う内容は以下の通りです。

  • ストレスチェックの実行者
  • ストレスチェックの実行時期
  • 使用する質問票の種類
  • 高ストレス者の基準
  • 面接指導を申し出る相手
  • 面接指導を依頼する医師
  • 集団分析の方法
  • ストレスチェックの保存方法・管理者

ストレスチェックの集団分析は法律で義務づけられていません。しかし、職場環境を改善するためには集団分析まで実行するのが望ましいです。

企業は、導入方針の表明・衛生委員会による審議で、全社員に対してストレスチェックの目的や実施方法を周知し、適切な対応を整えましょう。


ストレスチェック実施者の選定

ストレスチェックの導入にあたり、次は実施者を選定します。ストレスチェックの実施者とは、実際にストレスチェックを実行する人のことを指します。

実施者として指定できる人は、以下の通りです。

  • 医師
  • 保健師

【研修終了後に実施者になれる人】

  • 看護師
  • 精神保健福祉士

看護師と精神保健福祉士は、厚生労働大臣が定める研修を終えた場合、実施者になれます。企業の状況を日ごろから把握している産業医を実施者として指定すると、ストレスチェックをスムーズに実行できるでしょう。

また、ストレスチェックの実施者と併せて実施事務従事者を選定します。実施事務従事者は、調査票のデータ入力や実施者の指示に従って動くサポート係です。

ストレスチェックの実施事務従事者に指定できるのは、人事権のない社員です。

ストレスチェック結果が労働者の意に反して人事上の不利益な取扱いに 利用されることがないようにするため、当該労働者について解雇、昇進又は 異動(以下「人事」という。)に関して直接の権限を持つ監督的地位にある 者は、ストレスチェックの実施の事務(ストレスチェックの実施を含む)に 従事してはいけません。

引用元:厚生労働省

ストレスチェックの結果は昇進や解雇に使用するなど、不利益な取り扱いができない個人情報です。そのため、企業の人事権を持つ人は、従業員のストレスチェックの結果を閲覧できません。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者は、お互いに連携して、実施方法やデータの取り扱いについて詳細に確認します。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。


従業員への通知・案内

ストレスチェックの導入準備が整ったら、次に重要なのが従業員への通知と案内です。従業員に対して、ストレスチェックの目的・実施方法・結果の活用内容を明確に伝えましょう。

企業は、ストレスチェックが法令に基づき実施されること・個人のデータが人事評価に影響しないことなどを説明し、従業員の不安を解消してください。

通知方法としては挙げられるのは、社内掲示板・メール・説明会です。受検率を向上させるなら、説明会の実施が推奨されます。

従業員への説明会では、ストレスチェックの意義や実施の流れ、個人情報保護の措置について詳しく説明し、従業員が安心して受検できる環境を整えましょう。


ストレスチェック調査票の作成・配布

ストレスチェックの導入準備の最後は、調査票の作成と配布です。調査票には以下の内容を含める必要があります。

  • ストレスの原因
  • 心身の自覚症状
  • 周囲のサポート

ストレスチェックは、厚生労働省が提供する「職業性ストレス簡易調査票」の使用が推奨されており、紙またはオンライン形式での実施が認められています。調査票の配布方法については、従業員がアクセスしやすい形式で配布し、適切なサポートと周知を図りましょう。

厚生労働省が配布している簡易調査票は以下から確認してください。

ストレスチェック調査票の作成・配布に時間を割けない場合は、外部のストレスチェックサービスを利用するのもおすすめです。

健康管理システムのけんさぽでは、ストレスチェックの実施を承っています。従業員がオンライン上で簡単に回答できるほか、集団分析も行います。

ストレスチェック制度の導入を検討している経営者・人事担当者は、ぜひけんさぽへご相談ください。

②ストレスチェックの実施

ストレスチェックの実施では、事前に配布した調査票を回収しましょう。

調査票を回収できるのは、実施者または実施事務従事者のみです。実施者や実施事務従事者が回答内容を取り扱い、個人情報保護に努めます。

回収作業では、以下の内容に注意してください。

  • 従業員がほかの受検者の調査票を閲覧できないようにする
  • 人事権のある社員が閲覧できないようにする

ストレスチェックをオンラインで実施した場合は、データのセキュリティ対策も重要です。

③ストレスチェック実施後の対応

ストレスチェック実施後の対応は以下の5つです。

ここでは、ストレスチェック実施後の対応について詳しく解説します。

ストレスチェック結果の評価・高ストレス者の選定

ストレスチェックの実施後は、評価基準に従い、心理的負担が高いと判定された従業員を高ストレス者として選定します。厚生労働省は高ストレス者の選定基準を以下のように定めています。

2 高ストレス者の選定は、マニュアルに示されている「評価基準の例(その1)」に準拠し、以下のいずれかを満たす者を高ストレス者とする。
① 「心身のストレス反応」(29 項目)の合計点数が 77 点以上である者
② 「仕事のストレス要因」(17 項目)及び「周囲のサポート」(9項目)を合算した合計点数が 76 点以上であって、かつ「心身のストレス反応」(29 項目)の合計点数が 63 点以上の者

引用元:厚生労働省

高ストレス者の選定については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。


従業員への結果通知・保存

ストレスチェックの評価と高ストレス者の選定が終わったら、従業員へストレスチェックの結果を通知しましょう。結果通知は、実施者が直接従業員に通知します。

企業は従業員の同意なしに結果を閲覧できません。結果通知はプライバシーを尊重し、個人に対して直接行う必要があります。

ストレスチェックの結果は5年間の保管が義務づけられています。紙媒体やデジタルデータのどちらでも保存可能です。

○ 事業者は、労働者の同意を得て、検査の結果を把握した場合には、当該結果の記録を作成し、5年間保存しなければならないこととすること。それ以外の場合には、事業者は、検査を行った実施者による検査結果の記録の作成及び検査の実施の事務に従事した者による当該記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならないこととすること。 (省令案概要)

引用元:厚生労働省

紙媒体やデジタルデータどちらの保存方法でも、情報漏洩防止のために適切なセキュリティ対策の実行が求められます。高ストレス者のデータや面接指導の対象者の判定結果も含めて、正確に記録し保存することが重要です。


産業医による面接指導

ストレスチェック実施後、高ストレス者に選定された従業員が産業医による面接指導を希望する場合、企業は速やかに対応する必要があります。

面接指導に関しては、以下のポイントを押さえましょう。

  • 面談指導は従業員自らが申し出るもの
  • 申出期限は高ストレス者の通知を受けてから1ヵ月以内
  • 企業は申し出があったときから、1ヵ月以内に面談指導を実施

○ ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされ た労働者から申出※1があった場合は、医師に依頼して面接指導を 実施※2しましょう。 

※1 申出は、結果が通知されてから1月以内に行う必要があります。 

※2 面接指導は申出があってから1月以内に行う必要があります。 

引用元:厚生労働省

面接指導は基本的に勤務時間内に行い、プライバシーが保たれる場所での実施が重要です。また、面接指導にかかる費用は事業者が負担します。

高ストレス者の面接指導については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。


労働基準監督署への検査結果報告

ストレスチェック実施後は、労働基準監督署へ検査結果を報告します。常時使用する労働者が50人以上いる事業場は、ストレスチェックの実施有無や結果を報告する義務があるので注意しましょう。

○ 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、ストレスチェック及び面接指導の結果の報告書を労働基準監督署長に提出しなければならないこと(省令案概要)

引用元:厚生労働省

ストレスチェック結果の報告は、実施後1年以内に行うのが望ましく、遅延や虚偽報告は罰則の対象となる可能性があります。

ストレスチェックの結果は、本社がまとめて報告できません。複数の事業場がある場合、それぞれの事業場から独立して報告する必要があります。

事業場ごとに別々に報告書を作成し、管轄の労働基準監督署に提出しましょう。

② 労働基準監督署への報告について、本社でまとめて報告するという方法も可能でしょうか。
A 当報告については、事業場ごとに、管轄の労働基準監督署まで提出していただく必要がありますので、本社でまとめて報告することはできません。

引用元:厚生労働省

ストレスチェックを導入する場合、法令遵守を徹底し、労働環境の改善に努めてください。


ストレスチェック結果の活用

ストレスチェックを実施後、結果をメンタルヘルス対策に活用します。

結果を活用するためには、集団分析を行い、ストレスが高い部署やチームを特定してください。全国平均と比較して自社のストレス状況を把握し、高ストレスの部署に対して適切な改善策を講じることが大切です。

ストレスチェックの結果を基にした職場環境・業務プロセスの見直しによって、労働環境の改善が期待できます。

ストレスチェック結果の活用は、従業員のメンタルヘルスをサポートし、職場の働きやすさを向上させる手段です。

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ストレスチェックの費用は誰が負担する?導入前にチェック

ストレスチェック 導入 費用負担

ストレスチェックの実施は企業に義務づけられているため、費用はすべて企業側が負担します。ストレスチェックにかかる費用は、従業員に負担させられないことを理解しましょう。

高ストレス者に対して行われる、医師による面接指導の費用も企業が負担します。

ストレスチェックについて、企業の負担が大きいように感じる経営者・人事担当者も多いでしょう。しかし、ストレスチェックにかかる費用は福利厚生として損金計上でき、企業の経費として処理が可能です。

厚生労働省は職場におけるメンタルヘルスケア対策を推進しており、対策にかかる費用は従業員の生活を支える必要な出費です。ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防として該当するため、経費計上が認められていると考えられます。

○ストレスチェック制度は、ストレスの状態を把握することでメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としており、一次予防のための仕組みと位置づけられる

引用元:厚生労働省

また、ストレスチェック制度は法律で義務化されているため、法定福利費に該当します。

 「法定福利費」とは、法律で義務づけられている社会保障制度の費用(企業負担分)をいい、「健康保険料」、「介護保険料」、「厚生年金保険料」、「労働保険料」等をいう。

引用元:厚生労働省

企業は、事前にストレスチェック費用負担の仕組みと会計上の取り扱いを理解し、適切な予算を確保しましょう。

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ストレスチェック導入時に受検を拒否された場合は?企業がすべき対応

ストレスチェック 導入 受検拒否の対処法

ストレスチェック導入時に受検を拒否された場合、企業がすべき対応は以下の通りです。

  • 受検拒否の理由を聞く
  • ストレスチェックの利点や重要性を伝える
  • 結果の安全性を保証する
  • 職務評価に悪影響はないことを説明する

ストレスチェックの受検は任意です。そのため、企業は従業員に対してストレスチェックの受検を強制できません。

しかし、ストレスチェックを拒否する従業員を放置すると、企業は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。そのため、上記の対処法を試みて、拒否する従業員へストレスチェックの受検を促してください。

ストレスチェック導入の際、従業員に受検を拒否されたときの対処法については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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ストレスチェックの導入に活用できる助成金一覧

ストレスチェック 導入 助成金

ストレスチェックの導入に活用できる助成金は「団体経由産業保健活動推進助成金」です。団体経由産業保健活動推進助成金は、企業に代わって産業保健サービスを提供する団体を通じて、職場の健康促進活動に必要な資金を助成します。

対象の産業保健サービスは以下の通りです。

  • メンタルヘルス対策
  • ストレスチェックの実施
  • 健康診断の充実
  • 職場環境の改善
  • 労働安全衛生教育

団体経由産業保健活動推進助成金の申請方法については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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ストレスチェックの導入に関する3つのよくある質問

ストレスチェック 導入 よくある質問

ストレスチェックの導入に関するよくある質問は以下の3つです。

ストレスチェックの導入に関して、疑問を抱える経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、ストレスチェックの導入に関する質問と回答を詳しく解説します。

最後まで見れば、ストレスチェックの導入について理解が深まり、適切な対策を講じられるでしょう。

ストレスチェックは法的に義務づけられている?

ストレスチェックは、労働安全衛生法により50人以上の労働者を抱える事業場で年1回の実施が義務づけられています。実施しなかった場合の罰則は定められていませんが、労働基準監督署への報告が求められています。

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期 に、ストレスチェック及び面接指導の結果の報告書を労働基準監督署長に提 出しなければならないこと(省令案概要)

引用元:厚生労働省

企業は法律上の義務を果たすことで、従業員のメンタルヘルスの管理と職場環境の改善に努められます。

ストレスチェックはいつから導入された?

ストレスチェック制度は、2014年に成立した改正労働安全衛生法に基づき、2015年12月1日に施行されました。

2015年度にストレスチェックが導入されたときの実施率は41.7%でした。しかし、2020年度のストレスチェックの実施率は84.3%になり、8割を超えています。

詳しい実施状況は、厚生労働省の「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」で確認できます。

ストレスチェックは従業員全員が受けなければならない?

ストレスチェックは、原則としてすべての従業員が対象です。しかし、以下に該当する人はストレスチェックの受検対象外です。

  • 社長
  • 役員
  • 専務
  • 人事部長

基本的に、監督的地位にある人材は対象外です。監督的地位にある人材がストレスチェックを受けると、人事上の不利益な取り扱いとみなされる可能性があります。

人事課に属する部長以外の従業員は、人事権を持たないため、ストレスチェックの対象者となります。

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まとめ:ストレスチェックの導入の流れを知って心の健康を守ろう

ストレスチェック 導入 まとめ

ストレスチェックの導入は、従業員のメンタルヘルスを守るために非常に重要です。もう一度、以下でストレスチェックの導入の流れを確認してください。

定期的なストレスチェックの実施により、従業員は自分のストレス状態を把握し、企業は早期に対策を講じられます。

ただし、社長や役員などの監督的地位にある人は対象外であること、結果の取り扱いや労働基準監督署への報告義務などの注意点もあります。

ストレスチェックの理解と適切な実施によって、従業員の心の健康を守り、健全な職場環境を築けるでしょう。