健康経営におけるメンタルヘルスケアは、以下の3つの観点から必要とされています。
そのため、企業はメンタルヘルス対策を実行し、従業員の心の健康を守るよう努めることが望ましいです。厚生労働省もメンタルヘルスに関して調査しており、企業へメンタルヘルスケア対策を積極的に取り組むよう促しています。
当記事では、以下のことが分かります。
最後まで読めば、健康経営とメンタルヘルスケアの密接な関係が分かり、企業に必要なメンタルヘルスケア対策の内容が理解できるでしょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に推進する取り組みのことです。従業員が健康であることは企業の生産性向上や組織の活性化につながり、ひいては業績の向上や株価の上昇にも寄与するとされています。
特にメンタルヘルス対策は、健康経営の重要な要素です。
対して、メンタルヘルスは精神的な健康状態を指し、従業員の心身の健康を維持するために欠かせないものです。企業がメンタルヘルスに配慮した施策を講じることは、職場環境の改善や従業員満足度の向上につながります。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営において従業員のメンタルヘルスが良好であることは、仕事の生産性や職場の雰囲気に直結するため、非常に重要です。メンタルヘルス不調の従業員が増加すると、企業全体の効率が低下し、業績にも悪影響を及ぼします。
厚生労働省の調査によると、強いストレスを感じる労働者が増加しています。令和4年の「労働安全衛生調査」では、仕事や職業生活に関するストレスを感じている労働者の割合が82.2%という結果になりました。
令和3年の調査(53.3%)に比べると、ストレスを感じる人の割合はかなり上昇しています。
現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレス(以下「ストレス」という。) となっていると感じる事柄がある労働者の割合は82.2%[令和3年調査53.3%]となっている。
引用元:厚生労働省
上記の問題を改善するため、メンタルヘルスケアは積極的に実施すべき取り組みとなっています。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
従業員がメンタルヘルスの不調を引き起こす原因は以下の4つです。
メンタルヘルスケア対策に取り組む前に、従業員のメンタルヘルス不調を引き起こす原因の解明が必須です。ここでは、4つの原因を詳しく解説します。
過度な業務負担による長期間労働
過度な業務負担は、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与える主要な原因の一つです。厚生労働省の調査によると、過剰な業務量と労働時間の延長はメンタルヘルス不調を引き起こす大きな要因となっています。
ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容(主なもの3つ以内)をみる と、「仕事の量」が36.3%[同43.2%]と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が35.9%[同 33.7%]、「仕事の質」が27.1%[同33.6%]となっている。
引用元:厚生労働省
長期間にわたる過重労働は、心身のバランスを崩しやすくなります。長時間労働は睡眠不足や疲労の蓄積を招き、結果的に生産性の低下やモチベーションの減退を引き起こします。
健康経営を実現するためには、業務量の適正化と労働時間の管理が不可欠です。
いじめ・ハラスメント
いじめやハラスメントは、従業員のメンタルヘルスに深刻な悪影響を与える主要な原因です。厚生労働省の調査によると、対人関係に起因するストレスを抱える労働者の割合は非常に高く、ハラスメントの被害者は深刻なメンタルヘルス不調を抱えるリスクが高まります。
対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)26.2%
引用元:厚生労働省
職場でのセクシュアルハラスメント・パワーハラスメント・マタニティハラスメントなど、さまざまな形態のハラスメントは、従業員の精神的健康に重大なダメージを与えます。
いじめやハラスメントは従業員が能力を発揮する機会を奪い、職場の雰囲気を悪化させるだけでなく、結果的に退職や休職に至るケースも少なくありません。
健康経営を実現するためには、企業がハラスメント防止策を強化し、安心して働ける職場環境を整えることが重要です。
孤立感・コミュニケーション不足
孤立感やコミュニケーション不足も、従業員のメンタルヘルスに重大な影響を及ぼします。円滑なコミュニケーションが取れない職場は、従業員がストレスを感じやすくなる原因の一つです。
特に、テレワークの普及により、直接的な対話が減少し、孤独感を感じる従業員が増加しています。
職場での信頼関係が築けない状況は、精神的な支えを欠いた状態を生み出し、メンタルヘルス不調のリスクを高めます。健康経営を推進するためには、従業員同士のコミュニケーションを促す施策が必要です。
運動不足・不健康な食生活
運動不足や不健康な食生活は、従業員のメンタルヘルスに直接的な悪影響を与えます。なぜなら、運動はストレスを軽減させて気分を高揚させる効果があるため、日常的に運動しないと精神的な疲労や不安感が増してしまうからです。
不規則な食事や栄養バランスの偏りも、体調不良を引き起こし、メンタルヘルスを悪化させる原因です。
例えば、ビタミンやミネラルが不足すると、脳の機能が低下し、集中力や意欲の低下を招くことがあります。健康経営の観点からは、従業員が適度な運動を習慣化し、栄養バランスの取れた食事を摂ることを促進する施策が重要です。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営を支えるメンタルヘルスケアは以下の4つです。
上記4つは、全国健康保険協会も推奨しているメンタルヘルスケアです。ここでは、各ケアの方法を詳しく解説します。
セルフケア:従業員が自身の不調に気づいて対処する
セルフケアは、従業員が自らのメンタルヘルスに対処する方法です。セルフケアの取り組みは以下の3つが挙げられます。
- 自分のストレスに気づく
- ストレス・メンタルヘルスを正しく理解する
- 自分から相談する
従業員はストレスや不調に気づいた際に、自己管理と適切な対処法の実践が求められます。リラックスやストレス解消の方法を見つけることで、自己のメンタルヘルスが向上します。
セルフケア
≪労働者≫
●ストレスへの気づき
●ストレスやメンタルヘルス に対する正しい理解
●自発的な相談
引用元:全国健康保険協会 広島支部
ラインケア:管理監督者が部下の不調を早期に察知・支援する
ラインケアは、組織内の管理監督者が部下のメンタルヘルスをサポートすることです。ラインケアに関する取り組みは以下の4つが挙げられます。
- 従業員による相談・対応
- 部下の問題点・悩みの把握
- 職場環境等の把握・改善
- 産業保健スタッフとの連携
従業員が業務上や私生活でストレスを抱えている場合、影響は業績や職場環境にも及びます。そのため、管理監督者は従業員とのコミュニケーションを通じて、懸念・困難・異変を察知することが求められます。
ラインによるケア
≪管理監督者≫
●労働者からの相談と対応
●部下の事例性の把握
●職場環境等の把握と改善
●産業保健スタッフとの連携
引用元:全国健康保険協会 広島支部
従業員から相談を受けたら、業務負荷の調整や仕事の配分など職場環境の改善をはかりましょう。必要に応じて専門家や相談機関と連携し、従業員が適切なケアを受けられるようサポートします。
産業保健スタッフによるケア:産業医や保健師が職場の健康をサポートする
産業保健スタッフによるケアとは、企業内に配置された専門家が従業員のメンタルヘルスを支援する取り組みのことです。産業医・保健師・衛生管理者・人事労務担当者などが産業保健スタッフに該当します。
産業保健スタッフの取り組みは以下の6つです。
- 研修の企画・実施
- 職場環境等の評価・改善
- セルフケア・ラインケアの支援
- 従業員・管理監督者からの相談対応
- 職場復帰への支援
- 外部専門機関との連携
産業医や保健師などの専門家は従業員の健康状態をモニタリングし、メンタルヘルスに関する相談や問題に対応します。
また、労働安全衛生管理に関する法令や規則の遵守をサポートし、職場環境の改善に向けた助言や支援も行います。この対応により、従業員の健康と安全を守りながら、組織全体の生産性やパフォーマンスを向上させることが可能です。
事業場内産業保健 スタッフによるケア
≪産業医・保健師等≫
●研修の企画・実施
●職場環境等の評価・改善
●セルフケアやラインケアの支援
●労働者・管理監督者からの 相談対応
●職場復帰への支援
●外部専門機関との連携
引用元:全国健康保険協会 広島支部
事業場外資源によるケア:外部専門機関を活用したメンタルヘルスケア
事業場外資源によるケアは、企業が外部の専門機関やリソースを活用して従業員のメンタルヘルスを支援する取り組みを指します。事業場外資源には、病院・地域保健機関・従業員支援プログラム(EAP)などが該当します。
事業場外資源によるケアの取り組みは以下の2つです。
- 個別の相談・治療
- 事業場内産業保健スタッフとの連携
外部の専門機関やプログラムを活用すると、心理カウンセリング・メンタルヘルスプログラムへの参加・社外の相談窓口設置など、効果的なケアが提供できます。
事業場外資源によるケア
≪専門機関・専門家≫
●個別の相談・治療
●事業場内産業保健スタッフ との連携
引用元:全国健康保険協会 広島支部
企業のニーズに合わせた、カスタマイズプログラムの提供も可能です。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営を実現するためのメンタルヘルスケア対策は以下の3つです。
ここでは、上記3つのメンタルヘルスケア対策について詳しく解説します。
ストレスチェック制度の活用
ストレスチェック制度は、従業員のストレス状況を定期的に調査し、適切なサポートを提供するための重要な取り組みです。ストレスチェック制度活用の特長は以下で確認してください。
- 従業員自身がメンタルヘルスを自覚できる
- 高ストレス者が判明する
- 高ストレス者は産業医と面談ができる
- 産業医が企業に対して具体策を助言できる
- ストレスチェックの結果を分析できる
- 分析結果によって労働環境の改善や適切な支援が分かる
ストレスチェック制度の大きな魅力は結果の分析です。部署単位・企業単位など違う角度から分析すると、高ストレス者が多い部署が特定でき、労働環境の改善や適切な支援策を導入できます。
福利厚生サービスの充実
従業員のメンタルヘルスを支援するために、福利厚生サービスを充実させましょう。福利厚生サービスには心身の健康を促進する、以下のようなプログラム・サポートが含まれます。
- 社食で健康的な食事を提供
- マッサージサービスの提供
- レジャー施設や娯楽施設の割引
- スポーツジムの割引・優待
- 社内スポーツイベントの実施
ストレス解消やリフレッシュをはかるための優待を作ると、従業員のストレス軽減やメンタルヘルスの向上に役立ちます。従業員が健康で充実した生活を送れると、生産性やモチベーションの向上にもつながるでしょう。
健康管理システムの導入
従業員のメンタルヘルスを管理して健康経営を推進するために、健康管理システムを導入しましょう。健康管理システムとは、従業員の健康情報や健康診断結果を一元管理し、適切なケアやサポートを提供するシステムのことです。
健康管理システムの特長は以下の通りです。
- ストレスチェックの実施
- 定期的な健康診断・ストレスチェックの結果をデータベース化
- 従業員個々の健康リスクを詳細に分析
- 労働基準監督署への報告書作成
健康管理システムの導入により、従業員の健康状態を把握しやすくなります。組織全体のメンタルヘルスケアの品質を向上させ、健康経営の実現のスピードが早まります。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営におけるメンタルヘルスケアのメリットは以下の3つです。
メンタルヘルスケア対策は企業に大きなメリットをもたらします。ここでは、上記3つのメリットを詳しく解説します。
生産性の向上
従業員のメンタルヘルスを適切にケアすると、生産性が向上するというメリットが得られます。なぜなら、メンタルヘルス不調に陥った従業員は、集中力・判断力・決断力が低下し、業務の効率性や品質に影響を及ぼしてしまうからです。
メンタルヘルスケア対策によって健全な心身状態を維持することで、従業員は仕事により集中し、課題に対処する能力が高まります。結果として、生産性が向上し、企業の業績にプラスの影響を与えるでしょう。
欠勤率・離職率の低下
メンタルヘルスケアの適切な実施は、企業にとって欠勤率や離職率の低下という大きなメリットをもたらします。従業員が心身ともに健康であれば、業務の出席率が上がり、定期的に仕事を継続できるようになります。
また、メンタルヘルスを維持する支援があれば、従業員が企業に対して良い印象を持つため、離職という選択を防ぐことが可能です。
健康経営におけるメンタルヘルスケアの取り組みは、従業員の健康と幸福を促進し、欠勤や離職に関するコスト増加を止められます。
事故や怪我などのリスク管理
メンタルヘルスケアの適切な実施は、事故や怪我などのリスク管理に大きなメリットをもたらします。なぜなら、メンタルヘルスが不調な従業員は、仕事中の注意力や判断力が低下し、事故や怪我のリスクが高まるからです。
ストレスを軽減する支援・プログラムの提供によって、精神的な負荷が軽減されると、従業員はより安定した状態で業務に取り組めます。結果的に、作業ミスや不注意による事故の発生率が低下します。
さらに、従業員自身の安全意識が高まり、安全な職場環境を維持する役割を果たすでしょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営におけるメンタルヘルスケアの課題は以下の2つです。
ここでは、メンタルヘルスケアの課題を詳しく解説します。経営者や人事・労務担当者は、健康経営におけるメンタルヘルスケアの課題についても理解を深めましょう。
効果が分かりづらい
メンタルヘルスケアの効果が分かりづらいという課題は、多くの企業が直面しています。メンタルヘルスケアは、従業員の心理的な健康を支援する取り組みですが、効果が即座に見えづらい傾向があります。
従業員のストレスや心理的な負荷軽減のためには、個々の状況やニーズに合わせた継続的な支援が必要です。そのため、身体的な健康問題とは異なり、メンタルヘルスの改善や維持には時間がかかります。
企業は、メンタルヘルスケアの効果確認のために、以下のポイントも押さえておきましょう。
- 従業員からフィードバックをもらう
- 継続的なモニタリングの実施
- 定量的なデータ収集・分析
メンタルヘルスケアは長期的な視野で取り組みを評価する必要があります。さらに、効果を明確にするための定量的なデータ収集・分析も重要です。
プライバシーへの配慮が必要
メンタルヘルスケアの重要性が認識される中、従業員のプライバシー保護も大きな課題となっています。従業員はメンタルヘルスに関する問題が「他者に知られてしまう」という不安を抱えています。
そのため、企業はメンタルヘルスプログラムを導入する際、従業員のプライバシーを最大限に尊重することが不可欠です。以下の点に留意してメンタルヘルスケア対策をしましょう。
機密性の確保
メンタルヘルスに関する相談や情報は厳重かつ機密に扱われるべき事柄です。相談内容や個人情報は、関係者以外に漏洩しないよう十分なセキュリティ対策を講じます。
匿名性の確保
従業員が匿名で相談できる仕組みの整備が重要です。匿名性を提供することで、従業員は自身のプライバシーが守られる状況で相談でき、積極的に利用しやすくなります。
信頼関係の構築
上司や同僚との信頼関係を築くことで、従業員が安心して相談できる環境が整います。従業員が組織全体に対して信頼を感じると、メンタルヘルスケア対策への積極的な参加が期待できます。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営のメンタルヘルスケアに関するよくある質問は以下の4つです。
ここでは、健康経営のメンタルヘルスケアについてよく取り上げられる質問を詳しく解説します。
経営とメンタルヘルスの関係は?
企業経営とメンタルヘルスケアも密接につながりがあります。経営心理学者であるロバート・H・ローゼンも「健康な従業員が収益性の高い企業を作る」と提唱しており、企業経営とメンタルヘルスケアの統合によって業績が向上すると考えられています。
企業はなぜ健康経営をする必要がある?
健康経営は、企業の持続可能な成長や競争力強化の一端を担う従業員の健康促進のために必要です。また、法的規制や社会的要請もあり、企業にとっては必要不可欠な取り組みとなっています。
経営者のメンタルケアはどうすれば良い?
経営者のメンタルケアのためには、自己管理・ストレス対処法の習得・専門家への相談などが有効です。また、健康な組織文化の構築も重要です。
経営者もストレスや精神的負担を抱えることが多いため、雇用している従業員と同様のメンタルヘルスケアに取り組む必要があります。
健康経営の具体例は?
健康経営の具体例は以下の10個です。
- 健康診断の受診率を100%にする
- ストレスチェック制度の活用
- メンタルヘルスケアの体制づくり
- 従業員へ健康教育を行う
- 社内コミュニケーションの促進
- 福利厚生サービスの充実
- 職場内で運動機会を設ける
- 感染症の予防対策
- 労働時間・休暇日数の見直し
- 仕事と治療の両立をサポート
上記の取り組みは、従業員の健康増進と組織の持続的な成長につながります。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
健康経営において、従業員のメンタルヘルスの状態は、仕事の生産性や職場の雰囲気に直結します。
令和4年の労働安全衛生調査では、82.2%の労働者がストレスを感じているため、企業は積極的にメンタルヘルスケアを取り入れる必要があります。
健康経営を実現するためには、以下の3つのメンタルヘルスケア対策をしましょう。
ストレスチェック制度の活用は、従業員のストレス状況を定期的に把握・分析でき、適切なサポートが提供できます。また、ストレスチェック結果のデータベース化や労働基準監督署への報告書作成ができる健康管理システムの導入もおすすめです。
経営者や人事・労務担当者は、自社に合わせたメンタルヘルスケア対策を取り入れて、職場環境を改善しましょう。