特殊健康診断のじん肺健康診断とは?対象者・対象業務・健診の流れ・料金を徹底解説

じん肺 特殊健康診断

じん肺健康診断は、じん肺法施行規則に基づいた24種類の粉じん作業に従事する労働者が対象の特殊健康診断です。労働者はじん肺健康診断によって管理1・管理2・管理3イ・管理3ロ・管理4のどちらかに分類されます。

じん肺健康診断は管理区分によって実施頻度が異なるため、企業はじん肺健康診断の対象者や管理区分決定の流れを把握することが重要です。

なお、特殊健康診断については「特殊健康診断とは?」の記事をご覧ください。

当記事では以下のことがわかります。

最後まで見れば、じん肺健康診断の対象業務や健診の流れがわかり、法令に沿った行動が取れるようになるでしょう。

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特殊健康診断の基礎ガイドマニュアル

特殊健康診断のじん肺健康診断とは?

じん肺 特殊健康診断

じん肺健康診断とは、粉じん作業に従事する労働者の健康を守るために法令で定められた特殊健康診断の一つです。

じん肺法施行規則に基づき、24種類の粉じん作業に従事する労働者を対象に、就業時・定期的・定期外・離職時に診断を行います。

じん肺健康診断では、労働者がじん肺や肺がんなどの疾患にかかるリスクを早期に発見し、適切な管理を行うことが求められています。

じん肺とは粉じんを長期間吸い込むことで肺が弾力性を失い、呼吸困難になる病気です。粉じん作業に従事する労働者はじん肺のほか、主に以下の合併症を発症する恐れがあります。

  • じん肺
  • 肺結核
  • 結核性胸膜炎
  • 続発性気管支炎
  • 続発性気管支拡張症
  • 続発性気胸
  • 原発性肺がん
  • 石綿肺における中皮腫

上記の項目を見てもわかるように、粉じん作業に従事する労働者は健康を害するリスクが高いです。そのため、じん肺健康診断で管理区分が2や3と認められた労働者には、肺がん検査が追加される場合もあります。

特殊健康診断については、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

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【特殊健康診断】じん肺健康診断の対象業務

じん肺 特殊健康診断 対象業務

特殊健康診断におけるじん肺健康診断の対象業務は以下の24種類です。

番号内容番号内容
1土石や岩石、鉱物の掘削作業13粉状アルミニウムや酸化チタンの袋詰め作業
2ずい道内での鉱物掘削作業14粉じんを含む原料の混合作業
3鉱物の積み卸し作業15ガラスやほうろうの製造作業
4坑内での鉱物破砕やふるい分け作業16陶磁器や耐火物の製造作業
5坑内での鉱物運搬作業17炭素製品の製造作業
6鉱物の充填作業18鋳物製造の砂型造形や砂落とし作業
7コンクリートの吹き付け作業19鉱物を運搬する船舶内での作業
8粉じんが付着した機械や電気設備の点検作業20鉱物や無機物の製錬作業
9岩石や鉱物の裁断や仕上げ作業21鉱物の付着した炉や煙突の清掃作業
10研磨材の使用による研磨作業22耐火物を用いた炉の解体作業
11鉱物や炭素原料の破砕作業23金属を溶断する作業
12セメントや粉状鉱石の袋詰め作業24石綿を扱う作業

じん肺健康診断の対象業務はじん肺法施行規則別表に掲載された24種類の業務です。上記の業務に従事する労働者は就業時・定期的・定期外・離職時のタイミングでじん肺健康診断を受けなければなりません。

また、この章では粉じんの種類・影響度や金属アーク溶接作業についても詳しく解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断の対象業務について理解でき、自社の従業員が対象になるのかを把握できるでしょう。

粉じんの種類と影響度

じん肺健康診断の対象業務となる粉じんの種類と影響度は以下の通りです。

繊 維 増 殖粉じん発生職場
上に表記
されるほど強い
珪酸砕石、炭鉱、ずい道掘削、鋳物製造、セラミック製造、登記製造、金属精錬、研磨、
製鉄、セメント製造、機械器具製造、珪酸化学工業、石材加工、反射炉製造、
耐火煉瓦製造、シリコン製品製造、ガラス製品製造
石綿 石綿加工、石綿吹き付け、石綿解体、造船、発電所建設 
タルク滑石粉砕、絵の具製図、セラミック製造、屋根材料製造、医薬品製造 
カオリン乾燥カオリンの粉砕・袋詰め 
ろう石るつぼ製造、グラスファイバー製造、タイル・陶磁器の原料調合、耐火材製造
アルミニウムアルミニウム粉末製造
アルミナ ボーキサイト製造
珪藻土珪藻土採掘・粉砕、建材製造、絶縁材製造、断熱材製造、フィルター製造
石炭 炭鉱の採炭、選炭、石炭の粉砕
黒鉛黒鉛製錬、電極製造、鉛筆製造、鋳造材料調合、潤滑剤製造
炭素製墨、カーボンブラック製造
活性炭脱臭剤製造、吸着材製造
酸化鉄溶接、アーク溶接、グラインダー作業、研磨作業、製鋼
赤鉄鉱赤鉄鉱採鉱

引用元:厚生労働省

じん肺健康診断に該当する粉じんは上記の種類に分けられます。表を確認すると、上の段落に記載されるほど影響度は強くなります。

じん肺健康診断に該当する業務を行う企業は、粉じんの種類と体への影響についても理解しておきましょう。

金属アーク溶接作業もじん肺検診が必須

金属アーク溶接等作業に従事する人も、じん肺健康診断の受診が必須です。

金属アーク溶接等作業とは、アークを用いて金属を溶断したりガウジングしたりする作業のことです。また、その他の溶接ヒュームを製造・取り扱う作業も金属アーク溶接等作業に該当します。

厚生労働省は金属アーク溶接等作業で発生する溶接ヒュームについて、労働者の神経障害の健康を害する恐れがあるとし、特定化学物質障害予防規則の特定化学物質に指定しました。

金属アーク溶接等作業については、令和3年4月1日から健康障害防止措置が義務づけられています。

厚生労働省では、「溶接ヒューム」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則(特化則)等を改正し、新たな告示を制定しました。
改正政省令・告示は、令和3年4月1日から施行・適用します。

引用元:厚生労働省

金属アーク溶接等作業に常時する労働者は、以下の2つの特殊健康診断の受診が必要です。

  • 特定化学物質健康診断
  • じん肺健康診断

金属アーク溶接等作業は「【特殊健康診断】じん肺健康診断の対象業務」で解説した「20番:鉱物や無機物の製錬作業」に該当します。

溶接ヒューム業務については、以下の記事でも詳しく解説しているのでご覧ください。

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【特殊健康診断】じん肺健康診断の対象者・管理区分・実施頻度

じん肺 特殊健康診断 対象者

特殊健康診断における、じん肺健康診断の対象者・管理区分・実施頻度を以下に分けて解説します。

じん肺健康診断は就業時・定期的・定期外・離職時で対象者や実施頻度が異なります。ここでは、4つのタイミングに分けて対象者や管理区分、実施頻度を解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断の対象者・管理区分・実施頻度がわかり、従業員へ適切に受診を促せるでしょう。

就業時

就業時のじん肺健康診断の対象者と実施頻度は以下の通りです。

じん肺健康診断の種類対象者実施頻度
就業時健康診断
(じん肺法第7条)
新しく粉じん作業に常時従事する予定の人就業する際

じん肺健康診断は、新しく粉じん作業に常時従事する場合、就業時健康診断を受ける必要があります。ただし、以下に該当する人は就業時健康診断の受診は適用外です。

  • 以前に常時粉じん作業に従事すべき職業に就いたことがない
  • じん肺健康診断を1年以内に受けて、所見がないと診断された
  • じん肺健康診断を1年以内に受けて、じん肺管理区分が管理1に振り分けられた
  • じん肺健康診断を6ヵ月以内に受けて、じん肺管理区分が管理3口に振り分けられた

企業が労働者を新たに雇用する場合は、じん肺健康診断の対象者・対象外のどちらになるのかを判断しましょう。

定期

定期的なじん肺健康診断の対象者と管理区分、実施頻度は以下の通りです。

じん肺健康診断の種類対象者管理区分実施頻度
定期健康診断
(じん肺法第8条)
現在、粉じん作業に常時従事している人13年に1回
同上同上2・31年に1回
同上過去に粉じん作業に常時従事したが、
現在は粉じん作業から離れている人
23年に1回
同上同上31年に1回

企業が粉じん作業に常時従事する労働者を雇用している場合は、3年に1回、または1年に1回の頻度で定期健康診断を受診させる必要があります。「じん肺健診って何年ごとに受診させるべき?」と悩んでいる経営者・人事担当者は、上記の表を参考にしてください。

また、過去に粉じん作業を担っていた労働者がいる場合も、定期的にじん肺健康診断を受診させましょう。管理区分に関しては後述する「じん肺健康診断の管理区分とは?」で解説します。

定期外

定期外のじん肺健康診断の対象者と実施頻度は以下の通りです。

じん肺健康診断の種類対象者管理区分実施頻度
定期外健康診断
(じん肺法第9条)
粉じん作業に常時従事する労働者で、労働安全衛生法第66条第1項や第2項の一般定期健康診断を受けて
「じん肺所見あり」や「じん肺の疑いあり」と診断された人
1・未決定遅滞なく
同上合併症になり1年以上の療養や休業をしていた人。
その後、療養・休業不要と診断されたとき
同上

じん肺健康診断は定期外にも実施する必要があります。上記の表に記載の対象者を雇用している企業は、遅延なくじん肺健康診断を受診させましょう。

離職時

離職時のじん肺健康診断の対象者と管理区分、実施頻度は以下の通りです。

じん肺健康診断の種類対象者管理区分実施頻度
定期健康診断
(じん肺法第9条の2)
現在、粉じん作業に常時従事している人1
※前回のじん肺検診から1年6ヵ月以上経過
離職の際
(遅延なく)
同上同上2・3
※前回のじん肺検診から6ヵ月以上経過
同上
同上過去に粉じん作業に常時従事したが、
現在は粉じん作業から離れている人
2・3
※前回のじん肺検診から6ヵ月以上経過
同上

離職時のじん肺健康診断は、対象者が離職の際に「じん肺健診受診したい」と企業に求めたときに実施義務が発生します。企業は対象者が申し出たとき、速やかにじん肺健康診断を実施しましょう。

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【特殊健康診断】じん肺健康診断の検査内容・健診の流れ

じん肺 特殊健康診断 検査内容

特殊健康診断におけるじん肺健康診断の検査内容は以下の通りです。

  1. 粉じん作業の職歴の調査
  2. 胸部エックス線写真
  3. 胸部臨床検査
  4. 肺機能検査
  5. 結核精密検査その他合併症に関する検査

じん肺健康診断の検査は上記の5種類があります。

ただし、労働者全員が5種類をすべて受診するわけではありません。所見の有無によって検査内容や受診する数が異なります。

じん肺健康診断の健診の流れは以下に添付している厚生労働省の資料で確認してください。

じん肺検診の流れ

引用元:厚生労働省

粉じん作業に従事するすべての労働者が受診するのは、粉じん作業の職歴の調査と胸部エックス線写真です。また、肺機能検査で所定の要件を満たした労働者は動脈血ガスを分析する検査(二次検査)が行われます。

二次検査については以下の記事でも詳しく解説しているのでご覧ください。

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じん肺健康診断の管理区分とは?決定の流れ・事業所の対応

じん肺 特殊健康診断 管理区分

じん肺健康診断における管理区分の決定の流れ・事業所の対応を以下で解説します。

じん肺健康診断はほかの特殊健康診断とは違い、管理区分が存在します。ここでは、管理区分の概要や決定の流れ、事業所の対応について詳しく解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断の管理区分がどのようなものかがわかり、検診を受けた従業員へ適切な対応が取れるでしょう。

じん肺健康診断の管理区分とは

じん肺健康診断の管理区分(じん肺管理区分)とは、診断結果に基づき分けられる所見の段階のことです。じん肺健康診断の管理区分は以下の5種類があります。

じん肺管理区分じん肺健康診断の結果
管理1じん肺の所見がないと認められるもの
管理2エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能
の障害がないと認められるもの
管理3イエックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能
の障害がないと認められるもの
管理3ロエックス線写真の像が第3型又は第4型(大陰影の大きさが
1側の肺野の3分の1以下のものに限る)で、じん肺による
著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理41)エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが1側の
肺野の3分の1を超えるものに限る)と認められるもの
2)エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型又は第4
型(大陰影の大きさが1側の肺野の3分の1以下のものに
限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認め
られるもの

引用元:厚生労働省

じん肺健康診断を受けて所見がないと認められた人は管理1に振り分けられます。数字が大きくなるほど、じん肺が進行していると判断されます。

管理区分によってじん肺健康診断の受診頻度が異なるため、企業は自社で雇用する従業員の管理区分をきちんと把握することが大切です。

じん肺管理区分が決定する流れ

じん肺管理区分が決定する流れは、以下に掲載する厚生労働省の資料から確認できます。

じん肺管理区分が決定する流れ

引用元:厚生労働省

じん肺管理区分を決めるのは診断した病院や医師ではありません。管理区分は地方じん肺審査医による審査を経たあとで決定します。

そのため、企業はじん肺健康診断結果証明書と胸部エックス線写真を労働者の住所地にある都道府県労働局長への提出(じん肺管理区分の決定申請)が必要です。詳しい申請方法は、実際の担当窓口である労働局健康安全課に問い合わせてください。

じん肺管理区分の決定申請は、企業側・従業員側のどちらからでも申請が可能です。

また、従業員の離職後にじん肺管理区分で一定条件を満たす場合、健康管理手帳の申請ができます。

  • 管理2・管理3イ・管理3ロと認められた人は健康管理手帳がもらえる
  • 1年に1回、公費でじん肺健康診断を受けられる
  • 石綿の作業従事歴や石綿特有の所見が認められた人は健康管理手帳(石綿)がもらえる
  • 6ヵ月に1回、公費で石綿健康診断も受けられる

上記の項目を見てもわかるように、じん肺健康診断の対象業務の過去従事者に対しては、離職後も丁寧なケアが実施されます。

事業所が取るべき対応

企業(事業所)がじん肺管理区分の決定申請を行った場合、従業員に対してじん肺管理区分の通知が必須です。また、管理区分に応じて以下の措置を講じる必要があります。

じん肺管理区分措置
管理1就業時間において特別措置は必要なし
管理2粉じんばく露を低減する措置が必要
管理3イ・粉じんばく露の低減措置が必要
・作業転換の努力義務が発生(勧奨)
※都道府県労働局長から勧奨を受けたとき、転換手当が30日分
管理3ロ・作業転換の努力義務が発生
※都道府県労働局長から勧奨を受けたとき、転換手当が30日分
・作業転換の義務が発生(指示)
※都道府県労働局長から指示を受けたとき、転換手当が60日分
管理4療養が必要
管理2または3で合併症り患療養が必要

企業は従業員の管理区分によって、上記の措置を取ることが求められます。この措置はじん肺法第20条の2から23条に記載されているため法令順守が必須です。

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じん肺健康診断の料金

じん肺 特殊健康診断 料金

じん肺健康診断の料金は医療機関によって異なります。以下でじん肺健康診断の相場を見ていきましょう。

検査の種類料金(税込)
職歴調査・胸部エックス線写真(必須検査)2,200円~3,300円
診察・既往歴の調査・肺機能検査(必須検査で所見が見られた場合)約7,000円
結核菌の検査(塗沫・培養)約5,000円
胸部マルチスライスCT検査(エックス線特殊撮影検査)9,900円~10,000円
喀痰細胞診:集細胞法(たんに関する検査)2,800円~3,000円

必須検査だけ受診する場合、料金は2,200円~3,300円です。すべての検査を受診する場合の相場は26,900円~28,300円となります。

じん肺健康診断を含む特殊健康診断の費用は企業に負担義務が課せられています。そのため、企業はじん肺健康診断を実施すると、従業員一人あたり上記の料金がかかることを把握しておきましょう。

さらに以下の項目では、じん肺健康診断の勤務扱いやじん肺健康診断で活用できる助成金について詳しく解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断が勤務扱いになる理由やじん肺健康診断に使える助成金がわかり、企業として然るべき対応が取れるでしょう。

じん肺健康診断は勤務扱いになる

じん肺健康診断を受けている時間は勤務扱いになります。そのため、企業は粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断を、所定の労働時間内に実施する必要があります。

じん肺健康診断を受けている時間が勤務扱いになる理由は、粉じん作業が業務遂行と密接な関係にあるためです。厚生労働省は、業務内容に関連した健康リスクを管理する目的で特殊健康診断の実施を企業に義務づけています。

特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。

引用元:厚生労働省

万が一、じん肺健康診断を従業員の休日などに受診させた場合、企業は割増賃金を支払う必要があります。

特殊健康診断については、所定労働時間内に行わなければならず、時間外などに実施すれば、その時間について割増賃金を支払う必要があります。

引用元:東京労働局

じん肺健康診断の料金を負担するのは企業であり、さらに勤務扱いとして所定の労働時間内での実施が必須である点を理解しておきましょう。

健康診断の勤務扱いについては、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

じん肺健康診断で活用できる助成金

現在、じん肺健康診断で活用できる国の助成金はありません。しかし、民間団体の中には特殊健康診断で活用できる助成金を提供している事業所があります。

特殊健康診断の助成金を提供する民間団体の一例は以下の通りです。

民間団体補助の対象事項内容
一般財団法人
あんしん財団
特殊健康診断の実施・特殊健康診断にかかった費用を補助
・上限は費用の2分の1
・1,000円未満切り捨て

引用元:一般財団法人 あんしん財団

あんしん財団の助成金を活用すると、26,900円~28,300円かかるじん肺健康診断の費用を13,000円~14,000円に抑えることが可能です。特殊健康診断の助成金の有無や助成額については、加入団体によって異なるため、自社が加入する団体へ問い合わせてください。

健康診断の助成金については以下の記事でも詳しく解説しているのでご覧ください。

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じん肺健康診断の受診率と有所見者率

じん肺 特殊健康診断 有所見者率

じん肺健康診断の受診率と有所見者率は、2001年に厚生労働省が発表しています。以下で確認していきましょう。

じん肺健診区分実施率受診率有所見率
3年に1回の定期健康診断92.1%96.0% 2.1%
1年に1回の定期健康診断95.1%96.9%18.8%
就業時・定期外・離職時の健康診断82.0%95.8%3.6%

上記の表に記載している1年に1回の定期健康診断は、じん肺健康診断で過去に異常等の所見が認められた人を対象に実施しています。そのため、一度でも所見が見つかると高い割合で有所見者となることがわかります。

粉じん作業はじん肺のほか、肺結核や結核性胸膜炎など、さまざまな合併症を引き起こす業務です。企業は法律に沿った頻度でじん肺健康診断を実施し、従業員の健康を守りましょう。

じん肺健康診断の有所見者の推移

じん肺健康診断の有所見者の推移は以下の通りです。

じん肺健康診断の有所見者の推移

引用元:労働者健康安全機構

じん肺健康診断は、じん肺法が制定された1960年以降に始まりました。1960年~1977年までは、じん肺健康診断で有所見者と認められた人の割合は10%前後です。

粉じん作業に従事する労働者の数が変わらない中、1980年になると有所見者率は16.3%という高い数値を示すようになりました。その原因は、1978年に改正じん肺法が施行されたことで、定期健康診断の対象者・実施頻度・検査内容などの範囲が広がったためです。

16.3%まで上昇したじん肺健康診断の有所見者率は、労働衛生管理の改善や就業構造の変化によって減少し、近年は全体で1%前後を維持しています。

企業は引き続き労働者の健康を守るため、じん肺健康診断の定期的な実施・粉じんばく露作業環境の改善・防じんマスク着用などの作業管理の遂行が重要です。

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特殊健康診断のじん肺健康診断と石綿健康診断の違いとは?

じん肺 特殊健康診断 石綿 違い

特殊健康診断における、じん肺健康診断・石綿健康診断の違いは以下で確認してください。

特殊健康診断の中で、じん肺健康診断と石綿健康診断の違いがわからない経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、じん肺健康診断・石綿健康診断の概要や違いを詳しく解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断・石綿健康診断の違いがわかり、従業員へどちらの健診を受けさせるべきか判断できるようになるでしょう。

じん肺健康診断・石綿健康診断の概要

じん肺健康診断と石綿健康診断について、それぞれの特徴を以下で解説します。

じん肺健康診断と石綿健康診断は違う規則で制定されている健診です。ここでは、じん肺健康診断や石綿健康診断の特徴や両方の健診の対象者について詳しく解説します。

じん肺健康診断の概要

じん肺健康診断は、1960年制定のじん肺法に基づいて、実施が義務づけられた健診です。

特殊健康診断の一種で、粉じんの吸入によって発症する「じん肺」を早期発見・予防するために行われます。じん肺は、粉じんが肺に蓄積し、呼吸機能が低下する病気で、長期間にわたって粉じん作業を行う労働者に多く発生します。

じん肺健康診断の対象者は、じん肺法施行規則別表で定められた24種類の粉じん作業に従事している、または過去に従事していた労働者です。

じん肺健康診断は就業開始時・定期的なタイミング・定期外・離職時に実施されます。診断結果に基づいて管理区分1~4に分けられ、管理区分2以上の労働者は追加の検査や就業上の措置が求められます。

石綿健康診断の概要

石綿(アスベスト)健康診断は、1971年に制定された特定化学物質等障害予防規則において実施が義務づけられていた健診です。特定化学物質等障害予防規則の対象物質は63種類あり、その中に石綿が含まれています。

その後、2005年に石綿に関する部分が強化され、石綿障害予防規則が制定されました。

平成17年2月24日に、「石綿障害予防規則」が制定されました。

引用元:厚生労働省

石綿の吸入は、肺がんや中皮腫などの重い病気を引き起こすリスクが高いため、規則が移行したあとも変わらずに定期的な健診が法律で義務づけられています。

石綿健康診断の対象となるのは、石綿の解きほぐしや、石綿を含む製品の製造・加工・処理を行う作業に従事する労働者です。

石綿健康診断は、雇入れ時・業務配置変更時・6ヵ月ごとに定期的に行われます。胸部エックス線撮影や呼吸機能検査などを通じて、石綿による病気の早期発見を目指します。

じん肺健康診断・石綿健康診断の両方の対象者

石綿を取り扱う労働者はじん肺健康診断および、石綿健康診断の双方を受ける必要があります。その理由は、じん肺健康診断の対象業務に石綿を扱う作業(24番に該当)が含まれるためです。

企業に石綿を取り扱う従業員がいる場合、法律に基づいた頻度で両方の健康診断を実施する義務があることをしっかりと把握しておきましょう。

じん肺健康診断・石綿健康診断の違い

じん肺健康診断と石綿健康診断には、検査内容や実施方法に違いがあります。石綿健康診断では、以下の項目が一次検査として行われます。

石綿作業従事者に対する健康診断
(1)業務の経歴の調査
(2)石綿によるせき,たん,息切れ,胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
(3)せき,たん,息切れ,胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
(4)胸部のエックス線直接撮影による検査

引用元:厚生労働省

一方、じん肺健康診断では「他覚症状や自覚症状の既往歴確認」や「自覚症状の有無の検査」は二次検査として実施されます。

じん肺健康診断の実施は、管理区分に応じて年1回または3年に1回のタイミングですが、石綿健康診断は6ヵ月ごとに行われます。

上記のように、じん肺健康診断と石綿健康診断は、検査内容・実施の順序・検査頻度が異なるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておくことが重要です。

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じん肺健康診断の予約から報告書作成はけんさぽへお任せ

じん肺 特殊健康診断 けんさぽ

じん肺健康診断の予約や報告書作成をスムーズに行うなら、けんさぽへお任せください。けんさぽは健康診断の日程調整・受診勧奨・データ管理・報告書作成までを一元化できる健康管理システムです。

けんさぽには、以下の機能が備わっています。

  • 医療機関の日程確保
  • 従業員の日程調整・変更
  • 健康診断の受診勧奨
  • 受診状況の確認
  • 有所見者の自動抽出
  • 健診結果の回収・保管
  • 産業医・保健師の紹介
  • 産業医専用画面で就業判定
  • 一次健診・二次健診・就業判定の把握
  • 健康診断報告書の出力

けんさぽは上記の健康診断にかかる業務をすべて委託できます。医療機関と従業員の双方の日程調整をすべて引き受けるため、企業担当者の業務負担を軽減できることが特徴です。

また、従業員のじん肺健康診断結果はデータ上で保存でき、事業所のスペースを取らずに7年間の保管義務を果たせます。

健康管理システムの利用と業務代行サービスが従業員一人あたり月額100円~で委託できることも魅力です。

特殊健康診断におけるじん肺健康診断の法令順守と、業務負担軽減の両方を叶えたい経営者・人事担当者は、ぜひ一度けんさぽへご相談ください。

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特殊健康診断のじん肺健康診断に関してよくある3つの質問

じん肺 特殊健康診断 よくある質問

特殊健康診断の一種である、じん肺健康診断に関するよくある質問は以下の3つです。

特殊健康診断に含まれるじん肺健康診断について、疑問を抱える経営者・人事担当者は多いでしょう。ここでは、じん肺健康診断に関してよく挙げられる質問と回答を詳しく解説します。

最後まで見れば、じん肺健康診断についての疑問が解消され、速やかに企業の義務を遂行できるでしょう。

じん肺健診の対象者・対象業務は?

じん肺健康診断の対象者は、じん肺法施行規則別表で定められた粉じん作業に従事、または従事したことがある労働者です。対象業務は24種類におよび「土石や岩石、鉱物の掘削作業」や「ずい道内での鉱物掘削作業」などが含まれます。

対象業務の一覧は「【特殊健康診断】じん肺健康診断の対象業務」で詳しく解説しているのでご覧ください。

じん肺健診の内容・料金はどのくらい?

じん肺健診の検査内容は以下の通りです。

  1. 粉じん作業の職歴の調査
  2. 胸部エックス線写真
  3. 胸部臨床検査
  4. 肺機能検査
  5. 結核精密検査その他合併症に関する検査

上記の検査内容のうち、1番と2番の必須検査だけで済む場合、料金は2,200円~3,300円です。すべての検査を受ける場合の料金は26,900円~28,300円となります。

じん肺健診は何年ごとに実施する?

じん肺健診は、就業時・定期的・定期外・離職時の4つのタイミングで実施する必要があります。定期的なじん肺健診は管理区分によって1年に1回、または3年に1回など、実施頻度が異なります。

現在、常時粉じん作業に従事する人や過去従事者が事業所から離職する場合もじん肺健診の速やかな実施が必須です。

じん肺健診を何年ごとに実施するのかは「じん肺健康診断の対象者・管理区分・実施頻度」で詳しく解説しているのでご覧ください。

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まとめ:特殊健康診断のじん肺健康診断は定期的に対象者へ実施が必須

じん肺 特殊健康診断 まとめ

じん肺健康診断は、粉じん作業に従事する労働者の健康を守るために不可欠な特殊健康診断です。法律で定められた頻度でのじん肺健診により、じん肺のリスクを早期発見でき、重篤な症状を未然に防ぐメリットがあります。

じん肺健康診断の対象者・管理区分・実施頻度をもう一度以下でおさらいしましょう。

じん肺健康診断は所見の有無によって管理区分が振り分けられます。管理区分は都道府県労働局長へ提出した書類を基に決定するため、厚生労働省が定めた方法で手続きしてください。

企業は労働者の健康と安全な作業環境を維持するために、じん肺健康診断の定期的な実施を徹底しましょう。