従業員に健康診断を受けたくないと言われたら?企業がすべき5つの対応策

健康診断を受けたくない

従業員の健康診断は労働安全衛生法により、事業主に実施義務があり、従業員にも受診義務が課されています。

労働安全衛生法では、業務が原因で、労働者が疾病にかかったり、疾病が悪化することを防ぐため、事業者に対し、常時使用する労働者を対象に、年1回、健康診断を実施することを罰則付きで義務付けている(費用は全額事業者負担。労働者にも受診義務あり)。

内閣府ホームページ

健康診断を受けたくないという従業員が存在することは、多くの企業が直面する課題です。こうした状況において、企業が従業員の不安を理解し、受診を促すためには、以下の5つの対応とサポートが必要です。

これらの取り組みにより、企業は従業員が健康診断の受診を積極的に考えるように導き、職場全体の健康意識の向上に貢献できます。

当記事では、他にも以下のことが分かります。

最後まで見れば、健康診断を受けたくない従業員への対処法が分かり、より健康で生産的な職場環境を実現できるようになるでしょう。

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【重要】健康診断を受けたくないと言われても従業員にも受ける義務がある

健康診断受けたくない 義務

従業員が健康診断を受けることは、労働安全衛生法に基づく義務です。この法律は、会社と従業員双方に健康診断の実施と受診を義務付けています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。

 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。

 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

e-GOV法令検索

従業員の健康を守り、職場の安全を確保するためにも、定期的な健康診断を行う必要があります。健康診断によって、潜在的な健康リスクを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能です。

従業員から「健康診断を受けたくない」という声が上がったとしても、労働安全衛生法による義務があるため、その要請を受け入れるわけにはいきません。

企業側は法律の規定と健康診断の意義を従業員に明確に伝え、理解を求める必要があります。従業員にとっても、自己の健康を守るため、また職場全体の安全を考慮し、健康診断の受診は避けられない責任となるのです。

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従業員が健康診断を受けなくても良いケース

健康診断受けたくない ケース

以下の法律で決められている健康診断の項目以外については、従業員が受けるかどうかを選べます。

検査項目画像

引用元:厚生労働省

たとえば、会社が提案する胃カメラの検査や特定の血液検査など、追加の健康チェック項目は従業員が望まなければ受ける必要はありません。

これは、従業員の意思を尊重するためのルールです。

健康診断の基本の目的は、従業員の健康を守り、安全な職場環境を提供することにありますが、その過程で従業員の選択権も重要になります。

したがって、会社側は、必須ではない検査項目について従業員に選択肢を提供し、その決定を尊重するべきです。このような配慮は、従業員と会社の信頼関係を築く上で非常に価値があります。

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従業員に健康診断を受けたくないと言われたら?5つの対応策を解説

健康診断受けたくない 対応

従業員に健康診断を受けたくないと言われた場合の対応策は以下の5つです。

従業員が健康診断を受けたくないと言う場合、会社側はどう対応するべきでしょうか。理解と配慮が必要なこの状況で、会社は従業員に寄り添い、健康診断の大切さを丁寧に伝えることが求められます。

ここでは、従業員の健康診断に対する抵抗感を和らげ、積極的に受診してもらうための具体的な対応策について解説します。

健康診断を受けたくない理由を聞く

従業員が健康診断を受けたくないと言ったら、まずはその理由を聞きましょう。理由を知ることで、企業側は従業員に合わせたサポートを検討できます。

忙しい人には別の日程を提案したり、プライバシーに配慮した説明をしたりと、理由に応じた対応が可能になります。従業員が安心して健康診断を受けられるように話を聞き、理解を示しましょう。

健康診断のメリットを丁寧に説明する

従業員が健康診断を受けたくない理由は様々なものがありますが、健康診断の意義やメリットが十分に理解されていないことが一因です。健康診断は、見えない病気や体の変化を早期に発見することで、重大な健康問題を防ぐ手段となります。

定期的な健康チェックにより、自分の健康状態への意識が高まり、生活習慣の見直しに繋がることもあります。

企業は、健康診断が従業員自身の健康管理だけでなく、仕事のパフォーマンス向上にも寄与することを具体例を挙げながら丁寧に説明する必要があります。健康診断のポジティブな側面を強調することで、従業員が受診に対する前向きな気持ちを持つように導けるでしょう。

健康診断は法律で義務づけられていることを伝える

健康診断は事業主のみならず、従業員にとっても法律で受診が義務づけられています。労働安全衛生法では、事業主が従業員に対して定期的な健康診断を提供することが定められている一方で、従業員もこれを受ける義務があると規定されています。

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

厚生労働省

従業員には、健康診断の受診が単に会社の方針ではなく、法的な基盤に基づいたものであることを説明し、その重要性を理解してもらう必要があります。

また、健康診断を受けることで、自身だけでなく職場全体の健康と安全を守る責任があることも強調しましょう。法的義務とその背景にある意義を明確にすることで、従業員が健康診断への積極的な姿勢を持つきっかけになるかもしれません。

懲戒処分になることを伝える

従業員が健康診断を受けたくないと言う場合、受診拒否が懲戒処分の対象になり得ることを伝える必要があります。健康診断の受診は従業員にとっても義務であり、この義務を果たさないことは業務命令違反となる可能性があります。

労働安全衛生法に規定された健康診断については、労働者は受診義務を負っており、事業者は、受診命令に従わない労働者に対して懲戒処分をもって対処することもできます。

厚生労働省

ただし、懲戒処分については、就業規則に明確に定められている必要があります。

そして、処分に至る前に、従業員の健康を守りたいという会社の思いや、健康診断がなぜ義務付けられているのかという背景を丁寧に説明することが大切です。

この手段はあくまで最終的な選択肢として考え、まずは対話と理解を深める努力を優先しましょう。

健康診断の拒否について文書を書いてもらう

従業員が健康診断の受診を拒否する場合、その理由を文書にしてもらうことを検討しましょう。これは、従業員が自らの意志で健康診断を受けないことを選択したという証拠となります。

将来的に何らかの健康問題が生じたときに、会社と従業員双方の立場を守るために有効です。

文書には、健康診断を受けないことのリスクや、それによって会社が負う可能性のある責任から解放されることを明記し、従業員に理解してもらいましょう。

また、この文書は、従業員の健康と安全を守るために会社ができる限りの努力をした証ともなります。このプロセスを通じて、従業員にもう一度健康診断の重要性を考えてもらう機会を提供できるかもしれません。

しかし、この手段を取る前に、可能な限り対話で解決しようと努めることが重要です。文書を取る手続きは、従業員との信頼関係を損なわないよう慎重に行いましょう。

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従業員が健康診断を受けたくないのはなぜ?よくある理由を4つ解説

健康診断受けたくない理由

従業員が健康診断を受けたくないと思う理由は以下の4つです。

健康診断は、自分の健康をチェックし、未然に病気を防ぐための大切な手段です。

しかし、実際には「健康診断を受けたくない」と感じる人が少なくありません。その背後には、様々な理由が存在します。

ここでは、健康診断を避けたいと感じる人の心理や状況に光を当て、そのよくある理由を解説します。理解を深めることで、健康診断の受診率を高めるための対策を考えるきっかけにもなるでしょう。

体型にコンプレックスを抱えている

体型への不安は、健康診断を受けたくない大きな理由の一つです。体重計に乗ることや、身体のサイズを測定されることが恥ずかしいと感じる人は少なくありません。

医師や看護師から体型に関する指摘を受けることを恐れる人もいます。

重要なのは、健康診断が健康状態をチェックするためのものであり、体型を評価する場ではないと理解することです。医療の専門家は体型を批判するためではなく、健康を守り、サポートするためにそこにいます。

忙しいため健康診断を受ける時間がない

日々の業務に追われる中で、健康診断のための時間を作ることは容易ではありません。毎日タイトなスケジュールで動いている人にとっては、健康診断を受けることが負担に感じられるかもしれません。

しかし、この「忙しい」という理由は、健康診断の重要性を見落としてしまう大きな罠でもあります。健康診断を受けることで早期に健康問題を発見・対応すれば、仕事の効率も向上します。

企業側は、従業員が健康診断を受けやすいように柔軟なスケジュール調整や代替案を提供することが求められます。健康診断の期間を長く設ける、土曜日や早朝、夜間も受診できるようにするなど、従業員が健康診断を受けやすい環境作りを心がけましょう。

会社指定の医療機関ではなくかかりつけ医に見てほしい

健康に関する相談は信頼できるかかりつけ医に頼みたいと考える人は少なくありません。すでに自分の健康状態や病歴を熟知している医師に相談することで、個別化されたアドバイスを得られると考えるためです。

会社が指定する医療機関では、初めて会う医師による検診となるため、過去の健康状態や特有の健康問題を十分に理解してもらえないと感じることがあります。

また、個人的な健康情報を新たな医療機関に開示することへの抵抗感を持つ人もいます。

このような理由から、従業員は会社指定の医療機関での健康診断よりも、かかりつけ医による検診を望むことがあります。

この場合、企業側はかかりつけ医での健康診断結果を受け入れるなど、従業員の要望に応える方法を考えることが重要です。信頼できる医療機関での検診は、従業員が健康診断をより前向きに捉えるきっかけになり得ます。

健康診断の検査結果を知られたくない

健康診断の結果によっては、自分の健康状態に関する個人的な情報が会社に知られることを恐れる人もいます。とくに、持病がある人や、健康に関して気にしている特定の問題がある人は、その情報が周囲に漏れることで仕事上の立場や評価に影響を与えるかもしれないと考えがちです。

このような懸念を和らげるためには、健康診断の結果がどのように扱われ、誰にどの程度の情報が共有されるのかを明確にし、従業員のプライバシーを尊重する体制が整っていることを説明することが大切です。

従業員が安心して健康診断を受けられるように、結果の取り扱いに関する透明性を高め、プライバシー保護の措置を講じることが重要となります。

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健康診断を受けたくない従業員を減らすために企業ができる3つのこと

健康診断受けたくない対策

健康診断を受けたくない従業員を減らすために企業ができることは以下の3つです。

従業員が健康診断を受けることへの抵抗感を減らすためには、企業による積極的なサポートと施策が求められます。健康診断は従業員の健康を守るための重要な手段であり、そのメリットを最大化するためには従業員が自発的に受診することが不可欠です。

このため、企業は従業員が健康診断に対して持つ不安や疑問を解消し、受診を促すための具体的なアクションを講じる必要があります。多角的なアプローチによって「健康診断を受けたくない」という声を減らし、職場全体の健康意識を高められるでしょう。

意識向上のための教育

企業は、健康診断がなぜ必要なのか、どのような利点があるのかを明確に伝える教育プログラムを実施することが重要です。以下のように具体的な例を挙げて説明しましょう。

  • 早期に病気を発見し、適切な対処をすることで、健康な体を維持できる
  • 健康診断を受けた結果として、仕事のパフォーマンス向上に繋がる

また、健康診断の流れや、受診後のフォローアップについても情報提供することで、従業員の不安を和らげられます。

さらに、従業員の健康を大切にする企業の姿勢を示すことで、一人ひとりのモチベーション向上にも繋がります。健康診断の意義を理解し、健康への意識が高まることで、自発的に受診する従業員が増えるでしょう。

受診のしやすさの向上

従業員が健康診断を受けやすくするためには、受診の障壁を取り除く必要があります。健康診断のための時間を確保できるように、仕事のスケジュールを調整する配慮が重要です。

たとえば、健康診断の日を有給休暇として認める、または健康診断専用の休暇を設けるなどの方法が考えられます。

職場に近い場所での健康診断を提供するか、移動支援を行うことも一つの手段です。

また、オンラインで簡単に予約できるシステムを導入することで、従業員が自分の都合に合わせてスムーズに健康診断を受けられるようになるでしょう。

これらの取り組みを通じて、従業員が健康診断を受けるハードルを下げられれば「健康診断を受けたくない」という声を減らすことに繋がるはずです。

健康診断の結果に基づいたフォローアップ

健康診断の結果をただ受け取るだけではなく、異常が見つかった場合のフォローアップ計画を立てることが従業員にとって大きな安心材料となります。

異常が見つかった従業員には、専門の医療機関への紹介や、健康相談の提供など、具体的な支援を行うことが考えられます。

また、健康診断で問題がなかった従業員にも、より健康的なライフスタイルを送るためのアドバイスや、健康に関するワークショップの開催など、予防的な健康管理のサポートを提供することが重要です。

企業が従業員の健康管理に積極的に関わることで、従業員は健康診断を単なる義務ではなく、自身の健康を守るための有益な機会と捉えるようになるでしょう。継続的なフォローアップとサポートは、従業員が健康診断に前向きに取り組むきっかけになります。

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健康診断を受けたくないことに関する3つのよくある質問

健康診断受けたくないよくある質問

健康診断を受けたくないことに関するよくある質問は以下の3つです。

ここでは、健康診断に関してよく寄せられる質問に答えていきます。最後まで見れば、健康診断の重要性やメリットをより理解できるようになるでしょう。

会社の健康診断を受けないとどうなる?

会社の健康診断を受けないと、自身の健康リスクが見過ごされ、病気が発見される機会を逃す恐れがあります。

また、法律に基づき、事業主は従業員に定期的な健康診断を受けさせる義務があり、従業員もこれに応じる義務があります。健康診断を受けないことで、就業規則違反とみなされる場合があり、懲戒処分の対象になることも考えられます。

重要なのは、健康診断は自身の健康を守り、職場での健康管理を助けるためにあるということです。会社としては、健康診断の意義や受診することのメリットをしっかりと伝え、従業員が安心して受診できるようにサポートすることが望ましいです。

従業員から怖いという理由で健康診断を受けたくないと言われたら?

怖いという理由で健康診断を拒否された場合、その不安を真摯に受け止め、健康診断のプロセス、検査の重要性、結果の取り扱いについて詳しく説明することが重要です。

また、健康診断を受けることで早期発見・早期治療に繋がり、結果的に従業員の健康を守れるという点を強調します。必要であれば、カウンセリングサービスを提供するなど、従業員の精神的なサポートも考慮に入れると良いでしょう。

従業員が安心して健康診断を受けられるよう、企業は環境作りとサポート体制の充実に努める必要があります。

健康診断がない会社は存在する?

従業員への健康診断は法律で義務づけられているため、実施しない会社は基本的にありません。

健康診断は、従業員の健康状態を把握し、必要に応じた対策を講じるための重要なツールであるため、多くの企業がこの制度を重要視しています。従業員の健康を守るために、健康診断の受診を推奨しているのが現状です。

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まとめ:健康診断を受けたくないと言う従業員をサポートすることが企業の役目

健康診断受けたくないまとめ

従業員の健康診断は労働安全衛生法に基づき、実施する義務があります。同時に、従業員にもこれを受診する義務があります。

しかし、様々な理由から健康診断を受けたくないと感じる従業員もいます。企業はこれらの従業員に対して、以下の対応が必要です。

これらの対応を通じて、企業は従業員に健康診断を受けることの重要性を理解してもらい、受診を促す必要があります。一人ひとりの健康を守るという共通の目的に向かって、企業と従業員が協力し合うことが重要です。