育休中の従業員に健康診断を実施する必要はありません。労働安全衛生法に基づく通達によって、育休中の健康診断は「受診しなくても差し支えはない」と明記されています。
ただし、育休から復職した際は、速やかに健康診断を実施する必要があるため、企業担当者は注意が必要です。
当記事では、以下のことがわかります。
最後まで見れば、育休中の健康診断に関する正しい知識が得られ、適切な対応ができるようになるでしょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の従業員に対して、企業が健康診断を実施する義務はありません。「受診しなくても差し支えはない」と、労働安全衛生法に基づく通達によって明確にされています。
育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて(一部省略)
1 休業中の定期健康診断について
引用元:安全衛生情報センター
事業者は、定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が、育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえないものであること。
労働安全衛生法の規定では、健康診断の目的は働く際に健康上問題がないかを確認するためです。育休中は労働が発生しないため、健康診断の義務は適用されません。
また、企業は育休中の従業員に対して健康診断を行う必要がなく、費用負担の義務も生じません。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の従業員に健康診断を実施する義務は、労働安全衛生法の通達により免除されています。ただし、従業員が育休から復職した際、企業は速やかに健康診断を実施することが求められています。
育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて(一部省略)
2 休業後の定期健康診断について
事業者は、労働者が休業中のため、定期健康診断を実施しなかった場合には、休業修了後、速やかに当該労働者に対し、定期健康診断を実施しなければならないものであること。3 指導勧奨による特殊健康診断について
引用元:安全衛生情報センター
休業中及び休業後の指導勧奨による特殊健康診断については、上記1及び2に準じて実施するよう事業者等を指導すること。
復職後の健康診断は、従業員が労働に従事する際の健康状態を再び確認し、職場環境に適応するための重要な取り組みです。
また、令和5年5月に厚生労働省が発表した調査によると、正社員のうち約7割の女性が、第1子出産後に職場復帰していることがわかりました。
引用元:厚生労働省
パート・派遣従業員の場合、育休後に職場復帰を果たした人数は約2割です。正社員・パート・派遣従業員のどちらも、1985年頃と比べて、育休から復帰する女性が増えています。
政府もまた、第1子出産前後の女性の継続就業率の割合を70%にするという目標を掲げています。
政府目標: 第1子出産前後の女性の継続就業率 70%(令和7年)
引用元:厚生労働省
そのため、育休から職場復帰する女性従業員は今後さらに増えることが予想されます。
企業の担当者は、育休明けの従業員が遅滞なく健康診断を受けられるよう、しっかりと管理体制を整えましょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の従業員が自ら健康診断の受診を希望した場合でも、法律上、健康診断を実施する義務はありません。
従業員から受診希望があったときは、法律上の義務がないことを丁寧に説明し、育休明けに速やかに健康診断を実施する旨を伝えるのが一般的です。
ただし、就業規則や福利厚生で育休中の健康診断が定められている場合は、従業員に周知して適切に対応してください。
また、健康診断に関する相談内容や対応方法を記録し、安全衛生委員会などで協議することで、今後の同様のケースに備えられます。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の健康診断費用を負担するケースは以下の2つです。
育休中の従業員の健康診断費用は、福利厚生として定めている場合と、従業員が希望する場合で負担する人が異なります。ここでは、育休中の健康診断費用の負担につい詳しく解説します。
最後まで見れば、育休中の健康診断費用の負担方法がわかり、費用負担者が明確になるでしょう。
福利厚生として育休中の健康診断を定めている場合
福利厚生として育休中の健康診断を定めている場合、会社の就業規則や福利厚生のルールに基づき、費用負担の範囲が決定されます。
一部負担や全額負担など、就業規則に明記している負担範囲に沿って対応しましょう。
費用負担の範囲が就業規則で明記されていない場合、トラブルになるリスクが高まります。
そのため、福利厚生として育休中の健康診断を定める場合は、一部負担や全額負担のほか、オプション検査の負担範囲の基準を設定してください。
育休中の健康診断費用の負担を明確に設定し、事前に周知しておくと、従業員も安心して健康診断を受けられます。
従業員から受診の申し出があった場合
法律では、企業に育休中の健康診断の実施義務はないため、従業員から受診の申し出があった場合、健康診断費用は個人負担になるのが一般的です。
ただし、育休中の従業員に対して企業が健康診断の受診を促した場合は、企業負担となるので注意しましょう。
育休中の健康診断の費用負担は企業ごとで対応が異なります。どちらにしても、安全衛生委員会などで協議し、就業規則で明確に定めておくことが重要です。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休明けの従業員が健康診断を拒否した場合、健康診断の目的や必要性を丁寧に説明し、従業員の理解を得ましょう。
健康診断は労働安全衛生法で義務づけられており、従業員の健康状態を把握するために重要です。企業に実施義務が課されていること・従業員も受診義務があることを伝えてください。
労働者に受診義務があります。 労働安全衛生法に規定された健康診断については、労働者は受診義務を負って おり、事業者は、受診命令に従わない労働者に対して懲戒処分をもって対処することもできます。
引用元:厚生労働省
拒否の理由をヒアリングし、特定の検査に対する不安や懸念がある場合は、取り除くための対応策を検討しましょう。必要に応じて、産業医や専門家の意見を取り入れることも有効です。
詳細は「従業員に健康診断を受けたくないと言われたときの対応策」で解説しているのでご覧ください。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の健康診断に関するよくある質問は以下の4つです。
育休中の健康診断は受けたほうが良いのか・妊娠中に健康診断は受けられるのかなど、疑問を抱える人もいるでしょう。ここでは、育休中の健康診断についてのよくある質問を詳しく解説します。
最後まで見れば、育休中の健康診断に関する疑問が解消され、健康診断に向けた準備ができるようになるでしょう。
育休中に健康診断は受けたほうが良い?
育休中の健康診断は法律で義務づけられていないため、受診しなくても構いません。
ただし、福利厚生として育休中の健康診断を定めている場合と、従業員が自ら希望する場合は受診が可能です。費用負担については会社の規定や福利厚生によるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
妊娠中に会社の健康診断は受けられる?
妊娠中でも会社の健康診断を受けられます。ただし、事前に妊娠していることを伝えることが重要です。
採血検査などは妊娠中でも比較的安全です。しかし、そのほかの検査は医師に相談のうえ受けてください。妊娠中の健康診断が心配な場合は、産後などの体調が落ち着いたあとに受けるのが良いでしょう。
育休中に健康保険は使える?
育休中でも勤務先の健康保険は使えます。健康保険証に関しても、特別な手続きはいらず、引き続き使用可能です。
また、育児休業等期間中の社会保険料は、以下の要件を満たせば免除される可能性があります。
- 3歳未満の子供を養育するための育児休業である
- 事業主が育児休業等取得者申出書を提出する
育児休業中の保険料免除とは?
引用元:日本年金機構
3歳に満たない子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出することにより、健康保険・厚生年金保険の保険料が事業主負担分・被保険者負担分ともに免除されます。
経営者・人事担当者は、育児休業中の保険料免除手続きを忘れずに行いましょう。詳しくは日本年金機構のサイトをご覧ください。
休職中に健康診断を受けなくても良い?
休職中の従業員に受診の義務はありません。健康診断は労働者の健康状態を把握するためのものであり、実際に働いていない休職中は義務が免除されます。
しかし、復職後には速やかに健康診断を受ける必要があります。企業の担当者は、休職から復帰した従業員の健康診断について早めに手配しましょう。
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【健康診断結果の一元管理マニュアル】
育休中の従業員には健康診断の実施義務はありません。労働安全衛生法に基づく通達によって受診しなくても差し支えはないと明確にされています。
ただし、福利厚生で育休中の健康診断が定められている場合や、従業員が希望する場合は実施しても構いません。育休中の健康診断費用の負担は、以下のケースで対応が分かれるため、もう一度おさらいしましょう。
育休明けには速やかに健康診断を実施する必要があります。令和5年の調査結果では、正社員のうち約7割の女性が、第1子出産後に職場復帰していることがわかっています。
育休から職場復帰する女性従業員は今後さらに増えることが予想されるため、経営者・人事担当者は、しっかりと健康診断の管理体制を整えておきましょう。